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2020-05-09

鉛中毒 Lead poisoning

  • 1990年頃までは橋梁塗料に鉛丹(四酸化三鉛)が含まれていたため鉛中毒は稀ではなかった
  • 鉛はヘモグロビン合成を阻害するため血液塗抹標本で有核赤血球や好塩基性斑点が出現する
  • 症状は消化器症状(嘔吐や腹痛,便秘),神経症状(認知症や神経炎),貧血,疲労感など
  • 摂取経路は釣りおもりの誤嚥や鉛銃弾の遺残,漢方薬,ハンダ作業による吸引,汚染水など
  • 診断は血中鉛濃度/治療は鉛源除去+腸管洗浄+キレート療法(ただし多くは不可逆的変化)


👽 おまけ

😎 関連投稿(中毒編)

(投稿者 川崎)

2022-05-18

リチウム中毒 Lithium Intoxication

  • 炭酸リチウムは躁病および双極性障害の躁状態に対して広く使用されている薬剤
  • 主に小腸から吸収され生体利用率100%(肝で代謝や排出なし)で95%が腎排泄
  • 治療域(0.6~1.2 mmol/L),中毒域(1.5~),致死域(3.0~)と濃度が近接
  • 過量服薬,脱水,感染,他薬との相互作用(利尿剤,降圧剤,NSAIDsなど)で上昇
  • 症状は中枢神経(意識障害や振戦,構音障害)と消化器(悪心,嘔吐,下痢)他
  • 重症例では昏睡,痙攣,循環器所見(洞不全やQT延長症候群,致死性不整脈など)
  • 急性リチウム中毒の治療は輸液療法,胃洗浄,HDやCHDFなど積極的な血液浄化療法
  • 透析の適応:腎機能障害,重度の中枢神経障害,リチウム濃度が致死域・上昇傾向


 リチウム中毒の一例の経過

💁 中毒に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-01-08

バートンの線 Burton’s Line

  • 鉛中毒(lead poisoning)で出現することがある歯根〜歯茎の青紫線
  • 機序は口腔内細菌が放出する硫黄イオンと鉛が反応して生じる硫化鉛
  • 由来は英国の医師 Burton による初報(Med Chir Trans 1840;23:63–79)



👾 なんでも調査隊
  • バートンの線(Burton's Line)の報告は今から180年以上前で,日本は江戸時代後期(天保11年)で徳川家慶の頃です.しかしこの身体所見は画像診断が発達した現代でも,臨床的に有用です.鉛中毒の症状が非特異的(3大症状:胃腸症状・筋骨格症状・神経症状)であるためです.
  • 鉛中毒自体の歴史は古く,紀元前2世紀のギリシャの生物学者・医師である Nicander の報告まで遡るようです.彼は鉛中毒が腹痛や麻痺の原因になることをすでに報告しています(引用).ベートベンの聴力障害はワインに関連した鉛中毒説もあります(Laryngoscope 2013;123:2854-8)

💁 鉛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-04-04

ブロム中毒

  • 病態 ブロムワレイヒ尿素による急性・慢性中毒
  • 原因 販薬(鎮痛薬や睡眠薬)からの過剰摂取
  • 代謝 基本的に腎代謝で半減期は10-14時間
  • 特徴 高クロール血症とアニオンギャップの低下
  • 症状 精神症状,構語障害,歩行障害など多彩
  • 治療 補液などの対症療法(必要に応じて透析)

当院で経験した症例は頭痛に対して販薬を長期間連用していた.血ガス中のCl値は137 mEq/LでAGは-18(ただし通常の採血検査機器では問題なし).特定の測定機器による不自然なデータに気が付いた検査室のスタッフがブロム中毒の可能性を指摘してくれた(👀 ナイスプレイ).知らないと単なるラボエラーで処理される可能性あり.なんと清涼飲料水コーラで生じたブロム中毒例も報告されている(J Toxicol Clin Toxicol 1997;35:315-20).

