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2025-01-26

星状神経節ブロック (SGB) vs 冠攣縮 

⭐ Stellate Ganglion Block: SGB
  • 星状神経節は節後線維を心臓に投射し冠血流調節に大きく関与
  • SGBは交感神経の過緊張を抑制するため連日SGBが悪循環を断つ
  • SGBは血小板凝集抑制効果もあり冠攣縮の予防に有効な可能性
  • 冠攣縮性狭心症に対してSGBが有効であった報告はほぼ左側SGB
  • 完全内臓逆位を伴っていた症例では右側のSGBが有効の報告あり
  • エルゴメトリンによる冠攣縮の誘発前に左SGBで発作を抑制した
  • ただし冠攣縮誘発後にSGBを施行しても攣縮寛解作用はなかった


星状神経節ブロックが著効した難治性冠攣縮の41歳男性

📙 ガイドラインの記載(P50と図18)
  • 難治性・重症冠攣縮性狭心症に対して,星状神経節ブロック ・ 胸部交感神経節切除術を考慮してもよい(いずれもわが国では保険適用外).推奨クラス IIb,エビデンスレベル C


👉 冠攣縮に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-05

冠攣縮とノルアドレナリン

  • つい先日,敗血性ショックに一過性ST上昇(下壁誘導)が合併し治療に難渋した症例を経験しました.緊急冠動脈造影で右冠動脈に高度狭窄(初回造影)を認めましたが,再造影時には狭窄は概ね消失していました.
  • しかしICU帰室後もST上昇を繰り返しました.大量補液と抗菌薬に加えて,ノルアドレナリンやステロイド,鎮静薬を併用し,2~3日で嵐は過ぎ去りました.そこで冠攣縮とノルアドレナリンに関して調べてみました.

📗 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインのノルアドレナリン記載(以下の2点のみ)
  • 冠攣縮発作は冠動脈平滑筋受容体に作動するさまざまな刺激によって誘発されるが,自律神経機能の異常による刺激もそれに含まれる.ノルアドレナリンなどの血管収縮性神経伝達物質の遊離という直接作用のほか,交感神経系を介する血小板活性化によって,強力な冠動脈収縮作用を有するセロトニンの遊離も生じる.(7ページ)
  • 冠攣縮が遷延し,血圧低下や心原性ショック,重症不整脈,心停止などの危険な状態が起こりうることである.このような場合,硝酸薬(ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビド)の冠動脈内注入により,すみやかに冠攣縮を解除する必要がある.また,血圧低下に対しては,昇圧薬(ノルアドレナリン)の投与も必要となる.(22ページ)

📘 冠攣縮誘発アセチルコリン負荷試験時にショックを呈した4例J Cardiol 2007;49:41–7
  • 冠攣縮解除目的で硝酸薬の投与をショック時に行うとかえって血行動態悪化に拍車をかける可能性があり血圧上昇が先決と思われる.
  • 冠動脈の拡張作用と血圧上昇作用を有するノルアドレナリンの大動脈内投与が必須と考える
  • その投与方法としてはノルアドレナリン1 mlを生理食塩水100 mlに溶解し,1 mlが10 μgの濃度に調整しショック時に大動脈内に3-5 ml注入することが推奨される.
  • 血圧上昇を認めた後に,硝酸薬を少量から冠動脈内投与するほうが安全と思われる.

📙 ノルエピネフリンの冠動脈径に対する影響(ChatGPTの回答:英語の日本語訳) 
  • ノルエピネフリン (NE) はノルアドレナリンとしても知られ、さまざまなアドレナリン受容体との相互作用を通じて冠動脈の直径に影響を与え、受容体のサブタイプと血管の状況に応じて血管拡張または血管収縮を引き起こします。
  • β₂アドレナリン受容体を介した血管拡張:単離されたヒト冠状動脈および小動脈において、NEは主に平滑筋にあるβ₂アドレナリン受容体の活性化を通じて血管拡張を引き起こします。この効果は内皮および一酸化窒素合成とは無関係です。研究により、この拡張はβ₂受容体遮断薬によって阻害できることが示されており、この反応を媒介するβ₂アドレナリン受容体が重要な役割を果たしていることを示しています。(Circulation 2002;106:550-5
  • α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮:逆に、NEはα₂アドレナリン受容体を刺激することで冠動脈の血管収縮を引き起こす可能性があります。血管造影検査で冠動脈が正常な人では、α₂アドレナリン受容体の選択的活性化により冠動脈の血流と動脈径の両方が減少することが観察されています。これは、α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮が冠動脈の血管緊張の調節に重要な役割を果たしていることを示唆しています。(Circulation 1992;86:1116-24

