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2025-01-31

感染対策チーム:ICTとAST

  • ICT(Infection Control Team/院内感染対策チーム)は医療現場での共通語です(過去の投稿).最近ではAST(Antimicrobial Stewardship Team/抗菌薬適正使用支援チーム)も必須になってきた感があります.
  • ざっくり言って、ICTは感染予防(拡大予防を含む)が主な役割で、ASTは感染治療が主になります.ICTを感染予防対策チーム(Infection Prevention Control Team: IPCT)とASTで構成する場合もあるようです.

AST(抗菌薬適正使用支援チーム)
  • 2018年(平成30年度)診療報酬改定で要件を満たす医療機関ではAST加算を算定可能
  • (これが新設された背景には2016年に策定されたAMR対策アクションプランの存在)
  • コアメンバーは感染症専門医+薬剤師(+医師や看護師,臨床検査技師はICTと同じ)
  • 介入すべき患者の抽出や感染症診療支援+患者と施設全体の抗微生物薬の適正使用
  • 血培陽性,培養結果,発熱,抗微生物薬長期投与,相談事例などに対しASTラウンド


- ICTとASTの違い -

(投稿者 川崎)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性


(投稿者 川崎)

2025-01-29

Complex, Higher-Risk, and Indicated PCI (CHIPチップ)

  • 血行再建の対象となる冠動脈病変を有するが治療のリスクが高い患者
  • Complex and high-risk intervention in indicated patientsの略でもある
  • Indicated=計器他に表示された,指示された,治療などの適応のある
  • 例えば冠動脈自体が複雑病変であったり合併心疾患や併存症を有する
  • PCI時の合併症の発生率はCHIP>CHIPの疑い>非CHIPの順に⤴(下図)

- CHIPのサマリー図 -

💁 PCIに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-28

チェリーレッドスポット Cherry Red Spot

  • 概略 特定の病態で出現する網膜混濁に囲まれた黄斑の中心の赤みがかった領域
  • 原因 網膜中心動脈閉塞症 (CRAO) の網膜虚血/梗塞が多い(他に物質蓄積など)
  • 頻度 急性網膜中心動脈閉塞症(持続48時間未満)は年間10万人あたり約0.85人
  • 症状 CRAO(Central Retinal Artery Occlusion)は高齢者の突然の片側視力喪失
  • 治療 早期なら眼マッサージや前房穿刺,眼圧低下薬,高圧酸素,血栓溶解など
  • 予後 CRAOは視力予後が極めて悪い(血管新生緑内障により痛みを伴う失明など)


CRAOの64歳男性のチェリーレッドスポット
(突然の左眼の 羞明しゅうめい感を自覚した1時間後から視力低下)

(投稿者 川崎)

2025-01-27

仕事外で訪れた老人ホームで...

下腿浮腫があるとスタッフから聞きました(座位)

👵 解説
  • 両側の下腿浮腫(圧痕性)
  • 頚部に眼をやると拍動あり
  • 拍動は陥凹なので頚静脈!
  • 非代償性心不全と診断した

 👴 現場実況
  • 本例のバイタルサインは安定し,息切れなど心不全を示唆する症状は全くありませんでした.ほとんどの時間をベットに腰かけて過ごしているため,施設のスタッフは重力による水分貯留と判断していたようです.
  • 内頚静脈の判定方法(シンプル頚静脈©)を施設スタッフにお伝えました.幸い翌々日が施設担当医の診察日で,そこで利尿薬が処方され改善 😀 原因はお菓子の大量消費による塩分過多と思われました 😮

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-01-26

星状神経節ブロック (SGB) vs 冠攣縮 

⭐ Stellate Ganglion Block: SGB
  • 星状神経節は節後線維を心臓に投射し冠血流調節に大きく関与
  • SGBは交感神経の過緊張を抑制するため連日SGBが悪循環を断つ
  • SGBは血小板凝集抑制効果もあり冠攣縮の予防に有効な可能性
  • 冠攣縮性狭心症に対してSGBが有効であった報告はほぼ左側SGB
  • 完全内臓逆位を伴っていた症例では右側のSGBが有効の報告あり
  • エルゴメトリンによる冠攣縮の誘発前に左SGBで発作を抑制した
  • ただし冠攣縮誘発後にSGBを施行しても攣縮寛解作用はなかった


