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2025-08-21

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音は漸増・漸減型(ダイアモンド型 or 菱形)
  • よってⅠ音とⅡ音を聴取できる(特にⅡ音!)
  • 例えば大動脈弁狭窄症やHCMの左室流出路狭窄

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠から以下のような内容のメールをいただきました.「講習会では心音図が心音と一緒に動画として提示される.でも聴衆はとてもそれを目で追えない.心音図をなぞりながら音を聴かせるという風にすればとても理解しやすい.」
  • 「心音図は必ずしも実物でなくて絵でもいいですよ」とも言われましたが,せっかくなので実物を使用してみました.本動画は教育用として作成したので,商業目的を除いてご自由にご活用ください(版権放棄かつ利用時の謝辞記載も不要です)

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(投稿者 川崎)

2025-08-20

情報ごみの処理

  • 病院ではペーパレス化が進んでいますが,どうしても個人情報を含む紙が残ります.そんな時は裁断しますが,ホチキスなどを事前に外す必要があります.大学の医局名簿などは書籍の形態をとっているため業務用シュレッダーでも対応が困難です.先日,秘書さんに相談すると溶解処理するといって回収してくれました.なお焼却処分も可能ですが環境的に対する悪影響の懸念があります.

㊙ 機密文書の溶解処理
  • 化学的な溶解によって機密文書を完全に廃棄する方法
  • 情報ごみを箱に入れるだけ(ダンボール1箱~2,000円)
  • クリップ取外し不要,情報漏洩リスク低,環境に優しい
  • ただ業者に一任するため信頼できる業者を選ぶ必要あり

溶解処理の一例日本郵便

🚑 ゴミに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-19

待機的虫垂切除術 Interval appendectomy

  • 急性虫垂炎の治療法のひとつで,抗菌薬による炎症の鎮静化後に待機的に実施される虫垂切除術
  • 利点は手術法選択,癌スクリーニング,合併症低下に加え日程調整,医療費削減,早期社会復帰
  • 炎症が比較的軽度で、穿孔や膿瘍などの合併症を伴わない単純性虫垂炎に実施されることが多い
  • しかし近年では複雑性虫垂炎に対してもInterval appendectomy戦略が有効の報告あり(下図表)


🚑 虫垂炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-18

フィジカルクイズ(No. 17 & 18)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-08-17

デコイ細胞 Decoy cell

  • decoy(猟に使う)おとり,(人を罠に掛けるための)サクラ,(軍事用の)放出おとり/発音《動》dikɔ́i 《名》díːkɔi
  • 大きく均一な好塩基性の封入体の核を持つ尿中脱落細胞で, 悪性細胞と紛らわしい良性細胞という意味でおとり細胞と命名
  • 1970年代にポリオーマウイルスとの関連が明らかになり,特にBKウイルスの再活性化の鋭敏な指標として利用されている 
  • ただしdecoy cellはアデノウイルスやCMVなど他のウイルス感染によっても,尿中(尿沈渣中)に出現する可能性がある


 
(投稿者 川崎)

2025-08-16

医療機関別MDC分析

  • DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類包括評価)データのMDC(Major Diagnostic Category:主要診断群)コードを用いた分析
  • MDCは下記の18分野に分類され(その下には傷病名506種類,診断群分類3248分類がある),医療資源の適正配分の計画策定に向けた分析を可能にする

  1. 神経系疾患
  2. 眼科系疾患
  3. 耳鼻咽喉科系疾患
  4. 呼吸器系疾患
  5. 循環器系疾患
  6. 消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患
  7. 筋骨格系疾患
  8. 皮膚・皮下組織の疾患
  9. 乳房の疾患
  10. 内分泌・栄養・代謝に関する疾患
  11. 腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患
  12. 女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩
  13. 血液・造血器・免疫臓器の疾患
  14. 新生児疾患、先天性奇形
  15. 小児疾患
  16. 外傷・熱傷・中毒
  17. 精神疾患
  18. その他

- 釧路医療圏医療機関のMDC分析 -
 
(投稿者 川崎)

2025-08-15

Ⅳ音の深堀

心電図異常を指摘された無症候例

😎 解説
  • 漸増・漸減する収縮期の駆出性雑音あり
  • 前収縮期(拡張後期)に大きな過剰心音
  • 低調成分が主体であるためS4(赤四角)
  • 本例の最終診断は閉塞性肥大型心筋症