(投稿者 川崎)

2024-04-17

疼痛アレコレ

😩 痛みの定義
  • “An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage,” 
  • 「実際の、あるいは潜在的な組織損傷に関連した、あるいはそれに類似した、不快な感覚的・感情的体験」(DeepL翻訳そのまま)

引用)国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain: IASP)

😖 痛みの分類
  • 内臓痛(visceral pain)➜ 管腔臓器あるいは実質臓器の虚血や炎症,攣縮,腫脹によって生じる周期的または間欠的な鈍痛や疝痛.交感神経の求心性線維(無髄性)を介し,鎮痙剤が有効で放散痛を伴うことがある.
  • 体性痛(somatic pain)➜ 体表あるいは壁側腹膜の炎症あるいは物理的・化学的刺激によって生じる持続的かつ限局性の鋭い痛み.脳脊髄神経性求心性線維(有髄性)を介し,鎮痛剤が有効で体動によって増強することが多い.
  • 関連痛 (referred pain)➜ 強い内臓痛で脊髄後根の同一脳脊髄神経側に刺激が伝わり,その神経分節に属する皮膚領域に感じる痛みのこと.関連痛のうち腹部外に感じられるものを放散痛という.発生部位が臓器毎に異なる.


💁 疼痛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-02-22

今週の一枚 🎯

心不全増悪に対して利尿薬を追加した症例
外来の再診時には手がとても冷たくなっていた

👽 解説
  • 再診時には内頸静脈の拍動は完全に消失
  • 手指や爪床に末梢チアノーゼは認めない
  • 症状に関して特に言及なし(元々乏しい)
  • 採血ではCr上昇,BUN上昇,BNP大幅低下
  • 利尿薬の過剰投与 ➜ 血管内脱水と判断
  • 利尿薬を減量して早期のフォローを予定

💣 WRF (worsening renal function)
  • 心不全例では利尿薬(特にループ系)の追加で血清クレアチニンの上昇を認めることがあります.WRF(腎機能悪化)と呼ばれ,その定義は48時間以内に絶対値で0.3mg/dL以上あるいは前値より50%以上の上昇などです.
  • 機序は交感神経/RAA系の亢進による末梢血管のトーヌス亢進や体液量減少による心拍出量の減少などが考えられます.このWRFは心腎連関の一つですが,予後悪化の指標であることが知られているため注意が必要です.
  • 本例のように座位で内頸静脈拍動が明瞭だった症例(=中心静脈圧が高度上昇)で,利尿薬の追加後に頸静脈拍動が綺麗さっぱり消失した時には要注意です.必ず手を触ってみて冷たくなっていないか確認してください.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-12-10

日本内科学会 第242回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題53 慢性心不全の治療中に急性腎障害が契機となり発症したセフェピム脳症の1例
  • 抗生剤をセフェピムに変更したが,投与開始3日後より意識障害及び左上肢有意の四肢ミオクローヌスを認めた。セファロスポリン系抗生剤の中でもセフェピムによる中枢神経障害は比較的頻度が高い。

演題62 代謝物の血中濃度の変化を経時的に追えた銀杏中毒の1例
  • 朝に約20個と昼に約50個食べた。翌0時30分頃から嘔気あり、トイレに行く際に浮動性めまいがあった。その後嘔吐3回と下痢2回程認めたが、その他腹部症状やけいれん症状はなかった。入院時の血清及び尿からメチルピリドキシン(MPN)が検出され銀杏中毒と確定診断した。

演題63 呼吸機能検査後に気胸を発症した1例
  • 定期受診時,胸部X線写真では軽度の線維化を認めていたが,気胸は指摘できなかった.呼吸機能検査を施行したところ,右胸痛及び呼吸困難を自覚し,酸素飽和度も低下した.聴診上,右肺音の減弱を認め,胸部X線写真で,右2度気胸を認めた.胸腔ドレナージを行い,当科緊急入院とした.改善に乏しく,第8病日に胸腔鏡下ブラ切除術を施行した.以降は気胸の再発はなく経過している.

