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2022-08-16

心不全加療後の低血圧に困りました...

💀 臨床現場
  • 先日,頻脈性心房細動に関連したと思われる高齢者心不全例に対してランジオロール塩酸塩などの持続投与で治療を行いました.心拍数をコントロールして心不全は改善したのですが,高度の低血圧になりノルアドリナリンの依存状態に陥りました.自律神経障害を引き起こす基礎疾患は検出せず,低血圧の治療に難渋しました.最終的に塩酸ミドドリン(商品名メトリジン他)の内服開始でノルアドレアリンから離脱することができました.

👿 起立性低血圧の治療

クラスⅠ
  1. 急激な起立の回避
  2. 誘因の回避:脱水,過食,飲酒など
  3. 誘因となる薬剤の中止・減量:降圧薬,前立腺疾患,治療薬としてのα遮断薬,硝酸薬,利尿薬など

クラスⅡa
  1. 循環血漿量の増加:食塩補給,鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン 0.02~0.1mg/日 分2~3),エリスロポエチン
  2. 弾性ストッキング
  3. 上半身を高くした睡眠
  4. α刺激薬:塩酸ミドドリン 4mg/日 分2,メチル硫酸アメジニウム 20mg/日 分2,塩酸エチレフリン 15~30mg/日 分3

クラスⅡb
  1. エルゴタミン 3 mg/日 分 3

参考)昭和医会誌 2011;71:523-9:元は日本循環器学会ガイドライン(現在は利用不可)

💁 低血圧に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-05-05

食後低血圧 Postprandial hypotension; PPH

  • 食後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下または100mmHg以上から90mmHg以下に低下
  • 冠動脈や脳血管に高度狭窄または閉塞がある場合には心筋虚血や脳虚血を生じることがある
  • 一過性脳虚血発作の18%は食後低血圧による血行力学的機序が原因(最多は塞栓症で41%)
  • 高齢者の25~38%に認められ,特に糖尿病やパーキンソン病,高血圧を合併する症例に多い
  • 機序のひとつに炭水化物摂取に伴うインスリン分泌やニューロテンシンなどによる血管拡張


実例:食後に血圧低下あり/心拍数の増加がないことにも注目

💁 低血圧に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-01-22

POTS(ポッツ)の診断

POTS (postural orthostatic tachycardia syndrome)=体位性起立頻脈症候群
若年女性に好発して多彩な立ちくらみ症状(ただし低血圧はなし)を呈する病態

POTS(ポッツ)の診断基準

生じうる症状
血圧異常(高血圧/低血圧),脈拍異常(頻脈/徐脈/激しい心臓の鼓動),胸痛,めまい(特に立位や長距離歩行時),失神/立ちくらみ,倦怠感/疲労,腹痛/嘔吐/嘔気,体温異常(発熱や低体温),神経質/苛立ち,物忘れ/意識混濁,視力異常,頭痛/全身痛/頸部痛,不眠/早朝覚醒/寝汗,振るえ/振戦,四肢の色調変化,運動耐容能の低下,過剰発汗/発汗減少,下痢/便秘

関連投稿 👤 シェロングテスト Schellong test 

(投稿者 川崎)

2021-02-16

脳卒中の血圧管理(急性期)

脳卒中治療ガイドライン2021(仮)」より抜粋

📗 脳梗塞の急性期
  • 高血圧は降圧しないように勧められる(推奨 A エビデンスレベル高)
  • 収縮期血圧>220mmHgまたは拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や、大動脈解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合に限り、慎重な降圧療法を行うことを考慮しても良い(推奨度 C エビデンスレベル低)
  • 血栓溶解療法を予定する患者で収縮期血圧185mmHg以上または拡張期血圧110mmHg 以上の場合と、血栓溶解療法施行後24時間以内の患者において収縮期血圧180mmHgまたは拡張期血圧105mmHgを超えた場合、降圧療法が勧められる(推奨度 A エビデンスレベル低)

📘 高血圧性脳出血の急性期
  • 脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ降圧し7日間維持することは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中).その下限を110mmHg超に維持することを考慮しても良い(推奨度 C エビデンスレベル低)
  • 急性腎障害を回避するためには収縮期血圧降下幅が90mmHg超の強化降圧療法は勧められない(推奨度 D エビデンスレベル中)

📙 くも膜下出血の急性期
  • 軽症,中等症では収縮期血圧を160mmHg未満に降圧することが妥当である(推奨度 Bエビデンスレベル高)
※同ガイドラインは2021年1月までパブリックコメントが実施され今後の変更あり

