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2021-01-31

オーシェフ OSHEF

  • OSHEF=Osaka Stops HEart Failure(大阪心不全地域医療連携の会)
  • 北野病院大阪市立総合医療センターで始まった心不全の病診連携
  • 学閥を超え大阪府下に広がっている(当院も北河内代表施設の一つ)
  • 診療情報・患者情報・評価方法を統一した”ツール”を用いて標準化
  • 患者さん自身が体重や症状などを数値化して緊急受診の要否を判定

OSHEFのホームページに記載された理念 💨
  • 大阪府下における心不全治療基幹病院、これら基幹病院と連携する医療機関、訪問看護ステーション、調剤薬局、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの多施設・多職種が連携する組織体制を構築することにより、増大する心不全医療のニーズや地域医療構想の中で需要の受け皿としての役割を果たすための体制を整備し、患者さんのお住まいのエリアにおける心不全医療の発展に寄与することを目的としています。

OSHEFで1年後の予後改善(主に心不全入院を減少)が最近示された

(投稿者 川崎)

2021-01-30

胸痛クイズ

心原性胸痛の可能性が低いジェスチャーは?
(左からパームサイン,レバインサイン,ポインティングサイン,アームサイン)



(投稿者 大神/川崎)

2021-01-29

漢字テスト:"矩形"の読み方

  • 矩形は全ての角が直角である四角形(=長方形/正方形を含む)で "くけい" と読む
  • 使用例:心臓外科で僧帽弁を矩形切除して形成,形成外科で矩形皮弁を用いて再建

😒 漢字は常にむずかしいっす 👾 過去の漢字に関する投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-01-28

🎯 今週の一枚

腹痛と嘔吐で夜間にERを訪れた症例の腹部CT(単純)


(投稿者 川崎)

2021-01-27

アン女王の徴候 Queen Anne's sign 

  • 眉外側3分の1が薄くなったり消失した状態で甲状腺機能低下症の所見で有名
  • アン・オブ・デンマーク(Anne of Denmark, 1574-1619:名前+出身地
  • イングランド王ジェームズ1世(兼スコットランド王ジェームズ6世)の王妃
  • アン王女が甲状腺疾患にかかっていたわけではなくて単なる見た目での命名
(Public domain)

  • 別名はヘルトーゲ・サイン(ベルギーの内科医 Eugene Hertoghe に由来)
  • 甲状腺ホルモンの低下で眉毛を含む体毛が薄くなる(外側1/3の理由は不明)
  • 現在はアトピー性皮膚炎で認めることが多い(ハンセン病や梅毒でも出現)

(投稿者 川崎)

2021-01-26

心筋梗塞の機械的合併症:おさらい

🙈 左室自由壁破裂LVFWR: left ventricular free wall rupture)
  • Blow out型は心筋梗塞発症24時間以内,oozing型は発症3~5日後に多い
  • 発症リスクは高齢・女性・高血圧・初回梗塞・1枝病変・再灌流の遅れ
  • 身体所見 ➜ 心タンポナーデによる頸静脈怒張や奇脈,ショック,冷感

🙉 心室中隔穿孔VSP: ventricular septal perforation)
  • 発症リスクは高齢・女性・前壁梗塞(前下行枝)・初回梗塞
  • 穿孔は前下行枝なら心尖部寄り,非前下行枝なら心基部寄り
  • 身体所見 ➜ 心尖部近くの粗い汎収縮期雑音と前胸部の振戦

🙊 乳頭筋断裂PMR: papillary muscle rupture)
  • 前乳頭筋は前下行枝と左回旋枝の二重支配,後乳頭筋は右冠動脈単独     
  • よって乳頭筋断裂は,右冠動脈を責任病変にする後乳頭筋断裂が多い
  • 身体所見 ➜ 心尖部中心の汎収縮期雑音,湿性ラ音,頻脈,末梢冷感

参考)Heart View 2021;25:192-197

🉐 関連投稿(心筋梗塞の合併症編)

(投稿者 川崎)

2021-01-25

大砲(キャノン)

息切れで来院した症例

🐝 解説
  • 頸部に規則正しい隆起(画質不良ですいません 🙇)
  • 陽性波は指で容易に圧迫できた ➜ 内頸静脈の拍動
  • Ⅰ音または橈骨動脈拍動の直前に出現 ➜ 頸静脈a波
  • 座位で明瞭なa波といえば巨大a波(cannon a wave)
  • 本症例の最終診断は2:1伝導の房室ブロックであった