演題102 茶葉の生食健康法で徐脈を来したと思われる1例
  • 24時間ホルター心電図検査では平均心拍数47/分、最小心拍数37/分で間欠的2~3度房室ブロックを認めた。茶葉の生食をやめたところ労作時息切れ症状消失した。24時間ホルター心電図でも平均心拍73/分、最小心拍数47/分で房室ブロックも消失していた。茶葉に含まれるテアニンは交感神経系を抑制し、血圧降下作用や脈拍低下作用があることが知られている。潜在的房室伝導機能低下症例においては、茶葉の生食によりテアニン摂取量が増大し、徐脈を誘発する可能性があり注意が必要と考えられた。

演題103 コロナ禍に何度も発熱で来院し最終的にPFAPA症候群が疑われた1例
  • 発熱に随伴する症状には咽頭痛と関節痛が毎回あり、ほか有熱時の口内炎、軽い腹痛、頭痛が見られることがあった。家族性地中海熱あるいはPFAPA症候群が鑑別に挙げられ、コルヒチンの内服を開始した。PFAPAは、周期性発熱(Periodic Fever)、リンパ節炎(Adenitis)、咽頭炎(Pharyngitis)、アフタ症(Aphthosis)の略語で、幼少期、通常は5歳より前に発症する。慢性の経過をたどるが、予後良好で経過とともに症状が改善する傾向にある。


👻 当院からの発表
  • 演題111 身体所見が診断の手がかりになった静脈洞型心房中隔欠損症の1例(循環器内科 大江 彩佳先生)
  • 演題169 失語・記銘力障害で発症したMOG抗体関連疾患(MOGARD)による皮質脳炎の1例(脳神経内科 竹田 みゆき先生)

😊 上記のうち1編は英語論文として現在投稿中です

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-06-18

ハーレクイン症候群 Harlequin syndrome

  • ハーレクイン症候群は,発作性に生じる片側顔面の紅潮・発汗過多
  • 頸部交感神経障害による症候性と原因不明の特発性に二分でききる
  • 症候性Harlequin症候群は神経鞘腫,肺癌・乳癌,甲状腺腫瘍など
  • オーストラリアの神経内科医の Lance らが1988年に報告した(
  • 由来は16-18 世紀のイタリアの即興喜劇に登場する道化師 harlequin


Harlequin症候群の病巣を推定するための顔面支配の交感神経経路

神経鞘腫による症候性ハーレクイン症候群

(投稿者 川崎)

2023-03-14

ホルネル症候群(徴候) Horner's syndrome

  • 病態 上位の交感神経(主にC8~Th2)の障害で出現するの一連の症状
  • 症状 縮瞳,眼瞼下垂(眼裂狭小),眼球陥凹,顔面の発汗低下・紅潮
  • 命名 スイスの眼科医 ホルネル(Klin Monatsbl Augenheilk 18698;7:193–8)
  • 原因 腫瘍や動脈瘤の圧迫,神経根引き抜き損傷Wallenberg症候群など
  • 対応 画像検査+コカイン点眼試験などで診断して原因疾患に対する治療

甲状腺髄様癌の術後に生じたホルネル症候群(右側)