😉 血圧管理に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2020-11-23

3時間バンドル 3-Hour Bundle

  • Surviving Sepsis Campaign 2012ガイドラインで推奨された方法
  • バンドル=Bundle=束(ここでは普遍的かつ重要な介入項目)
  • 敗血症が疑われた場合には3時間以内に以下の4項目を完了する
    1. 乳酸値の測定
    2. 抗生剤投与前に血液培養を行う
    3. 広域抗生剤を投与
    4. 低血圧もしくは乳酸値4 mmol/l以上の時は30 ㎖/㎏の晶質液を投与


💫 最近では1時間敗血症バンドルも提唱 💨
  1. 敗血症を認識したらまず乳酸値を測定
  2. 想定される病原菌をカバーする抗菌薬を1時間以内に投与
  3. 抗菌治療開始前には血液培養
  4. 低血圧や高乳酸血症(>4 mmol/l)に対し30ml/kgの急速等張輸液負荷
  5. 急速輸液後も平均血圧<65 mmHgの低血圧が存在すれば血管収縮薬を投与


(投稿者 川崎)

2016-12-27

敗血症性ショック

いろんな定義が存在しているが,日本救急医学会では以下のように記載

臓器障害または臓器灌流異常をともなう敗血症(重症敗血症)のうち,適切な輸液負荷を行っても低血圧が持続する状態。臓器灌流異常に基づく乳酸アシドーシス,乏尿,意識混濁などをともなう。低血圧は,収縮期血圧が90mmHg未満,あるいは通常よりも40mmHg以上の低下で診断されるが,強心剤や昇圧剤を使用している場合は必ずしも低血圧を呈していなくてもよい(ACCP/SCCM Consensus Conference, 1992)。

【おまけ】
 ショック指数(SI = HR/sBP)は本来,外傷や出血症例における出血量を推定する式
 敗血症の症例ではSIが正常値(0.5-0.7)でも「ショックではない」と言えないことがある

(投稿者 川崎)

2025-12-25

今週の一枚 🎯

呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)


(投稿者 川崎)

2025-12-23

昇圧薬:フェニレフリン塩酸塩  Phenylephrine Hydrochloride

  • 昇圧剤:ドブタミン(主にβ1受容体に作用),ドパミン(ノルアドレナリンの前駆体でドパミン・β1・β2・α受容体に作用),アドレナリン(α・β受容体に作用),ノルアドレナリン(内因性カテコラミンでβ1・α1受容体に作用)
  • いずれもβ1受容体に作用するため,頻脈や左室流出路狭窄を有する症例には使用が困難です.このように心臓の忍容性が低い患者に対する昇圧薬として,アドレナリン類似の構造を持つ選択的α1刺激薬フェニレフリンがあります.
  • 麻酔領域以外でフェニレフリンの使用経験が豊富なスタッフは限られていると思われるため,本ページに覚書を作成しておきます.静注した場合は即効性があり,作用時間はアドレナリンよりも長く5~10分だそうです(参考

🌓 商品名:ネオシネジン コーワ注 1 mg/5 mg(添付文書 PDF
  • 薬効分類名:血管収縮・血圧上昇剤
  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 効能または効果:
    • 各種疾患若しくは状態に伴う急性低血圧又はショック時の補助治療
    • 発作性上室頻拍
    • 局所麻酔時の作用延長

🌗 フェニレフリンの低血圧に対する実際
  • 機序:選択的α1刺激薬で心臓、気管、末梢血管のβ受容体にはほとんど作用しない
  • 適応:末梢血管収縮による昇圧薬として有用(心拍数が低下するので高度の徐脈となったときにはアトロピンで拮抗/血圧上昇の力価はアドレナリンの約1/5)
  • 実際:通常成人1回0.2mgを静注(0.1~0.5mgの範囲内で増減).持続静注は10~20µg/minで使用.2~5mgを皮下注または筋注する方法もあるが,即効性・調節性に欠ける.