😛 追加コメント
  • 洞調律の肥大型心筋症では肥大部位にかかわらずS4を高頻度(約70%)に認める(Circ J  2023;87:1068-74)。
  • なおS4の生じる前提として、心室コンプライアンスの低下あるいは拡張末期圧の上昇に対する心房機能の亢進が必須
  • 増高した心室流入血流が硬い心室を振動させてS4が発生(Tavel ME. Year Book Medical Publishers;1971:44-63)
  • この振動はA波として触知でき(下図),抬起性拍動と合わせて二峰性心尖拍動(double apical impulse)と呼ばれる.
  • なお心房細動ではⅣ音(第4音)は記録されない.また洞調律であっても心房機能が低下すればS4は減弱~消失(


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(投稿者 川崎)

2025-08-14

今週の一枚 🎯

前日からの胸痛を訴える若者(突然発症で吸気時に増悪/気胸の既往歴あり)



(投稿者 川崎)

2025-08-13

医療アライアンスとケアミックス病院

  • 先日の会議でアライアンスケアミックスというタイトルの議題がありました.なんとなくぼんやりとしか理解していなかった用語だったので調べてみました.

🚁 アライアンス(alliance)
  • 同盟や提携を意味し,航空会社によるエアライン・アライアンスが有名である.共同で運用することで,各航空会社はより効率的な運航と幅広い路線展開を実現できる.
  • 医療アライアンスとは医療機関間での連携を意味する新しい概念で定型的な枠組みはない.各医療機関が地域医療分析を共有し医療ニーズに応えるため連携を進める.
  • 医療アライアンスを構築するのに重要となってくるのは人財である.現状と地域の医療ニーズを把握し,医療アライアンスの構築のために力を尽くせる人財を育成する.


🍭 ケアミックス病院(Caremix hospital)
  • その定義(厚生労働省)は一般病床と療養型病床または精神病床の混合型であるが,一般病床を有していた病院が療養型病床や精神病床に変わりケアミックス病院として展開されていることが多い.
  • 急性期病棟+回復期リハビリテーション病棟+療養病棟,急性期病棟+地域包括ケア病棟+療養病棟+緩和ケア病棟,回復期リハビリテーション病棟+療養病棟など(訪問看護や介護施設の併設あり)
  • 一般病床と療養型病床など複数の病床機能を備えていても病床数の割合でケアミックス病院にならないこともある(例:一般病床≧80%以上なら急性期病院,療養病床≧80%以上なら療養型病院になる)


(投稿者 川崎)

2025-08-12

TRACP-5b(トラップ ファイブ ビー)

  • 略語 tartrate-resistant acid phosphatase(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)の略
  • 分類 TRACPのうち骨由来のアイソザイム成分は 5a(マクロファージ)と 5b(破骨細胞)
  • 実際 血清0.5mlを要し2~4日で判明(目安:男性170~590 mU/dL,女性120~420 mU/dL)
  • 意義 破骨細胞による骨吸収で血中に放出されるため破骨細胞の数や骨吸収活性などを反映
  • 特徴 他指標と比べ血清であるため腎機能の影響を受けにくく日内変動や食事による影響も小
  • 適応 代謝性骨疾患および骨転移(肺癌,乳癌,前立腺癌に限る)の診断補助(判断料144点)
  • 再検 6月以内に1回に限り算定(治療方針を変更した際には変更後6月以内に1回に限り算定)

参考)WEB総合検査案内,他

 
(投稿者 川崎)

2025-08-11

Ⅲ音の深堀

息切れを主訴に受診した症例

😎 解説
  • 心尖部に拡張早期の大きな過剰音を認める
  • S2の約140ms後に出現する低調音(四角)
  • これらの特徴はS3(Ⅲ音/第3音)に合致
  • 本例は最終的に拡張型心筋症と診断された
😛 追加コメント
  • Ⅲ音の機序として,左室充満圧(≒左房圧)の上昇による左室急速流入速度の増大とその突然の停止が推察されている(Jpn Heart J 1976;17:150-62
  • その圧変化は心尖拍動図の急速流入(RF: rapid filling)波として触知することができる(下図参照:上図よりS3が小さいのは心尖に圧端子を置くため)
  • 本例では減弱したS1にも注目(通常は心尖部側でS1>S2).左室収縮力が低下すると左室圧の上昇が緩徐でS1が減弱(Am J Cardiol 1971;28:140-9


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(投稿者 川崎)