💁 交感神経に関する過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2022-12-25

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

書籍(非売品)
表紙(表,背,裏)・序説・あとがき

序説

 心臓核医学検査は、循環器診療の有用な検査法の一つとして確立され、診断、病態評価、治療法の選択、予後評価に寄与している。
 1970年代からTl心筋シンチグラム(心筋血流)と心プールシンチグラフィ(心機能)を二本柱として発展してきた。後者の検査頻度は少なくなったが、1990年台からMIBG(心臓交感神経機能)、BMIPP(心筋脂肪酸代謝)、MIBI/tetrofosmin(心筋血流)が登場し、目的に応じて使い分けられている。最近、骨シンチグラム製剤であるPYPが急性心筋梗塞のみならず、トランスサイレチン型心アミロイドーシスの診断に感度・特異度が優れることが報告され、検査件数が増加している。
 京都府立医大付属病院で約20年、パナソニック健康保険組合松下記念病院で約20年の計40年あまり心臓核医学検査に携わってきた。現在なお運動負荷心筋イメージングおよびその診断に従事しているが、時折輝く画像に出会い、胸をときめかせている。
 主治医の依頼に応じ、診療に役立つイメージングをし、的確な診断をすることが最も大切であることは言うまでもない。当初は画像がnuclearならぬunclearと揶揄されたが、機器の進歩もあり、最近はnew clearと評価されているらしい。
 心臓核医学のそれぞれの核種による画像には典型例、希少例、自慢例があり、著者の性格上、後二者を中心に循環器専門医のみならず、レジデント、研修医にも見ていただきたいと思い、本書を手掛けた。ややとっつきにくく、敬遠されがちなこの分野に少しでも興味を持っていただくには、画像を見て“interesting”と感じてもらうのが一番と考えた。
 心臓核医学画像は基本的には集積低下/欠損を判定するものであるが、補助情報を加えて読影し、さらに臨床所見、心電図、心エコー、冠動脈造影などを組み合わせることにより、その画像がとても優雅に見えることがある。アイソトープを注射して撮像するという単純な検査であるが、時にとっさのひらめきによる工夫で磨かれた画像になることもある。
 提示された画像を優雅と感じるか否かは、読影者の知識・感性・努力・追及心に大きく左右される。優雅な心筋イメージングを見出す“匠”になったつもりで、画像を集めてみた。40年の歴史故、セピア色と化した画像が含まれることも味わっていただきたい。唯我独尊、自画自賛、尊大不遜との批判を覚悟の上である。
 “心臓核医学の基礎・研究および一例一例を大切にすること”をご指導していただいた足立晴彦先生(なかつかさ・足立医院)に深謝する。また、後輩でありながら常に循環器病学の最新情報を教示していただき、自由に心臓核医学検査を続けさせていただいた川﨑達也先生(パナソニック健康保険組合松下記念病院副院長)に謝意を表する。京都府立医大 旧第二内科で心臓核医学の臨床・研究をともにした鳥居幸雄、宮永一、中川博昭、窪田靖志、稲垣末次、中川達哉、片平敏雄、志賀浩治、馬本郁男、原田佳明、大槻克一、谷口洋子、伊藤一貴、寺田幸治、松本雄賀、中村智樹、米山聡嗣、木下法之、足立芳彦、阪本健三、松下記念病院でともに循環器診療を楽しんだ高橋 徹、川崎信吾、神谷匡昭、万井弘基、肌勢光芳、坂谷知彦、宮井信幸、谷口琢也、三木茂行、浅田聡、山野倫代、赤壁佳樹、階元 聡、張本邦泰、酒井千恵子、本田早潔子、松木あゆみ、川俣博史、車古大樹の諸先生に感謝したい。さらに、常に読影に最適な心筋イメージングを作成していただいた松下記念病院RI検査室の放射線技師、鹿園貴士、廣谷有立、高田春彦、中井恵莉、出口紘平の諸兄に感謝する。最後に本書の出版にあたり、終始多大なるご協力をいただいた株式会社朝陽堂会長高橋東作氏(幼稚園から高校までの同級生)に謝意を表したい。

あとがき

 最後まで見ていただいたことに感謝する。
 一枚でも二枚でもinterestingと感じていただく画像があったなら幸いである。
 書き終えると、冠攣縮、肥大型心筋症、完全左脚ブロック、PESP、心房がよく登場し、通常の心臓核医学の成書とはかけ離れる内容であることを再認識した。心臓核医学の分野もデータ・診断の標準化がすすんでいると耳にする。標準化は重要なことであるが、心臓核医学を斜めから見て楽しむことも忘れないでいただきたい。
 本書は京都府立医大旧第二内科→循環器内科の心臓核医学部門の歴史を物語る一冊としての画像集になったとも言える。心臓核医学は循環器診療の一つの検査法にすぎないが、その一枚の画像を大切にする心を持ち続けることが、診療の質を高めるだけでなく、新たな発見を世界に発信することにつながると信じている。医者として、循環器内科医として、40年以上の長きにわたり心臓核医学に従事できたことを幸せに思っている。

