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2021-03-31

🔔 ベルは押してみよう!

息切れで救急外来を訪れた症例

🐣 解説
  • 聴診器の膜部はしっかり押し当て使う ➜ 過剰心音はなし
  • 聴診器のベルは軽く乗せる感じで使う ➜ Ⅱ音後に過剰音
  • ベルを押し込むと膜部と同じく低音消失 ➜ 過剰音が消失
  • 本例の過剰な心音は心尖部の低調音 ➜ Ⅲ音と考えられる
  • 本例の最終診断は拡張型心筋症による非代償性左心不全

🐥 復習
  • Ⅱ音直後の過剰心音にはⅢ音の他に,Ⅱ音の分裂解放音心膜ノック音腫瘍プロップなどがあります.
  • いずれの音もⅢ音より早く出現しますが,この出現タイミングだけで鑑別するのことは難しいと思います.
  • よって音調の意識が大切です.Ⅲ音以外は中調〜高調成分も含むため,聴診器の膜部でも聴取が可能です.
  • ベルで聴取した過剰心音が,ベルをグッと押し込むことで消失したら低調音(つまりⅢ音)と考えられます.
🉐 聴診器のおさらい ➜ コチラ

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(投稿者 川崎)

2021-03-30

心不全:ダパグリフロジンのまとめ

👀 フォシーガ®(商品名)
  • 現時点で糖尿病の有無にかかわらず心不全治療に利用できる唯一のSGLT2阻害薬

  • オリジナルの臨床試験DAPA-HF(N Engl J Med 2019;381:1995-2008)の対象は左室駆出率40%以下であったが,同薬の添付文書の記載は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」で,左室駆出率の具体的な値は明記されていない
  • 糖尿病に対しては「重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないこと」および「糖尿病の血糖コントロール改善を目的として使用している患者においては、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討すること」と記載されている.
  • 一方,慢性心不全に対しては「本剤では腎機能低下に伴う血中濃度の上昇が報告されている。また、eGFRが30mL/min/1.73m2未満あるいは末期腎不全(ESRD)の患者を対象とした臨床試験は実施していない」の記載に留まる.
👳 独り言
  • 心不全に対する利尿薬にはループ利尿薬(例:フロセミド),サイアザイド系利尿薬(例トリクロルメチアジド/フルイトラン®),抗アルドステロン薬(例:アルダクトン),V2受容体拮抗薬(例:バソプレシン/サムスカ®)がありました.SGLT2阻害薬は5番目の心不全利尿薬などと呼ばれています.
  • 利尿薬は服用のタイミングが大切です.例えば外出前や眠前にフロセミド内服すると,頻回のトイレでQOLが著しく低下します.フォシーガ®は5mgでも10㎎でも1日1回の投与と決められていますが(添付文書),心不全症例に対して服用する場合は朝5㎎+昼5㎎などの分割投与は意味がないのかな~って気になります.

(投稿者 川崎)

2021-03-29

患者さんがベットに寝ていたら…

冠動脈バイパス術の既往がある心不全例/入院数日後の仰臥位(枕あり)

😄 所見の解説
  • 内頸静脈は視認できず ➜ 中心静脈圧の上昇はなし(心不全は改善)
  • ただし外頸静脈は視認できる ➜ 過剰な利尿で脱水には陥っていない
  • 右季肋部の圧迫で頸静脈拍動の顕性化なし ➜ 肝頸静脈逆流は陰性
  • 負荷がかかっても中心静脈圧は安定していそう ➜ そろそろ退院可能

😎 独り言
  • 頸静脈所見(特に座位)から心不全の改善は判定できるが,安静時の所見だけでは少し不安が残る.負荷に伴う頸静脈拍動の出現は心事故と関連(コチラ
  • 呼吸負荷(クスマウル徴候)が簡便であるが(自験例),訪床時に患者さんがベットに寝ていたら肝頸静脈逆流(Hepatojugular reflux test)も可能
  • 本テストは肝臓(右季肋部あるいは腹部全体)を10秒ほど圧迫すると良いようです.なおreflux(逆流)であって,reflex(反射)ではないことに要注意