参考文献)Nephrol Dial Transplant 2005;20:1767-8/Ann Pharmacother. 2001;35:386-7/Crit Rev Toxicol 1987;18:189-213

(投稿者 川崎)

2024-01-26

リドカイン注射液

  • 効能 心室・上室の期外収縮と発作性頻拍,AMI及び手術に伴う心室性不整脈の予防
  • 濃度 安全域は~3 μg/ml(5 μg/ml~で中枢神経症状,10μg/ml~で重篤な状態に)
  • 用量 1分間に4 mg(0.4 mL)から重篤な副作用(4 mg/分 or 5.76 g/日までにする)
  • 代謝 血中濃度は肝血流量に依存(心不全等で心拍出量減少時は中毒を生じやすい)
  • 中毒 せん妄,眠気,嘔吐,意識障害,振戦、痙攣,刺激伝導系抑制、ショックなど
  • 対応 投与中止,痙攣にベンゾジアゼピン,バイタル不安定なら脂肪乳剤+体外循環


局所麻酔薬中毒発生時の脂肪乳剤の投与法 (例:イントラリポス)

👿「リドカイン」の過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2016-08-30

中毒センター

急性中毒の対応に困ったら ⇒ 中毒110番 072-726-9923
365日24時間対応 情報提供/一般無料・医療施設2000円
http://www.j-poison-ic.or.jp/homepage.nsf

(投稿者 川崎)

2023-12-06

心電図マイスターへの道 ⑤

特殊なCLBBB
  • 通常は I 誘導にQ波はない.もしQ波があれば左室前側壁の障害を疑う.また右軸偏位(IでR<S)なら右室の障害を疑う.

特殊なCRBBB
  • 通常は I 誘導で深いS波がある.もし深いS波がなければ左室の作業心筋の障害を疑う.またQRSが150 ms以上ならCRTが有効な可能性あり.

特殊な心室内伝導障害
  • TCA(Tricyclic Antidepressants/三環系抗うつ薬)中毒などの右室障害(左室よりも障害を受けやすい)ならRBBB様であるがrSR'なし(偽性心室調律=Brugada phenocopy:aVRでR波が3 mm以上で北西軸).DCは無効(原疾患の治療とメイロン投与など).Naチャネルの遮断による0相障害で,他に I 群不整脈中毒やコカイン中毒,重症虚血,高K血症などで生じる.
  • 一方,左心系の障害なら I 誘導でsmall Qなし.ともに後半成分を見て障害部位を推定可能.心室頻拍と間違わないように.これもQRSが150 ms以上ならCRTが有効な可能性あり.

SSSルーベンシュタイン分類 Ⅱ 群(洞停止・洞房ブロック)
  • 1度洞房ブロック ➜ S-Pが長いが体表心電図では分からない
  • 2度洞房ブロック(type 1)➜ ウェンケバッハ型でP1P2>P2P3=P3P4で時にP脱落(一定のパターン [グループ] が続く/一見,呼吸性変動に見える)
  • 2度洞房ブロック(type 2)➜ モビッツ型でP1P2の2倍がP2P3(従来の洞房ブロック)
  • 3度洞房ブロック ➜ 補助調律のみが示され,体表心電図では洞停止との鑑別はできない

De Winterパターン
  • V1-6で1 mm以上のJ点の低下+上向きST低下+高い対称的なT波が2誘導以上+aVRで1 mm以上のST上昇.発症早期(目安1時間以内)のLAD近位部の心筋梗塞を示唆.
  • ちなみに Ⅲ 誘導にミラーイメージのST低下があれば同様にLAD近位部の心筋梗塞を示唆(これは一般論).

Long RPタキ
  • AT,ORT(orthodromic AVRT/順方向性のAVRT,slow Kent束によるAVRT=90%のWPW),FS-AVNRT(非通常型AVNRT)を考える
  • ATはしばしば2:1伝導で,停止はQRSの後になる(他の2つはPでもQRSでも終了可能).ORT(slow Kent)は必ず1:1伝導である.FS-AVNRTは2:1伝導(LCP [lower common pathway] ブロック時)や1:2伝導(UCP [upper common pathway] ブロック時)になりえる.
  • (逆行性)P波が見えなければ通常型(Slow-Fast型)AVNRT.ただし通常型AVNRTではQRS波の終末部にP波を認めることもある(いわゆるpseudo S波).
  • QRS直後にP波があって,頻脈停止時にP波がなければ(termination without P)なら,はやりAVNRT