(投稿者 川崎)

2018-12-08

悪性症候群の診断

  • 向精神薬(特にドパミン系刺激薬)などの中断や開始に伴って高熱や意識障害,強直を生じた症候群
  • 英語ではNeuroleptic Malignant Syndrome (NMS) であるが,フランス語のSyndrome Malinの方が有名 ★

Levensonらの診断基準 ➤ 大症状3項目または大症状2項目+小症状4項目で確定
  • 大症状:発熱,筋強剛,血清CKの上昇
  • 小症状:頻脈,血圧の異常,頻呼吸,意識変容,発汗過多,白血球増多

Popeらの診断基準 ➤ 3項目を満たせば確定,2項目とその他の1項目なら可能性が高い
  1. 発熱(他の原因がなく、37.5℃以上)
  2. 錐体外路症状(2つ以上):鉛管様筋強剛,歯車現象,流涎,眼球上転,後屈性斜頚,反弓緊張,咬痙,嚥下障害,舞踏病様運動,ジスキネジア,加速歩行,屈曲伸展姿勢
  3. 自律神経機能不全(2つ以上):血圧上昇(通常より拡張期血圧が20mmHg以上上昇),頻脈(通常より脈拍が30回/分以上増加),頻呼吸(25回/分以上),発汗過多,尿失禁
  • その他:意識障害,白血球増加,血清CKの上昇

Caroffらの診断基準 ➤ 5項目全てを満たせば確定
  1. 発症の7日以内に抗精神病投与を受けている事(デポ剤の場合2-4週間以内)
  2. 38.0℃以上の発熱
  3. 筋強剛
  4. その他(5つ以上):精神状態の変化,頻脈,高血圧あるいは低血圧,頻呼吸あるいは低酸素症,発汗あるいは流涎,振戦,尿失禁、CK上昇あるいはミオグロブリン尿,白血球増多,代謝性アシドーシス
  5. 他の薬剤の影響,他の全身性疾患や神経精神疾患を除外できる

DSM-Ⅳの診断基準
  • 基準A:神経遮断薬の使用に伴う重篤な筋強剛と体温の上昇の発現
  • 基準B(2つ以上):発汗,嚥下困難,振戦,尿失禁,昏迷から昏睡までの範囲の意識水準の変化,無言症,頻脈,血圧の上昇または不安定化,白血球増多,筋損傷の臨床検査所見(例:CKの上昇)
  • 基準AおよびBの症状は,他の物質(例:フェンシクリジン)または神経疾患または他の一般身体疾患(例:ウィルス性脳炎)によるものではない
  • 基準AおよびB の症状は,精神疾患(例:緊張病性の特徴を伴う気分障害)ではうまく説明されない

参考)悪性症候群 - 厚生労働省

(投稿者 川崎)

2019-05-30

急性心不全に使用する薬剤の推奨

推奨クラス 薬剤 病態
Iループ利尿薬急性心不全における体液貯留に対する静注および経口投与
I硝酸薬急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
Iジギタリス頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
Iランジオロール頻脈誘発性心不全における心房細動の心拍数コントロール目的での投与
IIaループ利尿薬1回静注に抵抗性のある場合の持続静脈内投与
IIaトルバプタンループ利尿薬をはじめとする他の利尿薬で効果不十分な場合の体液貯留に対しての投与(高ナトリウム血症を除く)
IIaトルバプタン低ナトリウム血症を伴う体液貯留に対しての投与
IIaミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能が保たれた低カリウム血症合併例に対する投与
IIaカルペリチド非代償性心不全患者での肺うっ血に対する投与
IIaカルペリチド難治性心不全患者での強心薬との併用投与
IIaドブタミンポンプ失調を有する肺うっ血患者への投与
IIaノルアドレナリン肺うっ血と同時に低血圧を呈する患者へのカテコラミン製剤との併用投与
IIaPDEIII阻害薬非虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbミネラルコルチコイド受容体拮抗薬ループ利尿薬による利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbサイアザイド系利尿薬フロセミドによる利尿効果減弱の場合の併用投与
IIbニコランジル急性心不全や慢性心不全の急性増悪時の肺うっ血に対する投与
IIbドパミン尿量増加や腎保護効果を期待しての投与
IIbPDEIII阻害薬虚血性のポンプ失調と肺うっ血に対する投与
IIbPDEIII阻害薬心拍出量の高度低下に対してのドブタミンとの併用投与
IIIミネラルコルチコイド受容体拮抗薬腎機能障害,高カリウム血症合併例に対する投与
IIIカルペリチド重篤な低血圧,心原性ショック,急性右室梗塞,脱水症患者に対する投与
IIIカルシウム拮抗薬高血圧緊急症に対するニフェジピンの舌下投与
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の表58より(2019年5月閲覧/記載順など一部改編)

👿 推奨クラス順に並べると頭が整理されて分かりやすいと思う

関連投稿

(投稿者 川崎)