星状神経節ブロックが著効した難治性冠攣縮の41歳男性

📙 ガイドラインの記載(P50と図18)
  • 難治性・重症冠攣縮性狭心症に対して,星状神経節ブロック ・ 胸部交感神経節切除術を考慮してもよい(いずれもわが国では保険適用外).推奨クラス IIb,エビデンスレベル C


👉 冠攣縮に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-25

播種性非結核性抗酸菌症
Disseminated nontuberculous mycobacteria infection: DNTM

  • 非結核性抗酸菌が局所的に増殖し血液経路を介して他の臓器や組織に侵入した状態
  • 症状は非特異的で断続的 or 持続的な発熱,寝汗,体重減少,倦怠感,食欲不振など
  • 診断は血液培養で菌を検出(骨髄生検標本や体液または組織の培養および組織も可)
  • 長期の免疫抑制剤使用やHIV感染に関連して発症(特にCD4+Tリンパ球数<50/mm3
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)を定義する日和見感染症で,同集団で高いは死亡率
  • 無治療で免疫抑制が進んだHIV感染例での播種性MAC(DNTM)の発生率は20~40%
  • 抗レトロウイルス治療(ART)時代では年間発生率の中央値は1.1/1,000 HIV人・年


- 特発性CD4リンパ球減少症の64歳男性 -
CTで右S6に腫瘤+右鎖骨・左肩甲骨の骨溶解/鼠径部の皮下腫瘤は肉芽腫
(投稿者 川崎)

2025-01-24

Contained rupture 制止破裂

  • 先日、腹部CTのレポートにcontained ruptureと記載されていました.そしてその後,準緊急的にステントグラフト挿入(他院)
  • あまり聞きなれない言葉だったので調べてみました.ちなみに担当した心臓血管外科のベテラン医師も知らないと言っていました 😑

腹部大動脈瘤破裂の分類
  • 開放性破裂(open rupture)➜ 腹腔内や前壁への出血
  • 閉鎖性破裂(closed rupture)➜ 後腹膜への出血(一両日まで)
  • 制止破裂(sealed/contained rupture)➜ 後腹膜への出血(それ以降)


Chronic contained rupture
  1. 腹部大動脈瘤が存在
  2. 以前あるいは現在疼痛が認められる
  3. 全身状態が安定しヘマトクリット値が正常
  4. CT検査で後腹膜血腫の所見
  5. 病理学的に器質化血腫


Chronic Contained Rupture(慢性制止破裂)の一例

(投稿者 川崎)

2025-01-23

今週の一枚 🎯

息切れが再発した拡張型心筋症例(座位)

😐 解説
  • 安静座位で頚部に拍動は視認しない
  • 深吸気(保持)でも拍動は出現せず
  • BNP値は157 → 1,400 pg/mLに著増
  • 最終的に心不全増悪と診断して入院
💁 追加コメント
  • 内頚静脈は深部静脈であるため胸鎖乳突筋を介する皮膚面の拍動として認識されます.よって本例のように評価が難しい場合があります.一方,外頚静脈は表在静脈であるため視認は容易ですが,中心静脈圧の推定には不向きです(その理由).
  • 高度の肥満では内頚静脈の観察は困難になります(本例のBMIは約35 kg/m2).BMIがあまり大きくなくても首が太くて短い場合(いわゆる猪首)では同様に観察が困難です.一つの目安は顎下や顎のラインが不明瞭なことでしょうか(下図)

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👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-01-22

心筋クリプト Myocardial crypts 

  • 左室壁内の狭い血液充満陥入部(AI訳は心筋陰窩)のことで,当初は肥大型心筋症(HCM)で注目された.HCM連続292名と心血管疾患のない対照98名の検討では,心筋cryptsの頻度は遺伝子型陽性/表現型陰性で61%,表現型陽性で4%,対照群ではゼロであった.

  • その後の研究で,健康なボランティアを含むさまざまな症例で存在することが分かってきた.長崎大学でCT血管造影を受けた300名の検討では,心筋クリプトの頻度は9.7%で,虚血性心疾患38.3%,大動脈疾患15%,大動脈弁狭窄症9%,HCM 2.7%であった. 