2025-08-10

脆弱ぜいじゃくX症候群 Fragile X Syndrome 

  • 概要 脆弱X随伴振戦/失調症候群を伴うトリプレットリピート病のひとつ
  • 原因 X染色体長腕末端のFMR1遺伝子の3塩基(CGG)繰り返し配列の延長
  • 機序 神経細胞の核内に凝集体が形成され機能障害に至ると推測されている
  • 症状 男性は発達障害や重度の知的障害,自閉症スペクトラム(女性は軽度)
  • 関連 脆弱X症候群関連疾患は50歳~進行性の小脳失調やパーキンソンなど
  • 身体 細長い顔,大耳介,巨大睾丸,関節過伸展,扁平足、僧帽弁逸脱など
  • 治療 根本的な治療法を開発中(現時点では個々の病態に対する対症療法)
  • 予後 発症後は進行性(本邦は100人未満? 自閉症とされている例が多い?)

参考)難病情報センター,他

脆弱X症候群の顔面特徴(細長い顔,突出する耳と額)

(投稿者 川崎)

2025-08-09

日々勉強

  • 指導医師 「あの患者さん,ひどい便秘みたいだね」
  • 看護学生 「高齢者は嵌入便が多いって聞きました」
  • 指導医師 「かんにゅう…べん…どんな漢字? 😢」

嵌入便
  • 肛門手前にかたい便が溜まってしまった状態
  • 高齢者に多く嵌入便を自力で出すことは困難
  • 手袋とグリセリンなどの潤滑剤で摘便をする


😐 追記
  • 欧米では fecal impaction(FI)と定義されている,俗にいう糞詰まりの状態です.本邦では同様な状態は宿便,糞便充塞,糞便塞栓,嵌入便などと呼ばれていますが,統一した医学用語はないそうです.


(投稿者 川崎)

2025-08-08

OTC類似薬

OTC:Over The Counter
  • 医薬品は医師の処方箋が必要なものと不要なOTC医薬品(=市販薬)に大別される
  • OTC類似薬はOTC医薬品と効果やリスク他が似ているが原則処方箋を要する医薬品

😑 追加コメント
  • OTC医薬品は公的医療保険の適用対象となるため自己負担は1~3割程度で済みます.しかし近年医療費削減のため,これらのOTC類似薬を保険適用から外す検討が進められています(例:医療用医薬品として処方されるロキソニンとOTC医薬品として販売されるロキソニンSの成分はほぼ同じ).OTC類似薬を保険除外することで1兆円ほどの医療費が削減できると算定されていますが,健康被害や患者負担が増加するなどの懸念があるようです.
 
(投稿者 川崎)

2025-08-07

今週の一枚 🎯

労作時の息切れで来院した症例(座位)


🐝 解説
  • 右頚部腫瘍(30年著変なし)
  • 安静座位で頚静脈は視認せず
  • 深吸気負荷後も頚静脈は陰性
  • 心音は明瞭なギャロップあり
  • BNPは著増(>1000 pg/ml)
  • 心エコー図で左室駆出率18%

🐙 頚静脈の座位定性の弱点

身体所見は診断特異度は高いのですが,感度が少し劣るという共通した問題点があります(評価者のばらつきもですが😑).一方,頚静脈の座位定性(シンプル頚静脈)は感度も特異度も臨床的には十分すぎるくらい高いと思われます.ただし特定の病態では役立たないと感じることもあるので,以下に列記してみます.

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(投稿者 川崎)

2025-08-06

マイオカイン Myokines

  • 骨格筋から分泌される生理活性物質の総称のこと
  • ギリシャ語 myo(筋)とkine(作動物質)の造語
  • 例えばサイトカインの1つ interleukin-6(IL-6)
  • IL-6は筋収縮で分泌され骨格筋の糖取り込み促進
  • 他のマイオカインは生理作用が不明なものが多い
  • 脂肪燃焼や動脈硬化抑制,代謝改善,免疫向上?
  • 創薬の新たなターゲット候補でも期待されている

- マイオカインの概念 -
バソプレッシン
💁 生理活性物質に関する過去の投稿 ➜ コチラ
 
(投稿者 川崎)