2025-07-19

ピトレシン(一般名 バソプレシン/Vasopressin)

日本版敗血症診療ガイドライン2020より

CQ6-9-1&2
  • 成人敗血症患者に対する血管収縮薬の第一選択としてノルアドレナリン,ドパミン,フェニレフリンのどれを使用するか?
Answer
  • 第一選択としてノルアドレナリンを投与することを弱く推奨する。(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)

CQ6-10-2
  • 成人敗血症患者に対する血管収縮薬の第二選択としてバソプレシンを使用するか?
Answer
  • 第二選択としてバソプレシンを使用することを弱く推奨する。(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)


ピトレシンの効能又は効果添付文書
  • 下垂体性尿崩症、下垂体性又は腎性尿崩症の鑑別診断、腸内ガスの除去(鼓腸、胆のう撮影の前処置、腎盂撮影の前処置)、食道静脈瘤出血の緊急処置

💣 追加コメント
  • 敗血症などによる急性低血圧やショック時の補助療法としては適応外使用であるが企業見解が提出され,「バソプレシン【注射薬】」を「急性低血圧」、「ショック時の補助治療」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるという社会保険診療報酬支払基金の判断がなされている。
  • 企業が提出している用法・用量についての記載は点滴静注:生理食塩水、5%ブドウ糖などで溶解し、0.01~0.04 U/分で持続静注.具体的には1アンプル(1 ml中合成バソプレシン20単位,528円)を生食19 mLで溶解して(1 mlあたり1 U),シリンジポンプで0.6〜2.4 mL/Hで投与
バソプレッシン
💁 バソプレシンに関する過去の投稿 ➜ コチラ
 
(投稿者 川崎)

2024-12-08

第138回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
B-15 遷延する高度徐脈・低血圧をきたし,蜂蜜中毒と診断した一例
  • 蜂蜜中毒はトルコを中心に世界各地で報告されており, 有毒成分Grayanotoxinが原因である. コリン作動性の症状を呈するのに加え, 低血圧やショック, 徐脈, 完全房室ブロックなどが起こり得る. 本症例ではアトロピンの静脈注射を行い, 数分後速やかに循環動態が改善した.

D-3 Micra植込み後ダンシングに対し、経皮的抜去を行った一例
  • 右大腿静脈からMicaデリバリー用シースを挿入し、ダブルスネアテクニックにてMicra本体を2本のスネアで固定しながらデリバリーシース内に格納後、デリバリーシースごと抜去した。

発表ではありませんが…
  • 今回は10時過ぎからコーヒーブレイクセミナーが4会場,15時過ぎからアフタヌーンセミナーが6会場で実施されていました(近畿地方会では初の試み?).いずれも飲み物と和菓子あるいは洋菓子が二つほど入った紙袋がもらえました.もちろんお昼にはランチョンセミナーが7会場でありました.すべて完食したので大満足(でも食べ過ぎ😅)


👻 当院からの発表
  • B-25 拡張期奇異性血流を呈したATTR心アミロイドーシスの1例(循環器内科 西機恵実ほか)
  • B-38 負荷頚静脈評価法:心不全症例のリスク判定(循環器内科 川崎達也ほか)
  • D-25 収縮性駆出性雑音を呈した動脈管開存症の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • D-27 発作性心房細動を契機にPH crisisを生じた心房中隔欠損症の一成人例(循環器内科 川俣博史ほか)
  • I-9 心室頻拍の起源が診断契機になった心臓限局性サルコイドーシスの1例(循環器内科 積木勇人ほか)

すべて論文化(4編英語:掲載済1,採択1,投稿中2,作成中1)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2020-03-10

子宮左方移動

🚂 仰臥位低血圧症候群(Supine hypotensive syndrome; SHS)
  • 妊娠末期の妊婦や腹腔内の巨大腫瘤例では仰臥位(特に腰椎麻酔時)で下大静脈が圧迫され静脈還流量の減少から心拍出量が低下して低血圧やショックになることがある.
  • その時には速やかな子宮左方移動(用手的あるいは身体を左に傾けるなど:下図)による下大静脈の圧迫解除が重要である(同時に昇圧薬の投与や急速輸液なども考慮).