🐞 巨大a波
  • その機序は三尖弁の閉鎖中に心房収縮が生じて,頸静脈に逆流するためである.3度房室ブロックによる巨大a波が有名であるが(自験例),P波がQRS直前に生じる不整脈であれば,あらゆる病態で出現する(心室期外収縮の自験例
  • 巨大a波の規則性と出現頻度である程度の鑑別は可能と思う(完全房室ブロックや心室期外収縮なら不規則で稀/2:1房室ブロックなら規則的で頻).ウェンケバッハ型の2度房室ブロックも挑戦したことがあるがこれは難しい(自験例
🉐 不整脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-01-24

聴診器のおさらい


😀 補足1
  • 「聴診器で一番大切な部分はどこか?」という有名なクイズがあります.その答えは「イヤーピースの間(つまり脳を鍛える必要がある)」です(オハイオ州立大学ウォーレン教授:1958年)
  • この名言はさておき,人間の外耳道はやや前向き・下向きに走行しています.よって聴診器の金属部分を少し前向きにしておく必要があります.イアピースを耳に入れたら金属部分を内側にグッと押し込んで耳にピッタリフィットさせることも忘れずに(実はこれが一番大切)


😃 補足2
  • 膜を使った聴診後は皮膚に丸い跡が残るくらい,しっかり押し当てることが大切です.一方,ベルを皮膚に押し当ててしまうと低音成分が消失して,膜と同じ高音成分が中心になるので要注意
  • 聴診器を発明したのはフランスの医師ルネ・ラエンネックで1816年(過去の投稿).最初はベルだけであったが,1894年に米国の医師ロバート・ボウルズが高感度の膜を開発を開発した(ポケット心音の歴史より

🉐 聴診器に関連する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-01-23

バート-ホッグ-デュベ症候群 Birt-Hogg-Dubé syndrome

  • 病態 皮膚病変,腎腫瘍(良性〜癌),肺囊胞(再発性気胸)が特徴
  • 形態 常染色体優性遺伝(例:17番染色体短腕FLCN遺伝子の欠失変異)
  • 名前 カナダの3医師(皮膚科・病理・内科)による初報に由来(
  • 疫学 有病率は1/20万人くらいと推定(本邦でも100家系以上が確認)
  • 治療 根本的治療はない(個々の病態に応じて外科切除を含めた対応)



(投稿者 川崎)

2021-01-22

コアンダ効果 Coandă effect

  • 粘性流体の噴流(ジェット)が凸状物体の表面に沿って流れる現象(下図)
  • ルーマニアの発明家であるコアンダ(Henri Coandă 1886〜1972)に由来
  • 彼は世界初のジェット機(Coandă-1910)を製作したことでも知られている

😐 医療現場では…
  • 例えば僧帽弁逆流の程度(運動量)は有効逆流弁口面積(EROA)×速度で規定される.しかしコアンダ効果により運動量が急速に減弱することがあり,その時は逆流ジェットの面積が実際の逆流程度よりも小さく表示される.

🉐 関連投稿(〜効果編)

(投稿者 川崎)

2021-01-21

🎯 今週の一枚

左膝の疼痛で来院した中学生(サッカー部)


(投稿者 川崎)

2021-01-20

災害高血圧 Disaster hypertension

  • 災害発生後の急性期から一過性に血圧が上昇する病態のこと
  • 通常は震災後2~4週間,収縮期血圧が平均5~25mmHgほど上昇
  • その主原因は大きなストレスや環境変化(詳細は下図参照)
心臓 2019;51:1093-72/オリジナルはCirc J 2012;76:553-62です)

👻 おまけ
  • 災害関連死は循環器疾患と呼吸器疾患が大きな割合を占め,特に循環器疾患は血圧上昇と血栓傾向から増悪するようです.よって災害高血圧の管理がとても重要になります.情報通信技術(ICT: information and communications technology)を用いた家庭血圧管理システム(DCAPネットワーク等)を活用して,高リスク患者の見落としを減少させることが重要であるようです.