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(投稿者 川崎)

2021-03-28

可逆性後頭葉白質脳症 PRES


  • 症状 頭痛,意識障害,精神症状,痙攣,視力障害(皮質盲を含)
  • 画像 後頭葉・頭頂葉・側頭葉・基底核などを中心に浮腫性変化
  • 特徴 高血圧と関連して,症状や画像変化がすべて可逆性である
  • 機序 血液脳関門の破綻により引き起こされると考えられている
  • 関連 高血圧性脳症,妊娠・子癇,腎不全,膠原病,薬剤性など
  • 治療 降圧+関連病態への対応(急速遂娩や痙攣コントロール他)
  • 予後 良好で2週間以内に改善(診断の遅れによる不良症例あり)


MRIのFLAIR像(上段は発症時,下段は2週間後)

(投稿者 川崎)

2021-03-27

サブロク協定(36協定)

  • 正式名は「時間外・休日労働に関する協定届」で労働基準法第36条のこと
  • 法定労働時間は1日8時間・週40時間と決められている(厳守はほぼ不可)
  • よって時間外労働や休日勤務のため同協定を結び労働基準監督署に届出



  • 2018年6月に労働基準法が改正され36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設定
  • 時間外労働の上限は月45時間・年360時間で臨時的な特別の事情がなければ超過できない
  • 特別事情でも年720時間,月100時間、2-6ヵ月平均80時間,月45時間超え半年内を厳守


👿 独り言

いわゆる過労死ラインは下記のいずれか(厚生労働省)
  1. 発症前1カ月間におおむね100時間を超える時間外労働
  2. 発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働

しかし厚生労働省は現段階で一部の医師の時間外労働の上限を1860時間(過労死ラインの概ね2倍)と定めています.その理由は一般水準の労働時間上限にすると一部の地域で医療が崩壊するためだからだそうです(医療福祉政策研究 2020;3:49-59

(投稿者 川崎)

2021-03-26

アルファ2PI

  • α2-プラスミンインヒビター (plasmin inhibitor: PI)で別名はα2アンチプラスミン
  • プラスミン分子中のセリンプロテアーゼ活性部位と結合しプラスミン活性を阻害
  • 発見は自治医科大学(当時)の青木延雄先生ら(J Biol Chem 1976;251:5956-65

💉 解釈
  • 正常値:血漿活性値が85~115%(60%以下なら線溶優位の出血リスクが上昇)
  • 減少 ➜ 肝機能障害, 線溶亢進, DIC,先天性プラスミンインヒビター欠乏症
  • 増加 ➜ 急性炎症性疾患

🉐 関連投稿(採血の項目編)

(投稿者 川崎)

2021-03-25

エンプティ・セラ症候群 ESS

  • ESS=Empty sella syndrome/sella=鞍またはセラ(人名)/sella turcica =トルコ鞍
  • 独のBuschが1951年に剖検で見出し(),Kaufmanが1968年に疾患として提唱(
  • Empty sellaはトルコ鞍が脳脊髄液に置き換わった状態で剖検で5.5-23%と稀ではない
  • 頭部CTやMRIでEmpty sella(ES)を認めた症例の約8%に下垂体の機能低下症を認める
  • 頭痛や視野異常,ホルモン異常などの臨床症状を呈する場合はエンプティ・セラ症候群
  • 原発性と続発性に分かれともに女性に多い/原発性は中年女性,肥満,経産婦に高頻度
  • 続発性はシーハン症候群,薬物・放射線・外科治療後,感染や自己免疫性下垂体炎など
  • 治療は無症状なら経過観察/ホルモン分泌不全を伴う有症状時にはホルモンの補充療法

参考)多根医誌 2019;8:15-19,ほか

ふらつきで来院した高齢女性 ➜ 頭部MRIでトルコ鞍が脳脊髄液で満たされている

(投稿者 川崎)

🎯 今週の一枚

検診で脂質異常を指摘された症例の右眼



(投稿者 川崎)