(投稿者 川崎)

2016-07-23

下垂体機能低下症

原因
  • 下垂体腫瘍
  • 出血性梗塞(下垂体卒中)
  • 分娩時大出血に伴う下垂体壊死(シーハン症候群)
  • 炎症性疾患(サルコイドーシスやIgG4関連疾患など)
  • 外傷
  • 先天性,他
障害されるホルモン
  • 前葉 成長ホルモンGH,プロラクチンPRL,甲状腺刺激ホルモンTSH,副腎皮質刺激ホルモン ACTH,性腺刺激ホルモンLH・FSHなど
  • 中葉  メラニン細胞刺激ホルモンMSH
  • 後葉 抗利尿ホルモンADHなど
症状は欠損ホルモンにより異なる
  • ACTH 倦怠感,低血圧,食欲不振,低血糖,低ナトリウム血症による意識障害など
  • TSH 倦怠感,耐寒性低下,除脈,低体温,集中力低下,進行すると粘液水腫など
  • GH 小児では低血糖,低身長など 成人では筋肉量・骨塩量低下,活動性低下など
  • PRL 女性は授乳中の乳汁分泌低下,男性は明らかな症状なし
治療
  • ACTH(必須) ヒドロコルチゾン15 -20 mg/朝(維持量15 mg/日,ストレス時 2-3 倍増量)
  • TSH(必須) ACTH 分泌不全の合併時にはヒドロコルチゾン補充 5- 7日後に開始
  • GH・LH・FSH QOLの改善に期待して一部の症例で投与
  • PRL 通常は投与しない

おまけ 出産後に母乳が出ない時は下垂体壊死(シーハン症候群)を疑ってみる

(投稿者 川崎)

2023-04-30

副腎クリーゼ(急性副腎不全症) Adrenal crisis

急激な糖質コルチコイド(glucocorticoid)の絶対〜相対的欠乏による致命的病態
  • パターン1:慢性副腎不全にストレスが加わりステロイド需要量が増加
  • パターン2:長期服用ステロイドが不適切に減量・中止され供給量低下

💣 概略
  • ステロイド補償中の副腎不全症の44%が1度は発症(6.3 件/100 人・年)
  • アジソン病での頻度は約8%/その誘因は感染症63%,手術6%,外傷6%
  • 症状は悪心,腹痛,体重減少,発熱,血圧低下など多様で非特異的(下表)
  • 疑えばACTH,コルチゾールの測定用検体を採取後に躊躇なく治療を開始
  • 例:生食1000 ml/時+ヒドロコルチゾン100 mg静注+持続100-200 mg/日
  • 原発性副腎不全1,675名の後方追跡6.5年で副腎クリーゼによる死亡は1.5%

💢 症状と検査所見
  1. 脱水,低血圧,原因不明のショック
  2. 食欲低下,体重減少,嘔気,嘔吐,下痢
  3. 原因不明の腹痛・急性腹症
  4. 原因不明の発熱,関節痛
  5. 予期せぬ低血糖
  6. 低ナトリウム,高カリウム血症
  7. 貧血,好酸球増多
  8. 高カルシウム血症,BUN上昇
  9. 色素沈着,白斑


💁 クリーゼに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-07-01

肥満低換気症候群 OHS

  • OHS=obesity hypoventilation syndrome/旧名はPickwick症候群
  • 睡眠時無呼吸に高度の肥満と肺胞低換気(PaCO2上昇)を伴う病態
  • 治療方針は減量+CPAPで必要に応じnasal BiPAPやAuto–CPAPを考慮


👽 肥満低換気症候群OHSは心不全を伴うことが稀ではない
  • 低酸素やアシドーシス ➜ 肺血管攣縮による肺血管性高血圧 ➜ 右心不全
  • CO2ナルコーシスによる急激な呼吸性アシドーシス ➜ 心筋収縮性の低下
  • 気道閉塞に伴う努力呼吸 ➜ 胸腔内圧の異常低下 ➜ 静脈還流の過度な増加
  • 無呼吸に伴う交感神経活性上昇 ➜ 体血圧と肺動脈圧の上昇 ➜ 後負荷増大
  • 炎症性サイトカインの上昇や凝固系の活性化 ➜ 心筋細胞の慢性的な障害

OHSによる心不全の臨床経過の1例心臓 2010;42:1466-73

👻 独り言

当院で経験した症例では上肢より下肢の収縮期血圧が100mmHgほど高値でした(=ヒル徴候 Hill’s sign 陽性).脂肪組織は血管床が豊富であるため肥満低換気症候群OHSに生じた心不全は高心拍出状態になるようです(Am J Med 1976;60:645-53).

(投稿者 川崎)

2024-09-27

今更かも...

右側の血圧は下肢>上肢なのにABIは低下?