👾 災害に関する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2021-01-19

バキューム現象 Vacuum phenomenon

  • 後屈時などに変性した椎間板内圧が大気圧より低下して,椎間板内に気体が生じる病態
  • ガスは後方へ移動した線維輪とともに後縦靱帯を破って脊柱管内へ流入することもある
  • ガス成分は概ね窒素で加齢や変性進行に伴い増加/通常は無症状で稀に神経根圧迫症状



😀 おまけ
  • 本現象はキャビテーション現象(Cavitation phenomenon=血液に溶解している気体が一瞬気化する現象)と同様の機序と考えられます.
  • 例えば心臓人工弁の開閉に伴い局所的に生じた低圧で血中のガス(この場合はCO2など)が短時間出現することがあります(心エコー図で観察可能:自験例).
  • ただしキャビテーション現象で生じた微小ガスと弁不全や心事故など有害事象との明確な関連は証明されていないようです.
  • 身近な例では,関節がポキポキ鳴ることもキャビテーション現象で説明できるようです(関節内で生じた微小ガスがはじける音).

(投稿者 川崎)

2021-01-18

心エコー図に勝つ!

大動脈弁置換術後の症例(慢性期)

👹 解説
  • 臥位では内頸静脈や外頸静脈は視認できない(手ブレですいません 🙇)
  • 臥位では外頸静脈を認識 ➜ 上縁は頸部の中央で中心静脈圧の上昇なし
  • よく見ると外頸静脈の急峻な陥凹 ➜ Ⅱ音後でy谷(フリードライヒ徴候
  • 深吸気で外頸静脈が怒張 ➜ クスマウル徴候陽性 ➜ 収縮性心膜炎と診断

臨床現場 💨
  • 心エコー図をオーダーしたけど「収縮性心膜炎を示唆する所見はありません」という結果でした.でも患者さんによく話を聞くと,「無理した時にはお腹が張る感じがします」と言われた.BNP値の上昇もないけど,初期の収縮性心膜炎が疑われるため慎重にフォロー中です.

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🉐 収縮性心膜炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-01-17

😳 たくみの深淵

食後に息切れがする症例の心音(第3肋間胸骨左縁)

🐰 匠の耳ならば…
  1. 収縮期駆出性雑音が心室期外収縮+代償性休止後に増大 ➜ 閉塞性肥大型心筋症を疑う
  2. 収縮中期に過剰音があり,その後に駆出性雑音 ➜ 閉塞性肥大型心筋症の偽駆出音の疑い
  3. Ⅱ音の分裂が期外収縮+代償性休止後の心拍では消失している(タイミング的に後半成分)
  4. 肥大型心筋症では流出路狭窄の増加時には大動脈成分が消失 ➜ Ⅱ音の分裂は奇異性分裂
  5. よって本例は聴診から「収縮期僧帽弁前方運動を伴う閉塞性肥大型心筋症」と診断できる

🙇 種明かし
  • 実際に匠であっても聴診だけでここまで診断できるかは不明です(投稿者には心音図を見ながらの聴診でも到底無理でした)
  • この心音図は症例報告:偽駆出音を呈した非閉塞性肥大型心筋症の1例(Circ J 2018;82:1718-1720)の補足データです
  • 投稿原稿では「偽駆出音と収縮期雑音が心室期外収縮後の心拍では,より早期に出現して音量も増大している」とのみ記載
  • しかし査読者の一人が期外収縮後のⅡ音分裂消失は流出路狭窄による大動脈成分の消失を示唆(つまり奇異性分裂)を指摘
  • この素晴らしい査読をしていただいた匠の先生が本投稿を読まれたらぜひ連絡を下さい.とても感謝しております m(_ _)m

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(投稿者 川崎)

2021-01-16

キアリ奇形 Chiari malformation

  • 概要 小脳の形成異常に関連した奇形で別名はアーノルド・キアリ奇形
  • 由来 オーストリアの病理学者Hans Chiari (1851−1916)による報告(
  • 原因 先天性(妊娠中の骨の形成異常)または後天性(出生時の外傷)
  • 分類 1型は小脳扁桃の下垂,2型は小脳と脳幹がともに脊椎管内へ陥入 
  • 合併 水頭症(ほぼ全例?)・脊髄空洞症(約50%)・側彎症(約1/6)
  • 疫学 20〜40代の女性に多い傾向(成人になってからの診断例が多い)
  • 症状 頭痛や頸部痛(特に咳嗽時),上腕の痺れなど(緩徐に進行する)
  • 診断 頭部と脊髄MRIが重要/CTやX線で頭蓋骨や脊椎の形成異常を判定
  • 治療 無投薬〜症状に対する対症療法/進行時に大後頭孔部の減圧術など

🉐 関連投稿(脳外科?編)

(投稿者 川崎)