※「輝きを放つ一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 杉原)

2022-09-25

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

褐色細胞腫
褐色細胞腫の手術前の腹部背面像(投与24時間後)と手術前後の心臓I-123-MIBGシンチグラム(15分後と4時間後像)
松本雄賀、他 : 核医学 32: 1023-1028 ; 1995



(投稿者 杉原)

2022-09-18

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

心尖部肥大型心筋症
心尖部肥大型心筋症の運動負荷Tl心筋SPECT(左)およびMIBGの初期像、後期像、Bull's eye表示(右)



(投稿者 杉原)

2022-08-21

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

心尖部肥大型心筋症
心尖部肥大型心筋症のTlとBMIPPのdual SPECT(上段)と2年後のBMIPPイメージング



(投稿者 杉原)

2022-03-29

腰部交感神経ブロック

👶 2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン 中の記載

下肢閉塞性動脈硬化症(lower extremity artery disease: LEAD)
  • 腰部交感神経節ブロックは,交感神経の過緊張を低下させることにより,疼痛緩和と側副血行路の血管拡張からの下肢血流増加を目的とする.
  • CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)を対象とした研究で疼痛緩和の報告はあるが,切断のリスクを軽減する明確エビデンスはない.

バージャー病(Buerger disease)
  • 血行再建術の適応のない重度の虚血肢には,内視鏡的交感神経焼灼術などの交感神経遮断手術も考慮してよい.
  • ただし足関節血圧が60 mmHg未満やABIが0.3未満では効果は期待しづらい.

レイノー現象(Raynaud syndrome)
  • 壊死に陥った場合には,内科的治療では疼痛コントロールも困難であることが多く,交感神経節ブロックないし交感神経節切除を行うことになるが長期にわたる効果にはエビデ ンスはない
  • 膠原病を背景疾患とする場合には,原疾患が活動性の場合には原疾患に対する治療を行いつつ上記内科的治療が無効な場合には交感神経節切除を考慮する.

肢端紅痛症(erythromelalgia)
  • 有効な治療法は少なく,まずアスピリンに加え血管拡張作用のある抗血小板薬を使用する.無効な場合には交感神経節切除を考慮するが,その効果に定まった評価はない.

複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome: CRPS)
  • 薬物療法が有効でない場合には,交感神経ブロックや外科的な交換神経節切除などを考慮する

💁 下肢動脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-10-20

頸性めまい Cervical vertigo

  • 定義 頸部に原因があり,頸の回転・伸展により誘発されるめまいあるいは平衡感覚の異常
  • 原因 頸部交感神経・頸部固有受容器の障害,椎骨動脈の閉塞,片頭痛との関連などが提唱
  • 初報 Barreによる仏語(Paris Revue Neurologique 1926;45:1246-8)(近年,英語翻訳版
  • 診断 未だ確立された基準がない(頸部痛は必須+他疾患の可能性をすべて除外:下表参照)
  • 頻度 原因別(筋弛緩薬や徒手的理学療法,経皮的レーザー椎間板減圧術や外科的血管減圧)



(投稿者 川崎)

2021-07-24

肢端紅痛症 Erythromelalgia

  • 肢末端の灼熱感,潮紅,皮膚温の上昇を3主徴とする稀な病態で,原発性と続発性(骨髄増殖性疾患や糖尿病,SLE,多発性硬化症など)に分類される
  • 原因は不明(血管内腔の閉鎖によるAVシャントやセロトニン・ヒスタミン・プロスタグランディンなどの放出過多,交感神経の機能障害説などが提唱)
  • 米国の医師・科学者である Silas Weir Mitchell (1829–1914) が初めて報告したためMitchell's diseaseと呼ばれることもある(Am J Med Sci 1878;76:2-36
  • 治療はアスピリンや神経プロック,抗セロトニン薬やβ遮断薬,血管拡張薬,セロトニン再取り込み阻害薬である塩酸クロミプラミン(アナフラニール®)など 

図1 ➜ 両下腿から足背部にびまん性の発赤・腫脹・熱感+大腿部にはリベド様皮斑
図3 ➜ 足背部の亀裂と小潰瘍+頻回にわたる冷水浸漬で皮膚はびまん性に白く浸軟

🉐 関連投稿(下肢の疼痛編)
(投稿者 川﨑)