2025-08-05

👂 最近の耳学問

  • P2Y12受容体拮抗薬(阻害薬)➜ ADP(アデノシン二リン酸)の受容体であるP2Y12受容体を阻害することで抗血小板作用を示す薬剤(チエノピリジン系:第1世代,チクロピジン;第2世代,クロピドグレル;第3世代:プラスグレル/非チエノピリジン系,チカグレロル)
  • 対側性変化(reciprocal changes)➜ 急性心筋梗塞例の心電図でST上昇を示す誘導と鏡像関係にある誘導のST低下に対する用語として統一された(ミラーイメージは使用しない).同様に心臓周囲の用語も心膜に統一(心膜液貯留や心膜ドレナージなど/今後は心嚢は使用しない)
  • rVCSS ➜ Revised Venous Clinical Severity Scoreの略で,邦名は改訂静脈臨床重症度スコア.静脈不全を反映し,例えばrVCSS≧3点では日常生活が著しく妨げられると判断でき静脈ステントを考慮(適正使用指針).具体的な評価方法はココ
  • three noes IE ➜ 右心系単独の感染性心内膜炎(IE: infective endocarditis)のうち①静注薬物使用者,②心臓デバイス関連,③先天性心疾患(心室中隔欠損症,ファロー四徴症,僧帽弁弁膜症,大動脈弁弁膜症など)のいずれも認めない症例で,右心系IEの約16%を占めるという報告あり

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-04

フィジカルクイズ(No. 15 & 16)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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(投稿者 川崎)

2025-08-03

PCAS ピーキャス

  • post cardiac arrest syndromeの略で邦名は心停止後症候群

- 脳障害の病態生理 -

😐 おまけ
  • PCASといえば体温管理療法(targeted temperature management;TTM)(旧名はtherapeutic hypothermia,低体温療法)
  •  PCASのもう一つの話題は人工心肺を用いたECPR(Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation,体外循環式心肺蘇生)

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(投稿者 川崎)

2025-08-02

着用型心臓除細動器(WCD: wearable cardioverter-defibrillator)

  • 着用型ベスト内に接触型心電図電極と除細動パッドを有し有線で致死的不整脈に対して除細動を行う医療機器
  • 体表面から行うがICD(植え込み型除細動器)に劣らぬ診断感度,特異度でわが国でも2014年1月から保険適用
  • 使用例は急性虚血ならびに急性心不全のICD の一次予防の適応が確定するまでの期間,突然死予防を目的など
  • 非虚血性心筋症の報告は限定的:心筋炎後心筋症,たこつぼ心筋症,産褥後心筋症,拡張型心筋症の急性期など
  • 心移植待機例,ICD適応であるが感染でデバイス抜去後や他疾患の治療を優先すべき症例などにおいても要考慮
  • わが国ではWCDの使用は短期(3ヵ月間)が原則としているが,長期使用については,今後も検討が必要である



📍 WCDの使用を考慮する病態
  • 左室駆出率35%以下で、NYHAクラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する急性心筋梗塞発症後40日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、NYHA クラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する冠動脈バイパス後または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後 90 日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、非虚血性急性心不全発症後90日以内の症例
  • 心移植待機条件を満たす非可逆性重症心不全症例
  • ICDの適応があるが、他の身体的状況により直ちに手術を行えない症例
  • ICDによる心臓突然死二次予防を考慮するが、臨床経過観察や予防治療の効果判定が優先される症例
  • 感染等の理由で一時的にICDを抜去する症例


🔦 おまけ
  • WCDの保険償還には植込み型除細動器(ICD)施設基準を満たす必要あり
  • つまり年に電気生理学的検査≧50例,開心術など≧30例,PM移植術≧10例
  • 関連医療従事者(医師およびメディカルスタッフ)がメーカー研修を受講
 
(投稿者 川崎)

2025-08-01

The efficacy and effectiveness of...

  • 英語論文で多用されているフレーズで,基本的には共に有効性を意味
  • しかし医学など科学の特定の分野では,そのニュアンスは少し異なる

efficacy
  • 理想的な条件下で得られる効果の高さ(例:計画された臨床試験

effectiveness
  • 現実的な条件下で得られる効果の程度(例:実際の日常臨床現場)

💁 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-07-31

今週の一枚 🎯 サロンパスにも負けず

息切れで来院(座位)

😋 解説
  • 首に貼られたシップで頚静脈評価は困難?
  • しかしよく見ると頚部の中央に明瞭な隆起
  • しかも耳垂直下まで陽性拍動を確認できる
  • その後の検査で非代償性心不全を確認した