2021-01-15

エコーの歴史+α

  1. 1800年代前半にオーストリアの物理学者クリスチャン・ドップラードップラー効果を発見(Gesellschaft der Wissenschaften vom 1842;5:25)
  2. 1800年代後半にフランスの物理学者キュリー兄弟圧電効果(物質に圧力をかけると電圧が発生する現象)を発見(Comptes rendus hebdomadaires des séances de l'Académie des sciences 1881;93:1137-40)
  3. 1916年にフランスの物理学者ポール・ランジュバンが水晶の圧電効果を利用して世界で初めて超音波の発生に成功(その後,世界大戦中の対潜水艦ソナーに応用)(French patent 1916;502:913)
  4. 1940年頃,オーストリアの神経学者カール・ドゥッスイックが超音波を医学に応用(脳腫瘍の診断を試みたが有用性は?)(Z Neurol Psychiat 1942;174:153)
  5. 1954年にスウェーデンの物理工学者ヘルツと医師エドラーが超音波を心臓に応用(僧帽弁狭窄症のAモード,その後にMモード)(Kungl Fysiogr S llsk i Lund F rhandl 1954;24:1-19)➜ 実際の画像はココ
  6. 1956年に産業科学研究所の研究者である里村茂夫(41歳で夭折)と大阪大学の内科医である仁村泰治がドプラ法を開発(Jpn Circ J 1956;20:227)
  7. 1965年に日本無線の研究者である内田六郎と東北大学の内科医の田中元直が断層法(Bモード)を開発(ただし誰が世界初かは諸説あり)(Sci rep res inst tohoku univ med 1965;12:58-74)
  8. 1984年にアロカの研究者である滑川孝六と東京大学の外科医である尾本良三がカラードプラ法を開発Jpn Heart J 1984;25:325-40

😀 おまけ
  • カラードプラの色は向かってくる血流を赤色で示します(逆は青色).これは開発者の一人である尾本良三先生(上記)が,「向かってくる奴は情熱のだ」と決めたからだそうです.しかしこれは物理学や天文学の定義(遠ざかる光源は赤く見える=赤方偏移)とは真逆です(逆は青方偏移).僕は心エコー図で赤いシグナルを見ると,この歴史を時々思いだします.おまけついでに循環器領域ではドップラーではなくてドプラと記載すると習いました.

(上図は赤方偏移で下図は青方偏移:引用

(投稿者 川崎)

2021-01-14

🎯 今週の一枚(というより一音)

ポケット心音 基礎編の症例2より

【心尖部】




(投稿者 川崎)

2021-01-13

エコーの下大静脈評価:その盲点

  • 下大静脈径からうっ血や脱水を判断することが可能 ➜ 当院での方法の一例
  • しかし同径は個人差が大きいため要注意(例:若年者などは正常でも拡大)
  • さらに腹式呼吸をしないと呼吸性変動が低下する(オススメは鼻をすする)

🔔 エコーのIVC評価に影響する10因子(Intensive Care Med 2016;42:1164-7) 
  1. 人工呼吸器の設定(高いPEEPや小さいTVなど)
  2. 換気補助(ネーザルハイフローCPAP他)
  3. 自発呼吸パターン(浅い呼吸あるいは深い呼吸など)
  4. 肺の禍膨張(喘息やCOPD悪化など)
  5. 慢性右室不全(高度の三尖弁逆流など)
  6. 右室梗塞
  7. 心タンポナーデ
  8. 腹圧の上昇
  9. 局所的な機械的要因(下大静脈の圧迫やECMO留置など)
  10. 呼吸に伴う下大静脈の側方移動(下図)

(投稿者 川崎)

2021-01-12

紹介 vs 照会

👯 似て非なるもの
  • 紹介 ➜ 仲立ちをすること(臨床例:糖尿病例で心電図異常のため循環器内科にコンサルト)
  • 照会 ➜ 問い合わせて確認すること(臨床例:胆石術前例で神経科に処方中の内服薬を確認)

🔎 紹介状
  • 診療情報提供料Ⅰで250点.他の医師・歯科医師に対して患者の検査・診断・治療等をお願いする依頼状.月に1回の算定が可能 

🔍 照会状(対診状)・経過報告書
  • 診療情報連携共有料で120点.医師・歯科医師等が患者の病状や治療内容を他の医師・歯科医師等に問い合わせる文で3ヵ月に1回の算定が可能.原則として回答を求める文書のため,どのような内容を照会(質問)したいかを明確かつ具体的に記載


(投稿者 大神/川崎)