  • 心筋陰窩を心筋壁の50%を超える陥入部と定義すると,コペンハーゲンの一般人口10,097名を対象とした心臓CTでの検討では,その頻度は9.1%であった.中央値4.0年の追跡期間中,心筋クリプトは主要な心血管イベントと関係しなかった(ハザード比1.00 [95% 信頼区間:0.72~1.40,P = 0.98]) .また心筋クリプトの位置や形状,透度もイベントとは関連せず.
- 肥大型心筋症で認めるさまざまな心筋クリプト -

👉 肥大型心筋症 (HCM)に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-21

👂 最近の耳学問

  • アレルゲンは皮膚から吸収されると感作されるが(経皮感作),口から吸収されると寛容になることが多い(経口免疫寛容
  • 茶のしずく石鹸:石鹸に含まれる加水分解小麦が皮膚から吸収され小麦アレルギーを発症(2005~2010年に重傷者>50名)
  • Electrical stormの定義は24時間以内に3回以上の心室細動(VF)あるいは血行動態的に不安定な心室頻拍(VT)の出現
  • 1 kmの歩行で1 kgあたり約1 kcalの消費.例:体重が60 kgなら脂肪1 kg減(7200 kcal)には120 kmも歩く必要がある
  • 心室中隔欠損(VSD)は重症なら雑音量は小さい(大欠損で肺血管抵抗が高くなると雑音は逆流性から駆出性で短くなる)
  • 接遇の基本はNHK:N=ニコニコ,H=ハキハキ,K=キビキビ(接客の基本動作でオフィスの常識になっているようです)
  • 大阪府医師会のイメージキャラクター「らっふぃー」誕生.関西弁を話すラッコで鼻は(大阪)イチョウで右手に石(医師)貝
  • AHCL(Advanced Hybrid Closed Loop)はインスリンポンプと連動した持続血糖モニターを用いて血糖管理するテクノロジー

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-20

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-01-19

Lake Louise Criteria レイク・ルイーズ基準

  • 心筋炎のMRIによる診断基準で2009年に発表(JACC 2009;53:1475–87) された.メタアナリシスで診断精度は83%(感度80%,特異度87%)
  • ただし進行すると信号強度が均一になり検出困難になるため2018年に更新(JACC 2018;72:3158-76).その感度は88%,特異度は96%程度
  • 非虚血性心筋障害のT1(マッピング,ECV,ガドリニウム遅延造影 )と心筋浮腫のT2(マッピング,強調画像の局所)が各一つ以上異常

- 2018年改訂版のレイク・ルイーズ基準のイメージ -

😍 Lake Louise(ルイーズ湖)
  • カナダのアルバータ州のバンフ国立公園内にある湖(と周辺の村)の名前だそうです.とても美しい場所でため息が出ます.きっとここで集まって決めたのでしょうね 💫 グーグルのイメージ検索 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-18

アルファガル症候群 α-Gal syndrome

  • 概略 galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に対する特異的IgE抗体による反応
  • 感作 マダニ咬傷を介して糖鎖α-Galに経皮的な感作(α-Gal特異的IgEの産生)
  • 発症 α-Galを含む獣肉(哺乳類)で遅発性アレルギー(別名は肉アレルギー)
  • 追加 カレイの魚卵や抗がん剤のセツキシマブでも発症(鶏肉は問題ない)
  • 対策 マダニ回避(ペットや家畜を避ける)で経時的に改善することが多い


α-Gal症候群のイメージ

🍖 おまけ
  • α-Gal症候群は血液型がB型やAB型の人では少ないようです.同血液型ではガラクトース抗原が存在するため,α-Galに対するアレルギー反応が起きにくいようです.
  • 同様の理由で,表面にα-Galを持つマラリアや結核の発生率は流行地のB型頻度と正の相関関係があり,α-Galを持たない病原体のデング熱では無関係だそうです.


💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-17

薬剤性好中球減少症 Drug-induced neutropenia

  • 末梢血の好中球数が500/μl以下と定義することが多く,無顆粒球症や顆粒球減少症,agranulocytosisなども概ね類似した意味で用いられる.
  • 発生頻度に関して1.1~5.0例/100万人/年という報告がある.早期に認められる症状として発熱は必発で,その他に悪寒や咽頭痛などが挙げられる. 
  • 機序には免疫学的(アレルギー性:抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル他)と骨髄造血細胞に対する毒性(中毒性:クロルプロマジン塩酸塩やβラクタム系抗菌薬など)がある.
  • アレルギー性なら過去にその医薬品に感作されていれば1時間~1日以内に発現し,感作されていなければ抗体が産生されるまでに1週間~10日を要する.中毒性なら発症までに数週間を要する.
  • 患者側のリスク因子:高齢,女性,腎機能低下,自己免疫疾患の合併などの場合に発症頻度が高い.明確ではないが遺伝的素因(HLA型、薬物代謝酵素の遺伝子多型)なども考えられている.
  • 発現投与量は医薬品により異なる.例えば抗甲状腺薬では用量非依存性で,サルファ剤(サラゾスルファピリジン)では用量依存性との報告がある.一方,同じ医薬品でも報告により用量依存性、非依存性の相反する報告もみられる.
  • 添付文書で血液検査が求められている薬剤には,チクロピジン塩酸塩やチアマゾール(開始2月は2週に1回),サラゾスルファピリジン(開始3月は2週間に1回,次の3月は4週間に1回,その後は3月ごと),クロザピン(投与初期に発現する例が多いので投与開始後18週間は入院管理下)がある.
  • 無顆粒球症の原因となり得る医薬品は多数にのぼるが,抗甲状腺薬,チクロピジン塩酸塩,サラゾスルファピリジン,クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)など頻度が高い医薬品以外にも,H2ブロッカー,NSAIDs,抗不整脈薬,ACE阻害薬などが重要である.


💣 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-01-16

今週の一枚 🎯

発熱が続く症例の眼瞼結膜

👀 点状出血(Petechiae)
  • 右の眼瞼結膜に複数の点状出血を認める
  • 収縮期雑音はあるが大動脈弁位は人工弁
  • 他の末梢サイン(オスラー結節など)無
  • 経胸壁心エコーで大動脈弁周囲は不鮮明
  • 経食道心エコーで大動脈弁の疣腫を確認
  • 血液培養4ボトルから全てE. faecalis検出
  • 最終診断はもちろん感染性心内膜炎(IE)

😐 IEあれこれ
  • 感染性心内膜炎で血管塞栓に関連した無痛性の点状出血が生じることは,カナダ生まれの内科医であるSir William Osler(1849–1919)が19世紀に既に記載している(Br Med J 1885;1:522-26).
  • その出現頻度は罹患部位や病期によって異なると思われるが,0.6~30%と報告されている(月間心エコー 2025年1月号).体のあらゆる部分に出現するが,眼瞼結膜や口腔粘膜が検出しやすい.
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に改定された(Clin Infect Dis 2023;77:518-26).このDuke-ISCVIDクライテリアでも末梢サインは臨床診断の小基準として明記されている.
  • ちなみに欧州で行われた感染性心内膜炎3011例の前向きコホート研究(Eur Heart J 2019;40:3222-32)では,22.3%に発熱がなく,34.9%では心雑音を欠いていたことにも注目しておきたい.

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👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-01-15

オプソニン効果 Opsonin effect

看護師国家試験 第98回(2009年) 午前17問

Q:オプソニン効果を生じるのはどれか
  1. 好中球
  2. 好塩基球
  3. Tリンパ球
  4. Bリンパ球

🍴 オプソニン効果
  • 免疫細胞の食作用促進効果のこと.例えば,体内に侵入した細菌に抗体や補体が付着すると白血球による食作用が促進される.よって上記の答えは「1. 好中球」となる.オプソニン(opsonin)の語源はギリシャ語のopsonで,「調理する」という意味.
  • CRP(C反応性蛋白)はオプソニン効果を有しているため,生体防御機構では免疫の重要な担い手になる.逆にIL-6は肝細胞でのCRP等の急性期蛋白合成に必須の作用をもつため,IL-6阻害剤の投与中はCRPが正常化し,そのオプソニン効果も発現しない.