😎 現場実況
  • 本例はシップを見た瞬間に「これでは判定できないな」と安直に考えてしまい,頚部中央の明瞭な拍動に気が付くのに少し時間を要した.頚静脈拍動は用手的に圧迫できる弱い拍動であるが,最重症の陽性波(三尖弁逆流によるランチシ徴候が多い)はかなり力強い.実際に,本例も指で押さえてもなかなか消失しなかった.
  • 本例では動画の途中に大きな呼吸をしていることにも注目して欲しい(吸気負荷は未実施である).このように自発的な大きな呼吸も心不全所見の一つと考えられる(特にコロナ以降のマスク装着時).なお通常呼吸時に耳下まで達する陽性波を呈する頚静脈拍動は,深吸気負荷でさらに悪化することは少ないと思われる.
  • 本例は心電図で右脚ブロック+左軸偏位+ウェンケバッハ型2度房室ブロックであった(三枝ブロックならぬ四枝ブロック?😁).心電図検査後にもう一度,頚静脈拍動を見直したが,ウェンケバッハ型2度房室ブロックとは自信をもっては言えなかった(反省:同様の過去の経験).理論的にはほとんどすべての不整脈は,頚静脈+頚動脈所見(または橈骨動脈触知)で鑑別できるのだが…(匠の業

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(投稿者 川崎)

2025-07-30

ポジコン・ネガコン

科学研究において結果を検証するための比較対象を設定した対照実験(control experiment)で用いる2種類の対照(コントロール)のこと

👉 陽性対照(ポジティブコントロール、Positive Control: PC)
  • 明らかに陽性を示すと予想される対照.この陽性対照(ポジコン)に反応が認められない場合,実験系に問題がある可能性が高く結果の信頼性が損なわれる(偽陰性).例えばアレルゲンであることが分かっている症例に対するピーナッツや牛乳

👈 陰性対照(ネガティブコントロール、Negative Control: NC)
  • 明らかに陰性を示すと予想される対照.この陰性対照(ネガコン)が陰性となることで実験系が正しく機能していることを確認できる(偽陽性を排除).例えばアレルギー反応を引き起こさないことが確認されている生理食塩水や偽薬

(投稿者 川崎)

2025-07-29

プローベテスト Probe-to-bone test: PTB test

  • 骨髄炎の判定法の一つででベッドサイドで施行可能
  • ゾンデの尖端が潰瘍底内の骨にあたるか否か(下図)
  • 感度66%,特異度85%(Diabetes Care 2006;29:945


💁 骨髄炎に関する過去の投稿 ➜コチラ
 
(投稿者 川﨑)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

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(投稿者 川崎)

2025-07-27

カルマン症候群 Kallmann syndrome

  • 概要 嗅覚低下と低ゴナドトロピン性性腺機能低下の合併した症候群
  • 形式 X連鎖潜性,常染色体顕性・潜性遺伝などのさまざまなパターン
  • 原因 視床下部ゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)ニューロン障害
  • 命名 ドイツ系米国人 Franz Josef Kallmann(1897–1965)の初報()  
  • 疫学 男性で約1万人に1人,女性で5万人に1人で男性優位に発症する
  • 症状 女児で14歳,男児で15歳まで二次性徴の欠落または不完全発現
  • 合併 無嗅症や低嗅症,腎形成異常,難聴、口唇口蓋裂など(下表)
  • 治療 性ホルモン補充(挙児に至る例あり),一部で自然に軽快例あり



(投稿者 川崎)

2025-07-26

第107回医師国家試験(2013年)

【問題H4】
flow-volume曲線を別に示す。長年の喫煙習慣と関連する閉塞性障害を示すのはどれか。







判定


😐 解説
  • ① 長年の変化による閉塞性障害のパターンで,ピークフローから呼気終末までが下に凸の曲線が典型的
  • ② 閉塞性障害のパターンだが残気量の変化なし(気管支喘息など急性変化による閉塞性障害)
  • ③ 気道狭窄のパターン
  • ④ 正常パターン
  • ⑤ 拘束性障害のパターン

(投稿者 川崎)

2025-07-25

眼類天疱瘡がんるいてんぽうそう Ocular Pemphigoid

👀 角膜の復習
  • 角膜は上皮・実質・内皮の3層によって構成されている
  • それらの層はいずれも血管を必要としない特殊な構造
  • 角膜上皮は角膜周辺の輪部に存在する幹細胞から供給
  • 徐々に中心へ向かって進行し最終的には表面から脱落
  • 幹細胞から分裂して脱落するまでかかる時間は数週間
  • 角膜移植後半年で上皮はホスト由来上皮に入れ替わる