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-05-31

アミオダロンと甲状腺機能

アミオダロン服用中の甲状腺機能に関する検討(心臓 2013;45:1101-9)より
  • 対象 アミオダロンを1月以上処方されていた341名
  • 基準 1.0≦FT4<2.4ng/dL,1.0≦TSH<20.0μU/mL
  • 結果 機能低下(含む疑い)=10.4%、中毒症=5.2%
  • 余後 甲状腺中毒症を認めた状態で死亡した3症例あり


🐧 機序
  • アミオダロンの分子式はC25H29I2NO3・HClで100mg中に37.5mgヨードを含有 ➜ ヨード過剰摂取からWolff-Chaikoff現象のため甲状腺機能低下症を発症(Am J Med 1969;47:101-24)
  • アミオダロンは末梢と下垂体でT4をT3へ転換する5´-脱ヨード酵素を阻害する ➜ 甲状腺機能低下症を発症(FEBS Lett 1999;450:35-8)
  • 浅在性Basedow病や中毒性結節性甲状腺腫 ➜ アミオダロン内服でヨード誘発性の甲状腺ホルモン産生過剰 ➜ 甲状腺機能亢進症を発症(日内会誌 2010;99:776-85)
  • アミオダロン自体に甲状腺細胞障害性がある(らしい) ➜ 破壊性甲状腺中毒症タイプの甲状腺機能亢進症を発症(日内会誌 2010;99:776-85)

甲状腺の関連投稿 👀

(投稿者 古室・川崎)

2020-06-07

KUSSMAL-P

AG開大性の代謝性アシドーシスはKUSSMAL-Pで鑑別
  • K : ketoacidosis (ケトアシドーシス)
  • U : uremia (尿毒症)
  • S : salicylic acid (サリチル酸)
  • S : sepsis (敗血症)
  • M : methanol (メタノール) 
  • A : alcoholic、aspirin intoxication (アルコール中毒、アスピリン中毒)
  • L : lactic acidosis (乳酸アシドーシス)
  • P : paraldehyde (パラアルデヒド)

👽 おまけ

KUSSMALはドイツ人医師のアドルフ・クスマウルで以下の3所見を発見
  1. クスマウル呼吸 異常に深大な呼吸の連続 ➜ 尿病性ケトアシドーシスなど
  2. クスマウル徴候 吸気時に頸動脈怒張(通常は吸気時に軽減)➜ 収縮性心膜炎など
  3. 奇脈 吸気時の収縮期血圧低下が10mmHg以上(通常は3-9mmHg低下)➜ 心タンポナーデなど

🉐 関連投稿(アニオンギャップ編)

(投稿者 川崎)

2026-03-21

ボツリヌス菌 Clostridium botulinum

  • グラム陽性の偏性嫌気性桿菌で産生毒素が極めて致死的な神経麻痺を起こす
  • 同菌が産生する物質である神経毒素はその抗原性でA~Gの7型に分類される
  • 人を含む多くの脊椎動物が罹患し種族と毒素型は関連(人は主にA,B,E型)
  • 日本は1951年に北海道で「いずし」によるE型ボツリヌス中毒が初めて報告
  • 2004年までに計177件(患者541名、死者116名)の食餌性ボツリヌス中毒
  • 発生するボツリヌス中毒の原因菌型はその地域の土壌に分布する菌型と一致
  • 感染経路は毒素または多量の芽胞の食品、飲料水等への混入,または噴霧他
  • 潜伏期間は暴露された毒素量や芽胞量によるが、通常、数時間~48時間ほど
  • 入院期間は治療の開始時期や治療法により異なる(長期では数ヵ月におよぶ)
  • 症状は便秘や嘔気、嚥下困難、尿閉、口渇、複視、呼吸困難、歩行障害など
  • 診断は患者の血清および食品、飲料水などの毒素検査を行う(PCR法など)
  • 治療は呼吸管理(人工呼吸器)と共に速やかな抗毒素療法(抗生物質は無効)


- ボツリヌス菌の神経毒素の作用機序 -
神経毒素は血流にのって末梢神経前膜へ結合し、細胞内へ侵入、シナプス小胞とシナプス前膜のdocking/fusion complexの構造タンパク質を切断し、神経伝達物質(アセチルコリン)の放出を阻害する。


(投稿者 川崎)

2024-12-08

第138回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
B-15 遷延する高度徐脈・低血圧をきたし,蜂蜜中毒と診断した一例
  • 蜂蜜中毒はトルコを中心に世界各地で報告されており, 有毒成分Grayanotoxinが原因である. コリン作動性の症状を呈するのに加え, 低血圧やショック, 徐脈, 完全房室ブロックなどが起こり得る. 本症例ではアトロピンの静脈注射を行い, 数分後速やかに循環動態が改善した.