2021-07-06

悪心・嘔吐の原因:NAVSEA

  1. Neuro CNS ➜ 頭蓋内病変、脳血管障害
  2. Abdominal ➜ 消化管および消化器腹膜
  3. Vestibular ➜ 前庭神経刺激
  4. Somatopsychiatric/Sympathetic ➜ 心身症・精神疾患・交感神経系の亢進
  5. Electrolyte/endocrinologic disorder ➜ 電解質異常・内分泌疾患
  6. Addiction ➜ 薬物中毒

😶 呟き
  • この略語は一体なんなんだと思いましたが,nausea(嘔気)をモジったものと教えてもらってちょっと納得しました(マッスル先生ありがとう)
  • ただし英語でNAVSEAと言えばThe Naval Sea Systems Command (海軍艦艇システムコマンド)のことのようですが...公式Twitterがなかなかシブい

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-05-12

食欲抑制薬 サノレックス(マジンドール®)

日本で唯一保険収載されている食欲抑制薬で,保険適応となるのは「肥満度+70%以上」または「BMI 35以上」の患者で投与の限度は3週間以内.交感神経を刺激する作用があるため禁忌も多くて使うのは悩ましい限りです.製造元である富士フィルムの説明ページ ➜ コチラ

🏃 おまけ 
  • 調べていくうちに「アンフェタミンの類似構造だ」という記述がありました.スタンフォードで睡眠研究所にいたこともあって「となると、ナルコレプシーの治療にも使えるのでは?」と思って文献を探してみると、古くからナルコの治療薬として注目されていたようです().そこで「副作用」として食欲減退が書かれており、食欲抑制に効果があることがうかがえます().ナルコレプシーに限らず、薬物耐性のある過眠症にも効果がある文献もありました.
  • 話を元に戻しますが,日本でも古くから痩せるための薬としては考えられていたみたいです().ここでconclusionとして書かれているのは,「別の病気に繋がるような異常な肥満の是正」だけでなく「体重減少のモチベーション維持」や「超低カロリー食を行ったあとの体重の維持」というように,マジンドール®のみに頼り切った治療では病的肥満の是正は望めないのだろう,と考えられます.

💁 肥満に関する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 土橋)

2021-05-05

酸素飽和度100%

カンファレンス中の一コマ 💨
  • 研修医 「サチュレーションは100%で正常でした」
  • 指導医 「室内気で酸素飽和度100%は正常なの?」
  • 研修医 「100%…正常…異常??」
  • 指導医 「呼吸数はどうだったん?」

  • 健常者のSpO2は96-99%とされています。しかしSpO2=100%でアラームは鳴りません。SpO2=100%は安全域か否かは原因によると思います。
  • 室内気でSpO2=100%になる原因として多いのは過換気状態です。過換気状態になる原因として代表的な病態は過換気症候群です。
  • 一方、過換気状態には過換気症候群以外にもさまざまな病態があります。体表的な病態と具体的な疾患を下の表にまとめます。

参考)内科救急見逃し症例カンファレンスM&Mでエラーを防ぐ(医学書院 2012;53-8)

病態 想定される疾患
疼痛、発熱や交感神経亢進による呼吸数増加 大動脈解離、急性心筋梗塞、急性腹症、感染症、骨折、甲状腺機能亢進症、薬物中毒(アンフェタミン中毒など)、セロトニン症候群など
呼吸中枢障害による呼吸数増加 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血)
低酸素に対する代償で呼吸数増加 急性呼吸不全(気管支喘息、肺炎など)、急性心不全、肺塞栓症など
代謝アシドーシスに対する代償性過換気 糖尿病ケトアシドーシス敗血症など
呼吸筋麻痺による換気量低下に対する代償で呼吸数増加 ギランバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症など

🎻 振り返り
  • 今回、救急外来で経験した症例は、急性虫垂炎の痛みにより過換気状態になりSpO2=100%(室内気)になっていたと考えられました。

(投稿者 中西)

2020-12-16

ワイテンス錠(グアナベンズ)