🔎 眼類天疱瘡
  • 概要 抗結膜基底膜抗体によって結膜に障害を生じる慢性疾患
  • 分類 類天疱瘡の1種(天疱瘡は別で抗デスモグレイン自己抗体)
  • 所見 癒着,睫毛乱生,角結膜炎,血管新生,混濁,角化など
  • 疫学 頻度は1~5万人に1人で60歳以上に多く女性優位(2:1)
  • 治療 人工涙,局所抗炎症薬,内反睫毛抜去,免疫抑制薬など
  • 予後 皮膚の類天疱瘡より不良(最終的には角膜移植:下図)

参考)In: StatPearls,他

- 眼類天疱瘡の角膜移植 -

💁 天疱瘡に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-07-24

今週の一枚 🎯

下腿浮腫で来院した大動脈弁置換術後例(座位)

😋 解説
  • 安静座位で頚部中央に陥凹を認める
  • 深吸気の負荷で一見、拍動が消失?
  • よく見ると顎下に明瞭な陥凹(矢印)
  • 非代償性心不全と考え利尿薬を追加

😎 コメント
  • 心不全の「シンプル頚静脈©」は,拍動を視認するか否かの定性法ですが,慣れてくれば定量法にも挑戦してみてください.
  • 本例は中心静脈圧(≒右房圧)の上昇が中等症~重症の心不全と判定できるでしょうか.大まかな目安は下表をご参考に💁

軽症 中等症 重症
拍動の上縁 鎖骨上窩 頚部中央 顎下
負荷の有無 吸気保持で早期のみ拍動 吸気保持で拍動持続 安静時に拍動
拍動の様式 二峰性の陥凹 一峰性の陥凹 隆起



👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-07-23

ピストル射撃音

先日,初期研修医1年目の先生から大動脈弁逆流のピストル音について質問を受けました😮以前に心臓Physical Examination広場にアップしたのですが(ココ)松下ERランチ・カンファレンスには未投稿だったので同じ内容を掲載しておきます.

(投稿者 川崎)








👾 解説
  • 収縮期の極めて鋭い音=ピストル射撃音(Pistol-Shot sound)を認める
  • 大脈による末梢動脈圧の急激な上昇に関連した音と考えられる(下図)
  • 本例は高度の大動脈弁逆流による心不全と診断され弁置換術を受けた
  • 術後にピストル射撃音やコリガン脈,オースチン・フリント雑音は消失

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2025-07-22

Hemosorba® ヘモソーバCHS

  • 優れた石油ピッチ系ビーズ状活性炭を用い高い吸着性能を実現
  • 生体適合性を考慮して吸着剤を親水性ポリマーでコーティング
  • よって微粒子の発生、血液凝固、血球成分の付着や損傷が軽減
  • 製造販売は旭化成メディカル株式会社(血漿交換1日4,200点)
  • 除去可能内因性物質は肝障害によるアミノ酸やクレアチニン他
  • 外因性は催眠・抗てんかん・精神薬、解熱鎮痛薬、抗生剤など

- 標準的な血液流路図 -

(投稿者 川崎)

2025-07-21

フィジカルクイズ(No. 13 & 14)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-07-20

LADA & LADY

  • LADA: latent autoimmune diabetes in adults(主に海外で使用,典型例は35才以降)
  • LADY: latent autoimmune diabetes in youth(小児を含む若年者に発症したLADA)
  • SPIDDM: slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus(緩徐進行1型糖尿病)


👺 LADAの定義(以下のすべてを満たす)
  • 35歳以降の発症
  • 既知の膵島関連自己抗体のいずれかが陽性
  • 糖尿病の診断後6ヶ月以降にインスリン治療が必要


💁 自己免疫性糖尿病に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-07-19

ピトレシン(一般名 バソプレシン/Vasopressin)

日本版敗血症診療ガイドライン2020より

CQ6-9-1&2
  • 成人敗血症患者に対する血管収縮薬の第一選択としてノルアドレナリン,ドパミン,フェニレフリンのどれを使用するか?
Answer
  • 第一選択としてノルアドレナリンを投与することを弱く推奨する。(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)

CQ6-10-2
  • 成人敗血症患者に対する血管収縮薬の第二選択としてバソプレシンを使用するか?
Answer
  • 第二選択としてバソプレシンを使用することを弱く推奨する。(GRADE 2D:エビデンスの確実性=「非常に低」)