2021-01-11

フロートラック センサー FloTrack sensor

  • Edwards社製の動脈圧ラインを用いたキャリブレーションが不要な連続心拍出量モニター
  • スワン・ガンツカテーテルの挿入なく,一回拍出量・心拍出量・平均血圧などを算出可能
  • 機序は動脈圧波形を毎秒100回の頻度で解析し,その20秒値から血管弾性を乗算している
  • 医科点数:開始日に限り1,300点+観血的動脈圧測定日数(〜1時間130点/1時間〜260点)



💙 SVV>13は脱水の目安?
  • CO(心拍出量)とSV(一回拍出量)が低い時にSVV値(一回拍出量変化)から輸液反応性を評価できるようです(下図).ただし脱水の確定には頸静脈所見(例:臥床で頸静脈が視認できない)や下大静脈径(最大径5mm未満)を併用したほうがより安心と思います.


(投稿者 川崎)

2021-01-10

挿管困難時のBURP法

BURP=Backward, upward, rightward pressureの略で,挿管時に声門が見やすいよう喉頭(甲状軟骨部)へ行う手技
  1. Backward(背側に)
  2. Upward(頭側に)
  3. Rightward(右方に:患者さんの右側です)
  4. Pressure(圧迫する)


👻 おまけ
  • なぜ左でなくて右なのかと思うかもしれませんが,これはマッキントッシュ喉頭鏡は左手に把持するためブレード先端が右側を向きやすいためのようです
  • 命名はburp (【名/動】げっぷ/げっぷをする・させる 【発音】 bə́rp/バープ/実際の音声)と掛けたシャレですがあまり上品ではないかも…(上品な例

🉐 関連投稿(挿管編)

(投稿者 川崎)

2021-01-09

コン症候群 Conn's syndrome

  • 単に原発性アルドステロン症(PA: primary aldosteronism)の別名
  • 米国の内分泌医 Jerome W. Conn (1907-1994) の初報に由来(論文
  • 高血圧例の5~10%,治療抵抗性高血圧例の20%はPAと推定される
  • 血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)比ARRを計算
  • ARR≧200 (PAC単位 pg/ml) または≧20 (PAC単位 ng/dl) でPAを疑う
  • ただARRはPRA依存で高齢者・高食塩・β遮断薬内服で偽陽性が多い



👾 上の表で感覚をつかんだらゲームに挑戦 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-01-08

メイロン投与量の計算

📙 メイロン静注7%の添付文書 より(8.4%もありますが当院は7%です)
【用法・用量】
・アシドーシスには、一般に通常用量を次式により算出し、静脈内注射する。
      必要量(mEq)=不足塩基量(Base Deficit mEq/L)×0.2× 体重(kg)
   メイロン静注7%の場合
      必要量(mL)= 不足塩基量(Base Deficit mEq/L)×1/4×体重(kg)
・薬物中毒の際の排泄促進、動揺病等に伴う悪心・嘔吐及びめまい並びに急性蕁麻疹には、炭酸水素ナトリウムとして通常成人1回12~60mEq(1~5g:本剤14~72mL)を静脈内注射する。
・なお、いずれの場合も年齢、症状により適宜増減する。

👻 ただし杓子定規に投与するものではない ➜ 臨床研究Lancet 2018;392:31-40
  • 対象 ICUへ入院した重症代謝性アシドーシス例(pH≦7.20+PaCO2≦45mmHg+重炭酸塩≦20mmol/L)
  • 介入 補液(30分125–250mL,~1000mL/日)+pH>7.30まで炭酸水素ナトリウム静脈投与 or 否
  • 結果 28日以内の全原因死亡と7日以内の臓器不全は両群間で差なし(ただしAKI患者では少し有効)

👾 酸塩基平衡はゲームで学ぼう ➜ ゲーム 🎮 血ガス-30 BGA-30

(投稿者 川崎)

2021-01-07

ST合剤の主な副作用

  • 皮膚障害:軽微なものから重篤なTEN(中毒性表皮壊死融解症)まで
  • 血液障害:再生不良性貧血、溶血性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少症など
  • 腎障害・肝障害
  • 消化器症状:悪心・嘔吐、下痢など
  • 電解質異常:高カリウム血症、低ナトリウム血症
ST合剤は副作用が多く、使用の際には注意が必要です。
必要に応じ臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検査、血中電解質等)を行うこと。

(投稿者 小森)

🎯 今週の一枚

間欠性跛行で治療中の症例(右膝人工関節置換術後)

(投稿者 川崎)