2021-03-24

インフォデミック Infodemic

  • 情報(Information)+流行(Epidemic)を短縮した造語
  • デマや憶測を含んだ大量の情報が氾濫して混乱する状態
  • SARS(重症急性呼吸器症候群)の2003年から使用(
  • COVID-19に関連するフェイクニュースの拡散で再び注目

    😕 独り言
  • カルテの問題リストに#COVID-19感染症という記載を見かけることがあります.しかしCOVID-19はcoronavirus disease of 2019(新型コロナウイルス感染症)なので#COVID-19にすべきです.原因ウイルス(SARS-CoV-2)から#SARS-CoV-2感染症の記載は理論的に正しいとは思いますが,当院では見たことがありません.
  • カルテは患者さんのものである(≒患者さんが読んで理解できるように記載)という原則(?)から,日本語で#新型コロナ感染症という表記が良いのかもしれません.当院では患者さんが自分のカルテを自由に閲覧できる状況にはまだなっていませんが,そう遠くない未来では当たり前になると思います.

(投稿者 川崎)

2021-03-23

リスボン宣言

  • 患者の権利に関する宣言(Declaration of Lisbon on the Rights of the Patient)
  • 1981年にポルトガルのリスボンで開催された第34回世界医師会総会で採択された
  • 随時改定され現在の宣言は2015年ノルウェーのオスローで開催されたバージョン

序 文
  • 医師、患者およびより広い意味での社会との関係は、近年著しく変化してきた。医師は、常に自らの良心に従い、また常に患者の最善の利益のために行動すべきであると同時に、それと同等の努力を患者の自律性と正義を保証するために払わねばならない。以下に掲げる宣言は、医師が是認し推進する患者の主要な権利のいくつかを述べたものである。医師および医療従事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。

原 則(抜粋) 
  1. 良質の医療を受ける権利
  2. 選択の自由の権利
  3. 自己決定の権利
  4. 意識のない患者
  5. 法的無能力の患者
  6. 患者の意思に反する処置
  7. 情報に対する権利
  8. 守秘義務に対する権利
  9. 健康教育を受ける権利
  10. 尊厳に対する権利
  11. 宗教的支援に対する権利

※全文は日本医師会のページから確認できます(和文英文

🙋 おまけ(昔に国試対策で覚えたような…)
  • リスボン宣言 ➜ 患者の権利を保障したもの
  • ヘルシンキ宣言 ➜ 人を対象とする医学研究の倫理
  • ジュネーブ宣言 ➜ 医の倫理に関する規定(ヒポクラテスの誓いの現代版)

(投稿者 川崎)

2021-03-22

🏭 トリプル負荷

右室肥大が疑われる症例

😊 解説
  • 立位(ビデオ開始時)では頸静脈を視認しない(カルテには立位陰性とシンプルに記載)
  • しかしスクワッティング後(ビデオ後半)では頸静脈の拍動が出現(カルテ記載は蹲踞陽性)
  • よく見ると頸静脈拍動は陽性波 ➜ a波(前収縮期/Ⅰ音直前)あるいは巨大v波(収縮期)
  • 両者の鑑別には触診(=動脈触知)または聴診が有用 ➜ 本例の陽性波はa波と判断した
  • 心エコー図で右室肥大+どこでもⅣ音 ➜ 右室肥大型心筋症の疑いで現在フォロー中

😶 独り言
  • 蹲踞負荷は膝痛などで施行できないことも少なくないが,前負荷増大(静脈還流の増加)かつ後負荷増大(下肢血管抵抗の上昇)のため心負荷は大きい.
  • さらに本例のビデオでも分かるように,多くの人は蹲踞時にバランスを取るため前かがみになる.これは胸腔内圧の上昇からbendopnea(前屈時呼吸困難症)の誘発にも繋がる(実例).
  • つまり蹲踞は前負荷増大後負荷増大胸腔内圧上昇トリプル負荷とも言える.個人的にはベットサイドで行える最強の負荷と思う(まるでトリプル・ドム 😉).