ピトレシンの効能又は効果添付文書
  • 下垂体性尿崩症、下垂体性又は腎性尿崩症の鑑別診断、腸内ガスの除去(鼓腸、胆のう撮影の前処置、腎盂撮影の前処置)、食道静脈瘤出血の緊急処置

💣 追加コメント
  • 敗血症などによる急性低血圧やショック時の補助療法としては適応外使用であるが企業見解が提出され,「バソプレシン【注射薬】」を「急性低血圧」、「ショック時の補助治療」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるという社会保険診療報酬支払基金の判断がなされている。
  • 企業が提出している用法・用量についての記載は点滴静注:生理食塩水、5%ブドウ糖などで溶解し、0.01~0.04 U/分で持続静注.具体的には1アンプル(1 ml中合成バソプレシン20単位,528円)を生食19 mLで溶解して(1 mlあたり1 U),シリンジポンプで0.6〜2.4 mL/Hで投与
バソプレッシン
💁 バソプレシンに関する過去の投稿 ➜ コチラ
 
(投稿者 川崎)

2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-07-17

今週の一枚 🎯

健診で心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 心尖部で収縮期雑音を聴取する
  • Ⅱ音(S2)不明瞭で逆流性雑音
  • 右鎖骨(上)では雑音は不明瞭
  • 心エコーで僧帽弁逆流を認めた
😛 追加コメント
  • 大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音と異なり(自験例)、僧帽弁逆流の雑音は鎖骨にあまり放散しない。息止めをしない聴診では、呼吸音に埋もれて雑音を認識することが難しい。是非ASとの鑑別に利用したい。
  • MRでは逆流性雑音がⅡ音を超えるため、Ⅱ音の認識が困難になる。ただしこの原則は心尖部では当てはまるが、肺動脈弁領域ではあてにならない。その理由はⅡ音の肺動脈成分(2P)を聴取するためである。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-07-16

呑気症 Aerophagia

  • 概略 過剰な空気の嚥下で消化管内に多量の空気が貯留
  • 分類 器質的な異常がない機能的疾患で消化器系心身症
  • 症状 頻回のげっぷや腹部の膨満感,排ガスの異常など
  • 別名 呑気症候群,空気嚥下症,噛みしめ呑気症候群他
  • 動体 胃や大腸に存在するガスの65~70%は嚥下による
  • 原因 早食,炭酸,クレンチング(噛みしめ),ストレス
  • 治療 関連因子除去,抗うつ薬,消泡薬,歯科調整など


- 呑気症の年齢性別と自覚症状 -

(投稿者 川崎)

2025-07-15

バイオシミラー Biosimilars

📉 バイオシミラー(バイオ後続品)
  • 国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質,安全性,有効性を有する医薬品として,異なる製造販売業者により開発される医薬品

📈 ジェネリック
  • 先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み,同一経路から投与する製剤で,効能・効果、用法・用量が原則的に同一であり,先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品


💁 つぶやき
  • ジェネリック:有効成分が先発品と同一で血中濃度推移が同様なら認可
  • バイオシミラー:臨床試験で薬物 PK/PD,有効性,安全性の評価が必要

(投稿者 川崎)

2025-07-14

もし座位で認めれば…(フィジカルの高み)

心電図異常+労作時の息切れ(座位)

👼 解説
  • 安静呼吸時には頚部に拍動を視認せず
  • ただし稀に陽性波? ➜ キャノンa波
  • 深吸気保持で陽性波が連続出現(矢印)
  • 脈触診併用で同波は収縮期直前(a波)
  • 本例の最終診断は両心室肥大型心筋症

👳 独り言
  • 肥大型心筋症ではa波が明瞭になることが多いと思います.当院の研究でも7割以上の症例でa波を視認しています.ただしこの数値は臥床であって(典型的な自験例),座位でa波を認める症例は10%にすぎません.座位のa波視認は,HCMのフィジカル診断に対して感度10%ながら特異度は100%
  • 座位でa波を認める他疾患は3度房室ブロック(自験例)や期外収縮(自験例)によるキャノンa波です.その機序は右房収縮時に三尖弁が閉鎖しているためです(この場合はa波が規則正しく出現しないので視診でも鑑別可能).三尖弁狭窄では規則正しいa波ですが超稀(腫瘍による類似病態の自験例
  • HCMでa波が目立つ機序は右房の後負荷増大(≒右室のコンプライアンス低下)です.よって右室肥大を有する肥大型心筋症ではa波が目立ちやすいと思います(左室肥大のみでもベルンハイム効果のため右室コンプライアンスは低下).右室肥大を伴うHCMの頻度は1~2%と稀ですが(PLoS One 2017;12:e0174118),ぜひ右心系HCMのフィジカル診断に挑戦してみてください.