【効能効果】

  本態性高血圧症

【薬効薬理】

  選択的α2受容体刺激薬。

  中枢のα2受容体を刺激することによって、末梢交感神経の緊張を低下させて降圧作用を示す。

【特性】

  • 軽症ないし中等症高血圧症において、単独投与でも、また、サイアザイド系利尿薬との併用投与でも有効性、安全性並びに有用性を示した。
  • 血圧日内変動幅、血圧日内較差に対し、共に影響を与えず、日内変動のパターンにも影響を及ぼさなかった。
  • 主な副作用は、口渇等の消化器症状(2.9)、眠気・めまい等の精神神経系症状(2.8)、発疹等の過敏症状(0.2)である。

(投稿者 小森

2020-10-20

パンコースト腫瘍 Pancoast tumor

  • 肺尖部に生じた腫瘍(特徴的な症状を伴う場合はパンコースト症候群と呼ぶ)
  • 由来は米国放射線科医 Pancoast HK による症例報告(JAMA 1927:83:1407-11
  • パンコースト症候群の原因の多くは原発性肺癌で,肺癌全体の1~2%を占める
  • 圧倒的に男性・喫煙者に多く,肺癌なら腺癌,大細胞癌の順で過半数がIV期
  • 同症候群の症状は前胸部,背部痛,肩痛,上肢のしびれ,筋萎縮など(高率)
  • 同側ホルネル症候群(縮瞳・眼瞼下垂・眼球陥凹)と嗄声が約1/4に出現する


🍗 おまけ
  • パンコースト腫瘍は腕神経叢や下頸部交感神経節に浸潤するため,多彩な整形外科的症状を呈します.よって初めに受診する科は内科ではなくで整形外科が多いため注意が必要です.
  • ホルネル症候群の発症機序は交感神経遠心路の障害で,ワレンベルグ症候群や外傷,リンパ節腫大・動脈瘤・甲状腺腫大による圧迫などでも生じます.症状は上記の3徴以外に顔面の発汗低下や紅潮などがあります.

🍖「肺癌」に関する過去の投稿は コチラ(ページトップにある検索窓からも調べられます)

(投稿者 川崎)

2020-09-28

似て非なり? アトロピン vs ブスコパン

👻 復習
  1. 副交感神経系の伝達物質はアセチルコリンで,各臓器にあるアセチルコリン受容体の別名がムスカリン受容体
  2. アセチルコリンは各臓器に指令を伝達後,アセチルコリンエステラーゼによって速やかに分解され役目を終える
  3. アトロピン®️やブスコパン®️はいずれもムスカリン受容体を競合的に阻害することで副交感神経の作用を抑制する
🚚 アトロピン硫酸塩水和物(アトロピン®️)の効能(添付文章
  • 胃・十二指腸潰瘍における分泌並びに運動亢進,胃腸の痙攣性疼痛,痙攣性便秘,胆管・尿管の疝痛,有機燐系殺虫剤・副交感神経興奮剤の中毒,迷走神経性徐脈及び迷走神経性房室伝導障害,麻酔前投薬,その他の徐脈及び房室伝導障害,ECTの前投与(注:ECT=電気痙攣療法) 
🚛 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®)の効能(添付文章
  1. 下記疾患における痙攣並びに運動機能亢進
    • 胃・十二指腸潰瘍、食道痙攣、幽門痙攣、胃炎、腸炎、腸疝痛、痙攣性便秘、機能性下痢、胆のう・胆管炎、胆石症、胆道ジスキネジー、胃・胆のう切除後の後遺症、尿路結石症、膀胱炎、器具挿入による尿道・膀胱痙攣、月経困難症、分娩時の子宮下部痙攣
  2. 消化管のX線及び内視鏡検査の前処置
👼 つぶやき
  • アトロピンの作用は平滑筋・心筋・外分泌腺のムスカリン受容体に対し特に選択性が高いようです().これらのアトロピンの臨床上の特性を改善するためにブスコパン®が開発されました().ブスコパンは中枢性副作用がなく,腹部中空臓器の壁内神経節にも作用し神経刺激伝達を抑制するようです.
  • 実際の臨床現場では循環器内科医はアトロピン,消化器内科医はブスコパンを使い慣れています.ただし専門が何科であれ医師人生で1回は出会う(かもしれない)有機リン中毒の症例に対するアトロピン大量投与の知識はいつも頭の片隅に!
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(投稿者 川崎)