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(投稿者 川崎)

2021-03-21

DEKA デカ ビタ

  • ビタミンとは生体に必要な栄養素のうち炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物
  • ビタミンは脂溶性ビタミン(D, E, K, A)と水溶性ビタミン(B群およびC)に分類できる
  • ビタミンは生体内で合成できないため食料やサプリメント,薬剤から摂取する必要あり
  • 脂溶性ビタミンは尿中へ排泄されにくいため水溶性ビタミンよりも過剰症が生じるやすい


👽 脂溶性ビタミン( DEKA デカ ビタ)の過剰症
  1. ビタミンD 食欲不振,腎不全,転移性石灰化など
  2. ビタミンE 過剰症の報告はない(ようです)
  3. ビタミンK 過剰摂取例の報告は稀(のようです)
  4. ビタミンA 頭痛や皮膚はく離,肝脾腫大,骨肥大など


👶 全くの余談ですが…
  • サントリーフーズの栄養飲料デカビタC(DEKAVITA C)のデカはでっかい(大容量210ml)を意味しているようです.含有ビタミンは主にCで,脂溶性ビタミンは含なれないので悪しからず 😅
  • デカビタCの黄色いラベルの左端にイメージキャラクター「ビタ子」がプリントされています.「ラブラブ・ビタ子」と「あらあら・ビタ子」のレアキャラも超稀に登場するようです(元ネタ

(投稿者 川崎)

2021-03-20

乳児疝痛 Infantile Colic

  • 健康で栄養を十分摂取しているにもかかわらず乳児の大泣きが持続する状態
  • 米国の小児科医 Morris A. Wessel らが提唱した(Pediatrics 1954;14:421-35
  • 診断はWesselの3原則に準ずる(1日3時間以上+週3日以上+3週間以上持続)
  • 生後数ヵ月頃から始まり,数ヵ月で自然に治ることが多い(その原因は不明)
  • 別名コリックで夕方に多いため黄昏(たそがれ)泣きや夕暮れ泣きとも言う

🉐 関連投稿(赤ちゃん編)

(投稿者 川崎)

2021-03-19

👴 歴史クイズ

(Public Domain)


(投稿者 川崎)

2021-03-18

🎯 今週の一枚

ベットから転落後の頚部痛を訴える症例の頚部エコー



(投稿者 掘/川崎)

2021-03-17

ゴーン複合体 Ghon complex

  • 結核のときに認める肺内の初感染巣(Ghon focus/ゴーン巣)+リンパ節病変のこと(石灰化を伴えばRanke complex)
  • オーストリアの病理医 Anton Ghon(1866-1936)に由来している(Berlin & Wien, Urbach & Schwarzenberg, 1912)


 😋 雑学
  • 日産・ルノーの元社長であるゴーン氏の名前はGhosnと少し異なります
  • ゴーンと読む人名には,他にもGongやGaunt,Gornなどがあるようです

(投稿者 川崎)

2021-03-16

スミスの基準 Smith's Criteria

  • 心電図で左脚ブロックがあるときに急性心筋梗塞の有無を鑑別する方法
  • スガルボッサの基準(Sgarbossa's Criteria)の低い感度(約20%)を改善
  • QRSとSTの向きが不一致時にST/S波<-0.25なら心筋梗塞を積極的に疑う
  • 米国の救急医Smithらが提唱した方法(Ann Emerg Med 2012;60:766–76

実例:いずれもST/S波<-0.25で心筋梗塞

🐤 豆知識
  • スミス先生は心電図ブログをやっている ➜ Dr. Smith's ECG Blog 
  • スガルボッサ先生はアルゼンチン出身の循環器内科医で女性です

(投稿者 川崎)

2021-03-15

ちょっとした工夫

心電図異常で来院した中年男性

😛 所見の解説
  • (左) 傍胸骨に置かれた聴診器のヘッドがわずかに動いている?
  • しかし聴診器のヘッドよりもチューブ中央を見ると拍動が明瞭
  • 本例は抬起性(圧負荷)よりもタッピング(容量負荷)と判定
  • 実際に心エコー図でも右室の拡大を認めた(肺高血圧はなし)