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(投稿者 川崎)

2025-07-13

第139回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
2-12 クレアチニンキナーゼ欠損症を合併したST上昇型急性心筋梗塞の一例
  • 右冠動脈(RCA)#2 閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術を施行した(total ischemic time 144分)。術後,高感度トロポニンI(hs-TnI)の上昇は認めたが,クレアチニンキナーゼ(CK)の上昇は認めなかった(peak CK[IU/L]/CK-MB[IU/L]/hs-TnI[pg/mL])=169/5/16863)。

2-16 自己免疫性心筋症の関与が示唆された虚血性心筋症の一例
  • 心臓MRI検査では冠血流支配領域に一致しない壁運動低下を認めた。さらに血液検査や心筋病理において,自己免疫性心筋症を疑う所見が得られ,至適薬物療法にも関わらず心機能は進行性に低下を認めた。

7-31 irAEによる洞不全症候群に対して心房リードレスペースメーカ植え込みを行った1例
  • ペースメーカ感染を認め全身麻酔下に経皮的リード抜去術を施行,全システム抜去術に成功した。元々のペースメーカ設定はAAIR⇔DDDR,60ppmであったが,累積心室ペーシング率が1%未満であったため心房リードレスペースメーカ(Abbott社製Aveir AR)の植込みを選択,右心耳基部に留置しAAI60ppmの設定とし た。

8-27 シトステロール血症の病原性変異の網羅的文献検索と早発性冠動脈硬化症
  • シトステロール血症はABCG5/G8遺伝子の病原性変異により発症する疾患で血中シトステロール高値に加えLDL-C高値,アキレス腱肥厚を伴い,家族性高コレステロール血症との鑑別を要する。


👻 当院からの発表
  • 2-10 冠動脈ステントで誘発されたコーニス症候群の1例(循環器内科 角本拓也ほか)
  • 4-16 心電図変化が気胸部位の推定に有用であった1例(循環器内科 江上 晟ほか)
  • 8-24 シンプル頚静脈©:負荷頚静脈法の学習アプリ(循環器内科 川﨑達也ほか)

江上先生は優秀賞ゲット & すべて英語論文として発表前に出版 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-07-12

ジフテリア Diphtheriae

  • ジフテリア毒素を産生するCorynebacterium diphtheriaeを病原体とする感染症
  • 感染経路は主に飛沫感染や接触感染で潜伏期間は1日~10日(通常2日から5日)
  • 症状は呼吸器(発熱や咽頭痛)、皮膚(発疹や潰瘍)、心筋炎,神経麻痺など
  • 日本は定期予防接種で2000年以降報告はない(海外では現在も一部で集団発生)
  • 診断は鼻汁や咽頭拭い液、皮膚病変から毒素産生性C. diphtheriaeを分離・同定
  • PCRでジフテリア毒素遺伝子検出や培養細胞を用いたジフテリア毒素の検出も可
  • 治療はマクロライドやPC系抗菌薬、抗毒素(ワクチンによる予防が極めて有効)
  • 濃厚接触者に対しては予防的な抗菌薬の投与を検討(感染症法では二類感染症


ジフテリアで特徴的な首のふくらみ(bull neck)

(投稿者 川崎)

2025-07-11

AS=鎖骨放散・大

健診で心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 心尖部で収縮期の雑音を聴取
  • Ⅱ音(S2)明瞭で駆出性雑音
  • 右鎖骨(上)でも雑音は明瞭
  • 心エコーで大動脈弁狭窄あり
😛 追加コメント
  • 大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音は鎖骨や頚部に放散する(ことが多い)。頚部は呼吸止めをしないと聴診が難しいが、鎖骨では息止めは不要。呼吸音にかき消されない大きな雑音があればASが多い。
  • やり方は聴診器の膜部を鎖骨上にのせるだけ(左右どちらでもOK)。MR雑音では鎖骨への放散が小さいため(雑音が呼吸音に埋もれる)、両者の鑑別に役立つ。ちなみに本例では大きなⅣ音あり。

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)