D-3 Micra植込み後ダンシングに対し、経皮的抜去を行った一例
  • 右大腿静脈からMicaデリバリー用シースを挿入し、ダブルスネアテクニックにてMicra本体を2本のスネアで固定しながらデリバリーシース内に格納後、デリバリーシースごと抜去した。

発表ではありませんが…
  • 今回は10時過ぎからコーヒーブレイクセミナーが4会場,15時過ぎからアフタヌーンセミナーが6会場で実施されていました(近畿地方会では初の試み?).いずれも飲み物と和菓子あるいは洋菓子が二つほど入った紙袋がもらえました.もちろんお昼にはランチョンセミナーが7会場でありました.すべて完食したので大満足(でも食べ過ぎ😅)


👻 当院からの発表
  • B-25 拡張期奇異性血流を呈したATTR心アミロイドーシスの1例(循環器内科 西機恵実ほか)
  • B-38 負荷頚静脈評価法:心不全症例のリスク判定(循環器内科 川崎達也ほか)
  • D-25 収縮性駆出性雑音を呈した動脈管開存症の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • D-27 発作性心房細動を契機にPH crisisを生じた心房中隔欠損症の一成人例(循環器内科 川俣博史ほか)
  • I-9 心室頻拍の起源が診断契機になった心臓限局性サルコイドーシスの1例(循環器内科 積木勇人ほか)

すべて論文化(4編英語:掲載済1,採択1,投稿中2,作成中1)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-04-25

😽 キャット・ミール CAT MEAL 

  • 薬物中毒時の透析適応は体内分布,半減期,淡白結合率,分子量などで決定されます
  • 大まかな透析適応は ”血液吸着法=CAT+血液透析法=MEAL” と覚えておけば楽です

  1. Carbamazepine ➜ カルバマゼピン(+カフェイン?)
  2. Anticonvulsants ➜ 抗けいれん薬(フェノバルビタールやフェニトリン他)
  3. Theophylline ➜ テオフィリン

  1. Methanol ➜ メタノール
  2. Ethylene glycol ➜ エチレングリコール
  3. Aspirin ➜ アスピリン
  4. Lithium ➜ リチウム

🍖 独り言
  • ライオンやトラ,チーター,ヒョウなどネコ科の動物は肉食性が強いことが知られています.よって基本的に猫も肉食です(犬は雑食).猫の食事であるCAT MEALはドロドロなのですぐに透析と考えるとこの語呂合わせは覚えやすいかも...

💁 中毒に関する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2018-04-23

低Na血症の補正速度

  • 急激な血漿浸透圧の上昇 ➜ 脳細胞内の水が細胞外に移動 ➜ 脳細胞萎縮浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome:ODS)
  • 特に橋の中心部分で生じやすい=橋中心脱髄症候群(central pontine myelinolysis:CPM)=T2強調画像で高シグナル


📌 ポイント 📌 
  • 今回の当院の症例は水中毒による低Na血症であったため安易なNa投与はリスクが高い
  • 血漿浸透圧や尿浸透圧はオーダーしても至急で結果が判明しない(特にERや休日など)
  • 尿浸透圧の推定式を用いて尿浸透圧>100mOsm/Lを確認し水中毒を否定しておくこと

詳しく知りたい方 ➜ 水・ナトリウム代謝異常.日内会誌 2015;104:906-16

💉 3%食塩水の作り方 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2020-07-03

AIUEO TIPS あいうえおチップス(+α)