😜 復習
  • 視診より触診の方が分かりやすいことは言うまでもない(関西風命名:触ってナンボの法則再登場:触ってナンボの法則
  • しかし抬起性かタッピングが迷うことも少なくない.このような時には視診の活用も悪くない.抬起性拍動ではチューブの動きは全く異なる(実例
  • 胸壁の薄い健常若者では正常でもタッピングを認めるから,普段から確認してタッピングの触診や視診(チューブ)に慣れておくことも重要と思う

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(投稿者 川崎)

2021-03-14

Dysphagia aortica 下行大動脈による食道通過障害

  • 大動脈瘤や下行大動脈の蛇行による外方からの食道圧迫で嚥下障害を呈する病態
  • 初報はドイツ (?) のPapeによると思われる(Fortschr Roetgenstr 1932;46:257-69)
  • 高齢女性,側彎症,短食道などが危険因子で食道潰瘍や大動脈食道瘻の可能性あり
  • 診断は消化管造影やCT(解剖学的評価)および内視鏡や食道内圧検査(血管拍動)
  • 治療は食事療法(粘稠食物や食後臥床の回避+よく咀嚼)で難治例には外科的治療



😊 おまけ
  • 上記写真の論文の筆頭著者である谷口先生は以前に当院循環器内科で勤務されていたことがあります.表題にあるdogleg犬の後ろ足くの字で,本病態を的確に表すとてもイケているタイトルだと思います.
  • Dysphagia aorticaのあまりいい邦名はないようですが,日本食道学会用語解説集には大動脈性嚥下困難と記載されていました.なおdysphagia aorticaは3年前に本ページに投稿されていましたがすっかり忘れていました(以前の投稿).

(投稿者 川崎)

2021-03-13

専門医のフォーカス・非専門医のポーカス

😊 当院でも系統だったFoCUSの導入を予定しているので再度まとめます 
  • FoCUS(focused cardiac ultrasound)➜ 的を絞った循環器専門医による心エコー図検査
  • POCUS(point-of-care ultrasound)➜ 的を絞った循環器専門医の(心)エコー図検査

J Am Soc Echocardiogr 2013;26:567-81を一部改変)
通常の心エコー図 FoCUS
対象 すべての症例 限定された症例
実施場所 どこでも 診療中のベッドサイド
断面 あらゆる断面 5断面(下図)
モード 全モード 断層のみ
計測 定量的に評価 行わない
検者 ソノグラファーや医師など 経験ある臨床医


😀 FoCUSの診断ターゲット
  1. 左室のサイズと収縮機能
  2. 右室の収縮機能
  3. 血管内ボリューム
  4. 心膜液や心タンポナーデの有無
  5. 慢性心疾患の著しい所見
  6. 弁膜疾患の著しい所見
  7. 大きな心内腫瘍

※定性あるいは半定性に評価してむやみに計測しない
※局所壁運動異常の局在と程度などを詳細に観察しない

参考)心エコー 2021;22:194-8/J Am Soc Echocardiogr 2014;27:683.e1-e33

(投稿者 川崎)

2021-03-12

ビアーズ基準 Beers Criteria


高齢者に潜在的な不適切医薬品の例

💁 高齢者に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-03-11

🎯 今週の一枚

目薬で改善がないと訴える症例の左眼



(投稿者 川崎)

2021-03-10

MRIのblack-blood(BB)法

  • 血管内腔を無信号に して血管壁の性状評価を行うMRIの技術
  • 特に頸動脈狭窄時の不安定プラーク同定に有用と考えられる
  • プラークがT1強調で高信号なら出血成分があり不安定と判断
  • ただ施術者にある程度の経験が必要でルーチン化には至らず
  • 検査時間も長く安静保持が難しいとアーチファクトが大きい


上のFig 2は安定例・下のFig 5は不安定例(ともに左上のT1強調BB像に注目 👀)