💫 国家試験に関連した過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-14

医療用炭酸ガス Medical carbon dioxide

🙈 効能または効果添付文章
  • 酸素吸入時の呼吸中枢の刺激。 
  • 高山病における呼吸困難,麻酔時における覚せいと手術後の肺拡張不全の予防。
  • 一酸化炭素,モルヒネ,シアン化合物などの中毒時における呼吸中枢の興奮性低下。
  • 炭酸水の水浴による脈拍及び拡張期血圧の減少,静脈血の心臓還流の改善と拍出量の増加,皮膚の充血,呼吸量の増加。
  • ドライアイスでの狼瘡,色素斑などの皮膚疾患の腐食剤としての使用。
  • 腹腔鏡下外科手術に必要な視野及び術野の確保。
  • X線コンピュータ断層撮影に必要な腸管の拡張。

🙉 血管内投与
  • 歴史 放射線科の領域では古くは1920年代から陰性造影剤として使用
  • 対象 腎不全患者や造影剤へのアレルギー様反応のリスクが高い症例
  • 病変 腹部動脈,シャントや末梢動脈,腹部大動脈(ステント挿入)
  • 注意 ボンベとつなげたまま炭酸ガスのカテーテル内への注入は禁止
  • 商品 海外は血管撮影用の送気装置が発売されている(日本は未採用)
  • 指針 腎透析用のシャントPTAのガイドラインに記載されているのみ


🙊 呟き
  • 炭酸ガス造影の安全性はかなり高いことが知られています.例えば末梢動脈疾患に対する血管内治療では,連続36例計51病変では成功率100%で合併症はありません(Circ J 2011;75:179-84).平均クレアチニン濃度も,治療前2.1±1.4,治療後2.0±1.4,3ヵ月後2.1±1.6 mg/dlで変化はありませんでした.ただし医療用炭酸ガスが血管内投与の適応を取得するか,学会ガイドラインに明記されるまでは,各施設毎に倫理委員会の承認を受ける必要があると思われます.

(投稿者 川崎)

2025-01-13

😊 素敵な紹介状

息切れが増悪した慢性心不全例(座位)

💗 慢性心不全の増悪
  • 座位で通常呼吸時には頚部に拍動なし
  • よく見ると吸気時に鎖骨上窩に拍動?
  • 深吸気で拍動が安定して出現(矢印)
  • 拍動は陥凹 → 静脈性 → CVPは上昇 

 💓 臨床現場
  • 本例はかかりつけ医からの紹介状がとても素敵であった.「頚静脈の拍動が見えるのでSGLT2阻害薬を追加しました」と記載してあった.
  • 当院受診は薬剤追加の1週間後で,その間に患者さんも自覚症状がずいぶん楽になった様子.当時は通常呼吸時に拍動が明瞭だったと予想.
  • もっとも吸気負荷後にまだ拍動が観察できるので追加加療は必要.自験データでは安静時陽性と吸気後陽性の1年後事故率は同程度(論文

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(投稿者 川崎)

2025-01-12

プロテインC・S欠損症のタイプ

🐤 呟き
  • 血栓症が疑われたら血液素因の有無を判断するため,治療開始前にプロテインCやSの活性や抗原量を調べる採血を行います(結果が治療期間に影響).
  • 個人的にはその血栓症の有無のみを診断していました.しかし先日,プロテインC欠乏症例で,そのタイプ分類まで言及している発表を目にしました. 

🐣 復習
  • プロテインS (PS),プロテインC(PC),アンチトロンビン(AT)欠損症は日本人の3大先天性血栓性素因
  • いずれも常染色体優性遺伝病で日本人のヘテロ変異保有者はPS 1.8%,PC 0.16%,AT 0.18%と推定されている
  • ヘテロ変異保有者は深部静脈血栓症を,ホモおよび複合へテロ接合の重症型は新生児に電撃性紫斑病を発症
  • ただしPCは肝疾患や重症感染症,DICなどの疾患やワルファリンをはじめとした薬剤等の影響で後天的に低下
  • 先天性PC欠損症の血栓症リスクは健常人の7.3倍で約30%に妊娠・出産,経口避妊薬,外傷,手術等の誘因


- プロテインC欠損症とS欠損症の各タイプ -

(投稿者 川崎)

2025-01-11

EBNAイービーエヌエー

  • EBV特異抗体のひとつで核内抗原に対する抗体(EBV nuclear antigenの略)
  • 他は外殻抗原VCA(virus capsid antigen )抗体とEA(early antigen)抗体
  • EBNA抗体は初感染の回復期から陽性(VCA-IgG抗体とEBNA抗体は生涯持続)
  • 初感染ではVCAに対するIgM抗体がまず増加する(EA抗体の変動もほぼ同じ)
  • VCA-IgA抗体は上咽頭癌に特徴的な抗体で早期発見・治療効果・再発の指標