前回の投稿から3年半が経っているので再度アップしました 👶

👿 もちろん意識障害の鑑別疾患です
  1. A ➜ alcoholism (急性アルコール中毒),Aortic dissection(急性大動脈解離)
  2. I ➜ insulin (インスリン:低血糖あるいは高血糖)
  3. U ➜ uremia (尿毒症)
  4. E ➜ endocrine(内分泌異常),encephalopathy(脳症),electrolytes(電解質異常)
  5. O  ➜ oxygen(低酸素),opiate/overdose(薬物中毒)
  6. T ➜ trauma(頭部外傷),temperature(低体温あるいは高体温)
  7. I ➜ infection 感染症
  8. P ➜ psychiatoric(精神疾患),porphiria(ポルフィリア)
  9. S ➜ stroke/SAH(脳卒中あるいはくも膜下出血),shock(ショック),seizure(痙攣),supplement(ビタミン欠乏:特にビタミンB1欠乏)

※意識障害の症例では問診ができないからER室では重宝します

👻 トリビア
  • オリジナルは意識障害の鑑別疾患の頭文字を英語母音字(A, E, I, O, U, 稀にY)のアルファベット順に並べたAEIOU TIPS(発音はコチラ)
  • 開発者は不明ですが,初報はおそらく J Natl Med Assoc 1980;72:331-4(AEIOU TIPS: Alcohol, Epilepsy, Infection, Opium and other drugs, Uremia, Trauma, Insulin, too much or too little, Poisons, and Shockと記載)
  • AEIOUを日本語の母音のあいうえお順に並べ替えたものがAIUEO TIPS(あいうえおチップス)で,それに大動脈解離やサプリメント不足などを追加した版が+α

🉐 関連投稿(意識障害編)

(投稿者 川崎)

2024-04-18

今週の一枚 🎯

発熱が続く若い女性

👿 解説
  • 甲状腺の腫大あり(峡部の前後径11 mm)
  • 周囲リンパ節も目立つ(反応性腫大の疑い)
  • 採血でCRP 17,TSH 0.01,fT3 3.94を確認
  • 身体所見では甲状腺の両葉下極に圧痛あり
  • エコーで右下極にややlow echoicな領域あり
  • その後の追加検査で亜急性甲状腺炎と診断
  • ロキソプロフェン屯用で3週間後に正常化

👾 甲状腺と造影剤
  • 本例は初診時に甲状腺疾患が鑑別診断に含まれていなかったため造影CTが行われてしまいました(幸い検査後に問題なし).甲状腺中毒患者に造影剤を投与した場合有機ヨードが体内に取り込まれるので,Wolff-Chaikoff効果が期待できません.その結果,TSHによる制御を受けずに多量の甲状腺ホルモンが生成されて甲状腺クリーゼを引き起こす可能性があります.
  • 甲状腺中毒患者へのヨード造影剤の使用は原則禁忌ですが,心疾患など造影を必要とする疾患を併発してしまった場合などでは,その危険性を理解して注意深く造影しなければいけません.造影の24時間前からメチマゾールを予防的に投与することで甲状腺機能の悪化リスクをある程度,低下させることができるようです(Front Endocrinol (Lausanne) 2023;14:1154251.) .

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 太田/川崎)

2021-05-05

酸素飽和度100%

カンファレンス中の一コマ 💨
  • 研修医 「サチュレーションは100%で正常でした」
  • 指導医 「室内気で酸素飽和度100%は正常なの?」
  • 研修医 「100%…正常…異常??」
  • 指導医 「呼吸数はどうだったん?」

  • 健常者のSpO2は96-99%とされています。しかしSpO2=100%でアラームは鳴りません。SpO2=100%は安全域か否かは原因によると思います。
  • 室内気でSpO2=100%になる原因として多いのは過換気状態です。過換気状態になる原因として代表的な病態は過換気症候群です。
  • 一方、過換気状態には過換気症候群以外にもさまざまな病態があります。体表的な病態と具体的な疾患を下の表にまとめます。

参考)内科救急見逃し症例カンファレンスM&Mでエラーを防ぐ(医学書院 2012;53-8)

病態 想定される疾患
疼痛、発熱や交感神経亢進による呼吸数増加 大動脈解離、急性心筋梗塞、急性腹症、感染症、骨折、甲状腺機能亢進症、薬物中毒(アンフェタミン中毒など)、セロトニン症候群など
呼吸中枢障害による呼吸数増加 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血)
低酸素に対する代償で呼吸数増加 急性呼吸不全(気管支喘息、肺炎など)、急性心不全、肺塞栓症など
代謝アシドーシスに対する代償性過換気 糖尿病ケトアシドーシス、敗血症など
呼吸筋麻痺による換気量低下に対する代償で呼吸数増加 ギランバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症など