💁 MRIに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-03-09

帯状疱疹による偽性ヘルニア

  • 帯状疱疹の診断および腹部膨隆で診断は比較的容易(下図)
  • 帯状疱疹1,210例による検討では腹筋麻痺は2例とかなり稀
  • 60歳以上の男性で第8〜12胸神経領域に多い(左右差なし)
  • 36例中23例が完全に回復し多くが6カ月以内(平均4.9カ月)
  • 消化器症状の合併が36例中7例で,他の例は症状を認めない



💁 帯状疱疹に関連する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-03-08

ボクサーのように…

労作時の息切れで来院した症例

🐧 解説
  • 鎖骨上に陽性波 ➜ 触知で動脈拍動と診断(コリガン脈ではなくて蛇行疑い)
  • 顎下に陥凹あり ➜ 触知で静脈であることを確認(中心静脈圧の上昇を示唆)
  • 頸動脈の隆起や内頸静脈の陥凹はいずれも不規則 ➜ 心房細動の存在を示唆
  • スロー再生で隆起(収縮期)の後に陥凹出現 ➜ 頸静脈拍動はy谷x谷閉塞
  • 最終的に心房細動と左室肥大を伴う収縮力の保たれた左心不全と診断した

🐤 独り言
  • スロー再生するまで,内頸静脈の陥凹がy谷(拡張期)とは意識しませんでした.同様のことを以前にも経験しています(過去の投稿).動体視力のトレーニングはボクサー選手だけではなく,循環器内科医にも必要だったりして…

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(投稿者 川崎)

2021-03-07

臨床現場即時検査 POCT (point of care testing)

👽 定義
  • POCTとは,被験者の傍らで医療従事者(医師や看護師等)自らが行う簡便な検査である.医療従事者が検査の必要性を決定してから,その検査によって行動するまでの時間の短縮および被験者が検査を身近に感ずるという利点を活かして,迅速かつ適切な診療・看護,疾病の予防,健康増進等に寄与し,ひいては医療の質,被験者のQOLおよび満足度の向上に資する検査である.(日本臨床検査自動化学会誌POCTガイドライン第4版より)  

👾 分かり易く言えば…
  • 被検者の傍らで行われる検査あるいは被検者自らが行う検査で,例えば急性冠症候群に対する心筋トロポニンTや発熱時のインフルエンザウイルス抗原など

POCTの利点 💨
  1. Therapeutic turnaround timeが短く臨床判断が容易となる
  2. 即時結果により患者予後が改善する可能性がある
  3. 大型の分析装置より採取する検体が少量ですむ
  4. 医療スタッフの効率がよくなる
  5. 検体搬送が不要で保存による検体の劣化がない 

POCTの欠点 💦
  1. 結果の信頼性(検査実施者の技術の問題,簡易検査として扱われている,測定過誤の解析が難しい,精度管理が難しい)
  2. 日常検査との不整合(測定方法が異なる)
  3. 管理上の問題(機器・操作者が多い,試薬保存管理が適切に行われにくい)
  4. ネットワーク化が遅れている(医師の依頼,結果の記録,適切な会計処理が問題になることがある)
  5. 経済性(ランニングコストが高い)


(投稿者 川崎)

2021-03-06

ブラインドループ症候群 Blind loop syndrome

  • 腸吻合術後の合併症の一つで腸管の盲嚢や盲環を主原因とする病態の総称
  • 邦名は盲管係蹄症候群や盲端症候群,盲管症候群など未統一(のようです)
  • 症状は下痢や消化吸収不良,貧血に加え腹部膨満や腹痛のみの場合もある
  • 吻合型式から①短絡による悪性循環,②盲管,③盲嚢の3つに分類(下図)
  • 原因は盲嚢内のうっ滞・過伸展・重積・細菌異常増殖による粘膜障害など
  • 初報は米国の医師であるEstesとHolmの4例報告(Ann Surg 1932;96:924-9
  • 発現は術後1月~37年と個人差が大きく必要に応じ盲嚢切除術などを考慮