2021-01-06

🎰 看護必要度

  • 患者の重症度と看護の必要量を数値化する指標で,病院の機能分化を目指す
  • 2008年度に導入され2020年度の診療報酬改定で看護必要度Ⅱが追加された
  • 3つの大項目で構成され計20以上の評価項目から算出される(詳細は下図)

一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」の概要
 ※対象病棟の入院患者について毎日測定し,直近3ヵ月の該当患者の割合を算出

一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」の概要
 ※対象病棟の入院患者についてA項目及びC項目は日々の診療実績データを用い測定し,直近3ヵ月の該当患者の割合を算出
参考)重症度 - 厚生労働省(中医協総 - 32.1.15

🉐 制度に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(WEB版なら右欄からも選択可能)

(投稿者 川崎)

2021-01-05

処方箋略語

♉ 最近では目にすることがめっきり減ったラテン語
  • POまたはp.o. ➜ per os(経口)
  • QDまたはq.d. ➜ quaque die(1日1回)
  • SIDまたはs.i.d. ➜ semel in die=(1日1回)
  • BIDまたはb.i.d. ➜ bis in die(1日2回)
  • TIDまたはt.i.d. ➜ ter in die(1日3回)
  • QIDまたはq.i.d. ➜ quater in die(1日4回)
  • Q2Hまたはq.2h. ➜ quaque 2 hora(2時間毎)
  • QODまたはq.o.d. ➜ quaque altera (other) die(隔日)
  • PRNまたはp.r.n. ➜ pro re nata(必要時)
  • HSまたはh.s. ➜ hora somni(就寝前/眠前)
  • ACまたはa.c. ➜ ante cibum(食前)
  • PCまたはp.c. ➜ post cibos(食後)

😸 おまけ
  • 前回と同じ処方を出すときにカルテに記載する “Do” は “ditto” の略語のようです.僕は長年,英語のdo(動詞の “する” )と思っていました.
  • ちなみにdittoは口語英語の “the same” で,ラテン語 “dictum” (述べられた)に由来.ただし英語で “dictum” と言えば,格言や声明の意味

💁 医学のドイツ語は コチラ から検索できます

(投稿者 川崎)

2021-01-04

ちょっとした工夫

高度の大動脈弁逆流で手術を予定している症例

🐦 解説
  • 肘を伸展していると特記すべき異常所見はない ➜ 肘を軽く屈曲すると正中動脈の拍動が出現
  • 大脈・速脈を示唆し大動脈弁逆流ARで有名/他は甲状腺機能亢進症や高度貧血,発熱時など
  • 水槌脈 (Water-hammer pulse),反跳脈 (Bounding pulse),コリガン脈 (Corrigan pulse)と呼ぶ

🐤 独り言
  • 個人的な経験では,高度の大動脈弁逆流を有するほとんどの症例で観察可能.ただし本例のように肘を軽く曲げるなどの工夫が必要.体位によっても変化する(特に頸動脈 ➜ 実例
  • このような身体所見のちょっとしたコツは成書や論文には書いていません.よって貴重な経験や知識を皆で共有する方法が望まれます(本ページを密かに宣伝 😊 是非投稿を!).
  • 加齢などに伴う動脈の蛇行+表在化による偽水槌脈には注意が必要です.この偽コリガン脈は日常臨床でしばしば遭遇しますが,聴診など他のフィジカルを組み合わせればすぐに見破れます 😊

🉐 関連投稿(大動脈逆流に関連する他の身体所見)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-01-03

🐽 トンテキ

臨床現場 💨
  • 研修医 「本例の最終食事は来院1時間前のトンテキです」
  • 指導医 「トンテキ? 何それ?」
  • 専攻医 「豚=トンのステーキです」

🐷 トンテキ
  • 牛肉のステーキであるビフテキに対して用いられる豚肉の料理
  • 厚い豚肉を濃厚なタレと一緒に炒めて千切りキャベツを添える
  • 三重県の四日市市の名物料理として有名?(四日市トンテキ

😊 おまけ
  • ちなみにビフテキはビーフステーキの略語ではなくて,ステーキを意味する仏語bifteck(ビフテック)に由来(出典:日本ハムのコラム
  • 先日の「メバチコ」のように特定の地域で用いられる用語ではないようですが,ビフテキ自体も耳にする機会は確実に減少(ほぼ死語?)

🉐 肉に関連する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-01-02

低ナトリウム血症?

倦怠感,食思不振,呂律困難で搬入された症例


2021-01-01

恒例の元旦からグラム染色クイズ

右下肢痛と発熱で緊急搬入された症例の患部組織




(投稿者 川崎)