🎻 振り返り
  • 今回、救急外来で経験した症例は、急性虫垂炎の痛みにより過換気状態になりSpO2=100%(室内気)になっていたと考えられました。

(投稿者 中西)

2017-04-10

テオフィリン中毒

意識障害と間欠的な痙攣,期外収縮を呈する喘息女性が当院ERに搬入された
テオフィリンの血中濃度が34.8μg/ml で最終的にテオフィリン中毒と診断した


テオフィリンは有効域が狭く要注意.痙攣=てんかんと安易に診断しないことも大切.

(投稿者 川崎)

2016-11-23

低Na血症へのアプローチ

ステップ1  基本分類
  1. 高張性 : 高血糖やマンニトールなどの浸透圧物質による低Na
  2. 等張性 : 高脂血症、高蛋白血症などによる見かけ上の低Na
  3. 低張性 : 真の低Na血症 ⇒ ステップ2へ
   ポイント 血漿浸透圧から1と2を除外(血漿浸透圧<275 mOsm/Lであれば3)

ステップ2  水中毒の除外
  1. 水中毒
  2. それ以外 ⇒ ステップ3へ
   ポイント 尿浸透圧<100mOsm/Lなら1と判断し水制限

ステップ3  バイタルや身体所見,画像より細胞外液量を評価
  1. 増加 : 心不全,腎不全,肝硬変など
  2. 正常 : ADHの分泌増加(SIADH,甲状腺機能低下症,副腎機能不全など)
  3. 低下 : 腎性Na喪失あるいは腎外性Na喪失 ⇒ ステップ4へ
   ポイント 尿中Na濃度>20mEq/Lなら腎性のNa喪失と判断

ステップ4  低張性低Na血症における最終分類
  1. 腎性Na喪失 : 利尿薬や塩類喪失性腎症,低アルドステロン症など
  2. 腎外性Na喪失 : 嘔吐や下痢、熱傷など

   まとめ 低ナトリウムの鑑別は血漿浸透圧・尿浸透圧・尿中Na濃度で行う

(投稿者 川崎)

2023-03-10

論文 🏆 黄視症 Xanthopsia

  • 当院の初期研修医である春名先生が循環器内科で経験した症例が出版(少し前😅)
  • 心不全で入院 ➜ ジギタリス中毒(7.3 ng/mL)が判明 ➜ 追加問診で黄視症を確認
  • ポイントは視力や視野の異常はなく網膜電図( electroretinography: ERG)で異常

上段は入院時(ERGの反応低下)・下段は回復1月後(すべて正常化)

😀 おまけ
  • 本例は下腿浮腫に対して他院でジギタリスが0.25 mg/日が処方されていました.腎機能障害はなかったようですが,当院搬入時のeGFRは33.5 mL/min/1.73 m2でした(その後に53.6まで回復).
  • 問診で入院直前にバイクによる数回の自損事故を起こしていたことが判明しました.当初はジギタリス中毒による不整脈(特に徐脈:入院時40 bpm)を考えましたが,入院後に不整脈は検出せず.
  • よくよく聞いていくと,道路横の歩道ブロックが見えにくくなりバイクでぶつかっていたことが分かりました.これは夕方に顕著で信号色も不明瞭だったようです.そこから黄視症に辿り着きました.
  • ジゴキシン関連黄視症はジギタリス効果を発見したWitheringが200年以上前に報告しています(※).強烈な黄色で知られる画家ゴッホなど多くの人に影響を与えたと考えられているようです(#).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-05-06

One-pill killers 💀 致死的一錠

  • 小さい子供(例:8歳未満)だったら1錠でも死に至る可能性のある薬のこと
  • 頻度順に抗精神病薬・鎮痛薬・心血管薬・外用薬・抗菌薬・感冒薬/喘息薬
  • 幼児などがキャンディーと間違わないよう薬剤は高所で別保管が大切です


米国中毒情報センター協会による One-pill killers 犠牲者数

💁 中毒に関する過去の投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら右欄からも選択可能)

(投稿者 川崎)