😕 関連病態(胃切除後症候群)
  • 輸入脚症候群(afferent loop syndrome)➜ BillrothⅡ法再建後では輸入脚に胆汁や膵液が充満 ➜ 食後の内圧上昇時に残胃内に急激流入 ➜ 胆汁性の大量嘔吐
  • ダンピング症候群(dumping syndrome)➜ 胃全摘後などは残胃容積低下と幽門輪喪失 ➜ 食物が十二指腸~空腸に高張のまま急速流入 ➜ 発汗や動悸,顔面紅潮,腹痛,嘔吐,高血糖,めまいなど


(投稿者 堀内/川崎)

2021-03-05

アルドラーゼ Aldolase

  • 嫌気性解糖系酵素で全身の臓器に広く存在し組織崩壊に伴い血清中に流出してくる
  • 3種のアイソザイム(A型=筋,B型=肝,C型=脳)があるが臓器特異性には乏しい
  • 肝疾患,白血病,癌, 甲状腺機能異常,心筋梗塞, 筋ジストロフィーなどで上昇する
  • 赤血球内にも多量のアルドラーゼが含まれているため溶血だけでも高値となりえる 

アルドラーゼは臨床現場ではあまり活用されていないが,多発性筋炎・皮膚筋炎の診断基準と重症度分類(参照:日内会誌 2015;104:2125-31)に記載されているため実力以上に有名だと思うが… 😐
  • 診断基準項 ➜「血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇」
  • 重症度分類 ➜「原疾患に由来するCK値もしくはアルドラーゼ値上昇がある」

(投稿者 川崎)

2021-03-04

フィジカル達人の講演から

Physical Examでほとんどの心疾患はほぼ診断可能である
  • 心電図,レントゲン,心エコーなどの検査はPhysical Examの確からしさを検証するためにあると考えること
  • 精密検査の結果とPhysical Examが食い違っても直ちにそれを受け入れず,その理由を考えること
  • そうでなければPhysical Examの腕は上がらない
  • 精密検査の方が正しくないことも少なくはない

🉐 関連投稿(名言編)

(投稿者 川崎)

2021-03-03

食欲低下のGERDPPI

👀 GERDPPI
  1. Gastric
  2. Endocrine/Electorocite
  3. Respiratoly
  4. Drug
  5. Psycology
  6. neoPlasm
  7. Infection/Inflammation

 😁 おまけ
  • もちろんGERDPPIはGERD(逆流性食道炎)にはPPI(プロトンポンプ阻害薬)の語呂合わせだよ!

🉐 関連投稿(語呂合わせ)

(投稿者 川崎)

2021-03-02

外傷性刺青 Traumatic tattoo

  • 外的な力で異物が皮膚に入り色素沈着を呈する病態
  • 刺入創(鉛筆の芯など)や擦過創,爆損傷後に出現
  • 自然消退はないので初診時の洗浄や異物除去が重要
  • 治療はデブリードマンやレーザー(一部保険適応)


(投稿者 川崎)

2021-03-01

マズローの金槌 Maslow's hammer

  • 米国の心理学者であるマズロー (Abraham Harold Maslow: 1908–1970)によって提唱された観念
  • 認知バイアスの一つで,law of the hammerやMaslow's hammer, golden hammerとも呼ばれる
  • If all you have is a hammer, everything looks like a nail. ハンマーを持てばすべてが釘に見える
  • 臨床現場では特定の知識や技術を持っていると診断や治療が偏ってしまうことがあることを意味

実例 😶 専攻医から相談を受けた息切れ症例の心尖拍動(左頭で白タオルは乳房をカバー)


😮 解説
  • 心尖部が周期的に陥凹している(systolic retraction of the apex)➜ 収縮性心膜炎の身体所見として有名!
  • 「収縮性心膜炎が強く疑われる」とアドバイスして心エコー図を指示 ➜ しかし同病態を示唆する所見なし
  • 身体所見を見直すと収縮性心膜炎を示唆する他の所見はなかった(例:心膜ノック音フリードライヒ徴候
  • 最終的には拡張不全による慢性左心不全と診断(相談に来てくれた専攻医の先生...混乱させてゴメンね 🙇)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)