参考)BML、他

- EBウイルス関連疾患と抗体検査との関連 -

💁 EBウイルスに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-10

頸部ジストニア Cervical dystonia

  • ジストニアとは中枢性の持続的な筋緊張を特徴とする運動異常症のひとつ
  • 頸部ジストニアは首の筋肉に生じた局所性ジストニアで,別名は痙性斜頸
  • 薬剤(特に向精神薬の開始や減量・中止),脳疾患,外傷,習慣他が影響
  • 前屈・後屈・側屈・回旋・前方偏倚・後方偏倚・側方偏倚・側弯・肩挙上
  • 原因治療+ボツリヌス治療(第一選択),内服,手術,鍼,理学療法など

薬剤性の頸部ジストニアを呈した1例

💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-09

今週の一枚 🎯

腎機能が悪化した症例(Cr 1.4 → 4.5 mg/dl)


(投稿者 川崎)

2025-01-08

MCG マルチファンクションカーディオグラム

  • MultiFunction CardioGram の略で多機能心電図心疾患解析システムのこと
  • 通常の12誘導心電図を4万人のマッチングして心臓の状態をAI解析する技術
  • 心電図を周波数帯に細分解し166の微細なポイントの分布の違いを比較評価
  • アメリカのFDA認可の診断技術であるが本邦では現時点で保険非適用である
  • 検査時間は約10分(ネットで速やかに判定)で健診やクリニックで一部活用


- 70%以上の冠動脈狭窄例でMCGとストレス心筋灌流の比較 -

👉 AI(人工知能)に関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-01-07

ビショップスコア Bishop score

  • 概略 子宮頚部の成熟度を評価するスコア(初産婦にのみ適応/経産婦には不可)
  • 提唱 米国の産婦人科医 Bishop E(1913-1995)(Obstet Gynecol 1964;24:266-8
  • 項目 頸管開大度・頸管展退度・児頭下降度・頸管硬度・子宮口位置の5つの指標
  • 計算 合計点を算出(下表:0~4点は不成熟,5~9点はやや成熟、9~13点は成熟)
  • 解釈 9点以上なら24時間以内に90%分娩,8点以上なら70~80%が2日内に児娩出

ビショップスコア

😁 おまけ
  • 上表の各指標の順番を少し変更してみると面白い. 頸管展退度(back)➜ 子宮口位置(station)➜ 頸管硬度(hard)➜ 頸管開大度(open)➜ 児頭下降度(position),つまりbshopで開発の名前に類似する.
  • Bishop先生が発表時にそこまで考えたうえで命名したかは不明(オリジナル論文が無料公開されていないため...どなかたご存じ方はコメント欄へ).でも,もしそうならこれはすごいこと(半世紀以上も活用されている)

(投稿者 川崎)

2025-01-06

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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(投稿者 川崎)

2025-01-05

冠攣縮とノルアドレナリン

  • つい先日,敗血性ショックに一過性ST上昇(下壁誘導)が合併し治療に難渋した症例を経験しました.緊急冠動脈造影で右冠動脈に高度狭窄(初回造影)を認めましたが,再造影時には狭窄は概ね消失していました.
  • しかしICU帰室後もST上昇を繰り返しました.大量補液と抗菌薬に加えて,ノルアドレナリンやステロイド,鎮静薬を併用し,2~3日で嵐は過ぎ去りました.そこで冠攣縮とノルアドレナリンに関して調べてみました.

📗 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインのノルアドレナリン記載(以下の2点のみ)
  • 冠攣縮発作は冠動脈平滑筋受容体に作動するさまざまな刺激によって誘発されるが,自律神経機能の異常による刺激もそれに含まれる.ノルアドレナリンなどの血管収縮性神経伝達物質の遊離という直接作用のほか,交感神経系を介する血小板活性化によって,強力な冠動脈収縮作用を有するセロトニンの遊離も生じる.(7ページ)
  • 冠攣縮が遷延し,血圧低下や心原性ショック,重症不整脈,心停止などの危険な状態が起こりうることである.このような場合,硝酸薬(ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビド)の冠動脈内注入により,すみやかに冠攣縮を解除する必要がある.また,血圧低下に対しては,昇圧薬(ノルアドレナリン)の投与も必要となる.(22ページ)