👲 ABI測定(オシロメトリック法)
  • 分子は左右各々の足関節の収縮期血圧
  • 分母は左右高い方の上肢の収縮期血圧
  • 右ABI=131(右足)/149 (腕)=0.88
  • 左ABI=117(右足)/149 (左腕)=0.79
👳 コメント
  • 実は「ABIはの上腕-足関節-血圧比,ABIはの上腕-足関節-血圧比」と思っていました.よってレポートの血圧値を見ながら「右ABIがなんで低値なんだろう?」といまさらながら思ってしまいました.
  • 生理検査室のスタッフに聞いたら,これはABIあるあるだそうです.「よく勘違いされています」と笑いながら教えてくれました.ちなみにCAVIの計算方法も教えてもらいましたが,これは複雑すぎて断念 😓
  • 本例の様に上肢血圧の左右差が10 mmHg以上ならば鎖骨下動脈狭窄の可能性があります.ざっくりとした目安は正常(~10),要注意(10~20),病的(20~).本例は自覚症状なく未精査ですが…
心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-07-27

🚨 脳出血急性期の血圧管理

CQⅢ-a 脳出血急性期における血圧高値に対する厳格な降圧療法は推奨されるか?
  1. 脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140 mmHg未満へ降圧することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル高)。その下限を110 mmHg超に維持することを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル低)。降圧目標は治療開始24時間以内および7日間まで維持することは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。
  2. 降圧療法に伴う急性腎障害を回避するためには収縮期血圧降下幅が90 mmHg超の強化降圧療法は勧められない(推奨度D エビデンスレベル中)。


💉 ニカルジピン塩酸塩DI
  • <効能または効果>手術時の異常高血圧の救急処置、高血圧性緊急症、急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)
  • <高血圧性緊急症>本剤は、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、ニカルジピン塩酸塩として0.01〜0.02%(1mL当たり0.1〜0.2mg)溶液を点滴静注する。この場合1分間に、体重1kg当たり0.5〜6μgの点滴速度で投与する。なお、投与に際しては1分間に、体重1kg当たり0.5μgより開始し、目的値まで血圧を下げ、以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。
  • <当院のパターン>ニカルジピン2A(20㎎、20ml)+生食30mlで初期量は4ml/h(体重1kg当たり0.5μg)です。上記の上限6μgならば、最大48ml/hになります

(投稿者 川崎)

2018-04-09

日本人における虚血性心疾患の危険因子

日本循環器学会を含む合同研究班による虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)より(2018年4月確認)
  1. 男性は45歳以上,女性は55歳以上
  2. 家族歴として両親,祖父母および兄弟・姉妹における突然死や若年発の虚血性心疾患の既往
  3. 喫煙
  4. 脂質異常症:高LDLコレステロール血症(140mg/dL以上),高トリグリセライド血症(150mg/dL以上)および低HDLコレステロール血症(40mg/dL未満)
  5. 収縮期血圧140mmHgあるいは拡張期血圧90mmHg以上.
  6. 耐糖能異常/糖尿病:①早朝空腹時血糖値126mg/dL以上,②75g糖負荷試験2時間値200mg/dL以上,③随時血糖値200mg/dL以上,④HbA1c(NGSP値)6.5%以上のいずれかが認めれらた糖尿病型,糖尿病型ではないが,空腹時血糖値110mg/dL以上あるいはOGTT2時間値140mg/dL以上の境界型とする.
  7. 肥満:BMI25以上またはウエスト周囲径が男性で85cm,女性で90cm以上とする.
  8. メタボリックシンドローム:内臓肥満蓄積(ウエスト周囲径が男性で85cm,女性で90cm以上)を必須にして,高トリグリセリド血症150mg/dL以上かつ,または低HDLコレステロール血症(40mg/dL未満),収縮期血圧130mmHgかつ/または拡張期血圧85mmHg以上,空腹時高血糖110mg/dL以上のうち2項目以上を持つもの.
  9. CKD:尿異常(特に蛋白尿の存在),糸球体濾過量(glomeruiar filtration rate GFR)60mL/分/l.73m<sup>2</sup>未満のいずれか,または両方が3か月以上持続する.
  10. 精神的,肉体的ストレスを危険因子とする.

👀 冠危険因子で性別毎の年齢をきっちり覚えているヒトって意外に少ないかも・・・💤

(投稿者 川崎)

2020-10-29

🎯 今週の一枚

難治性心不全(ステージD)で低拍出症候群と悪液質の症例



(投稿者 川崎)