📘 冠攣縮誘発アセチルコリン負荷試験時にショックを呈した4例J Cardiol 2007;49:41–7
  • 冠攣縮解除目的で硝酸薬の投与をショック時に行うとかえって血行動態悪化に拍車をかける可能性があり血圧上昇が先決と思われる.
  • 冠動脈の拡張作用と血圧上昇作用を有するノルアドレナリンの大動脈内投与が必須と考える
  • その投与方法としてはノルアドレナリン1 mlを生理食塩水100 mlに溶解し,1 mlが10 μgの濃度に調整しショック時に大動脈内に3-5 ml注入することが推奨される.
  • 血圧上昇を認めた後に,硝酸薬を少量から冠動脈内投与するほうが安全と思われる.

📙 ノルエピネフリンの冠動脈径に対する影響(ChatGPTの回答:英語の日本語訳) 
  • ノルエピネフリン (NE) はノルアドレナリンとしても知られ、さまざまなアドレナリン受容体との相互作用を通じて冠動脈の直径に影響を与え、受容体のサブタイプと血管の状況に応じて血管拡張または血管収縮を引き起こします。
  • β₂アドレナリン受容体を介した血管拡張:単離されたヒト冠状動脈および小動脈において、NEは主に平滑筋にあるβ₂アドレナリン受容体の活性化を通じて血管拡張を引き起こします。この効果は内皮および一酸化窒素合成とは無関係です。研究により、この拡張はβ₂受容体遮断薬によって阻害できることが示されており、この反応を媒介するβ₂アドレナリン受容体が重要な役割を果たしていることを示しています。(Circulation 2002;106:550-5
  • α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮:逆に、NEはα₂アドレナリン受容体を刺激することで冠動脈の血管収縮を引き起こす可能性があります。血管造影検査で冠動脈が正常な人では、α₂アドレナリン受容体の選択的活性化により冠動脈の血流と動脈径の両方が減少することが観察されています。これは、α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮が冠動脈の血管緊張の調節に重要な役割を果たしていることを示唆しています。(Circulation 1992;86:1116-24

(投稿者 川崎)

2025-01-04

逆ゴットロン徴候 Inverse Gottron's sign

  • 手指関節屈側の鉄棒豆用皮疹で皮膚筋炎の特徴的な身体所見の一つ
  • 通常のゴットロン徴候は手指・四肢関節の背面に認める角化性紅斑
  • 他に機械工の手(Mechanic's hands) や徒歩旅行の足(hiker's feet)

図1はゴットロン徴候・図2は逆ゴットロン徴候

機械工の手・徒歩旅行の足

(投稿者 川崎)

2025-01-03

OGCSオージーシーエス:夜間・休日における妊婦搬送の手引き

  • 先日,中高年の女性が腹痛のため深夜のERを受診しました.そして(本人も含めて誰もが予期しなかった)切迫早産(破水後)であることが判明しました.たまたま看護師さんの中に助産師さんがいたため比較的スムースにことが運びました.
  • 産婦人科医が常駐しない病院も少なくありません(当院も休診中).そんな時に役立つのが産婦人科診療相互援助システム(Obstetrical Gynecological Co-operative System: OGCS)です.厚生労働省が提供する資料をここにもアップしておきます.


💁 妊娠に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-01-01

ライム病のブルズアイ(牛の眼)

  • ライム病(Lyme Disease)の初期症状として皮膚に出現する古典的な遊走性紅斑の一形態
  • Ring-within-a-ring patternやtarget patternとも呼ばれる(頻度は低い,35例中2例=6%)
  • ライム病の起因菌はスピロヘータの一種 Borrelia でマダニ類が媒介する人獣共通感染症
  • 臨床症状と血清学的診断基準から総合的に診断(培養は困難で患者からの2次感染はない)
  • 遊走性紅斑例にはドキシサイクリン,神経症状例にはセフトリアキソンが第一選択である
  • 名前の由来は米国コネチカット州ライム地方で初めて確認(Arthritis Rheum 1977;20:7-17

古典的なbull's eye所見(下図のCとD)

(投稿者 川崎)