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2020-07-31

現状の確認:コロナ検査のコスト他

📗 PCR検査(鼻腔・咽頭・唾液) 
  • 医師が必要と判断時は保険適応(原則2回まで)➜ 下記検査料は公費負担で患者負担なし
  • PCR 1350点+微生物学的検査判断 150点(鼻腔・咽頭拭い液採取5点は別途請求/唾液なし)

📘 抗原検査(鼻腔のみ) 
  • 医師が必要と判断時は保険適応(原則1回?)➜ 下記検査料は公費負担で患者負担ゼロ
  • 抗原 600点+免疫学的検査判断 144点(鼻腔拭い液採取の5点は別途請求)

📙 抗体検査(採血)
  • 保険適応なし(※当院では入院症例で医師が必要と判断時などには基本的に病院負担で施行)
  • 特異抗体の産生には感染後2~3週間の期間が必要 ➜ 感染・発症していても抗体陰性例がある

📢 おまけ
  • 保健所やかかりつけ医からの紹介でPCR検査のみなら3割負担で2000円弱(初診料+検体管理料+トリアージ加算+検体採取料など)
  • 当院では抗原検査は24時間可能で45分で結果判明.PCR検査は原則平日の9時と15時にまとめて行い前処理に1時間+機械分析に70分
  • もちろん抗原よりもPCRの方が感度は高いが,低リスクなら抗原陰性時にPCR追加は必ずしも必要ではない(以前は必須であった)
  • PCRあるいは抗原が陽性時 ➜ 新型コロナは指定感染症であり治療費は原則公費負担で患者負担はほぼゼロ(ただし地域差あり)

🉐 関連投稿新型コロナ(※ウェブ版なら画面右にあるラベル一覧からも選択可能です)

(投稿者 川崎)

2020-07-30

📣 心音クイズ:労作時の胸痛と息切れで来院した症例






(投稿者 川崎)

2020-07-29

再確認:アキレス腱のX線

  • 家族性高コレステロール血症の診断のため内科医がアキレス腱のX線像を判定することがあります
  • 判定方法について個人的に少し曖昧な部分があったので再確認目的にその評価方法をアップします


🉐 関連投稿(アキレス腱編)

(投稿者 川崎)

2020-07-28

ネクロトーシス Necroptosis

  • アポトーシス(apoptosis)と同様に,プログラム化された細胞死のひとつ.形態的にはアポトーシスで認める核凝集(下図の左上)などなはなく,壊死(ネクローシス)で認める細胞膜の破裂や細胞質内容物の放出が特徴(下図の右上).
  • ただし偶発的に生じる通常のネクローシスとは異なり,シグナル伝達を介して生じるネクローシスである.免疫や炎症,組織の恒常性の維持,胎生期の発達における細胞死経路に必須と考えられている.
  • 機序としてreceptor interacting protein kinase1(RIPK1)が注目されている.RIPK1はCaspase8(CASP8)を介するアポトーシス経路を抑制するが,同様にRIPK3を介するネクロトーシス経路に対しても抑制的に働く.



(投稿者 川崎)

2020-07-27

Raccoon Eyes アライグマの眼

  • 眼窩周囲の紫斑で別名はパンダの眼(🐼 panda eyes)や眼周囲のあざ(black eyes)
  • 両側であれば外傷性の頭蓋骨骨折時(特に頭蓋底骨折を含む)に関連する事が多い
  • 他に眼窩底骨折やアミロイドーシス,播種性神経芽細胞腫,鼻形成術後などで出現


🉐 関連投稿眼科 👀(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2020-07-26

Sniffing position & Tripod position

いずれも急性喉頭蓋炎など上気道閉塞を疑うレッドフラッグ
  1. sniff=匂いを嗅ぐ ➜ sniffing position=においを嗅ぐように顔を前に突き出した姿勢
  2. tripod=三脚・三脚台 ➜ tripod position=三脚位(両手をついて顔を前に出した姿勢)

😱 関連投稿(気道閉塞編)

(投稿者 川崎)

2020-07-25

心不全細胞 Heart failure cells

  • 細胞質内に多量のヘモジデリンを含有している肺胞マクロファージ
  • 別名は心臓病細胞や鉄貪食細胞,siderophage,シデロファージなど


👻 つぶやき
  • 医療系学生の問題集で出会った言葉で,個人的には初めて耳にした用語です.日本循環器学会の用語集(第3版)には収載なく,循環器領域の成書であるHurstやBraunwaldにも記載されていないようです.
  • しかし病理学の定番Rubin's Pathologyにはしっかり記述されています().調べてみると”Heart failure cells”という用語は100年以上前から使用されていて(Cal State J Med 1906;4:300–3),PubMedの初収載はドイツ語での報告(Arch Phys Ther 1954;6:113-4)と思われます.
  • N Engl J Med内で用語"Heart failure cells"の記載は2度で,およそ50年前(N Engl J Med 1967;276:1029-35)と100年前(Boston Med Surg J 1911;164:903-7)でした.ちなみにBoston Med Surg Jは1812年創刊のN Engl J Medの旧名です(1828-1928で,なんと当時から週刊誌😵).

🉐 関連投稿(心不全アラカルト)

(投稿者 川崎)

2020-07-24

5 micro skills 🎲

  • 米国の家庭医であるNeherらが開発(J Am Board Fam Pract 1992;5:419-24
  • 現場で『どのように教えるのか,どのように学ぶのか:know-how』の基本
  • 最近は1分間指導医モデル(One Minute Preceptor Model)と呼ぶ事が多い
  • 原版に下記の6番目を加えた "Six microskills for clinical teaching" 版もある

  1. 主体的な意見を尋ねる:何が起こっていると思う?
  2. 考えの根拠を探る:どうしてそう考えたのかな?
  3. 広く応用可能な原則を教える:~を見た時はね,必ず~を念頭において…
  4. 正しくできたことを強化する:特に,~の点は感心したよ
  5. 間違いを修正する:次回~が起こった時は,~するようにしよう
  6. 次の学習段階を明らかにする:次は何を勉強する必要があるかな?



🉐 関連投稿(教育編)

(投稿者 川崎)

2020-07-23

🎯 今週の一枚

倦怠感と息切れで受診した女性




(投稿者 川崎)

2020-07-22

ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体薬

😓 先日,PCSK9阻害薬の機序を聞かれてうまく説明できませんでした...


  • PCSK9とはproprotein convertase subtilisin/kexin type 9の略
  • PCSK9は主に肝でLDL受容体と複合体を形成しその分解を促進
  • 通常LDL受容体は細胞表面に運ばれ再びLDLと結合(約150回)
  • PCSK9が結合したLDL受容体はリサイクリングされず分解される
  • PCSK9阻害薬はLDL受容体の分解を阻止するためLDL-C値が低下
  • 遺伝性の高LDL-C血症家系から発見(Nat Genet 2003;34:154-6


👶 おまけ
  • 日本では遺伝子組換えヒトIgG2モノクローナル抗体であるエボロクマブ(レパーサ®)と同IgG1モノクローナル抗体アリロクマブ(プラルエント®)が利用できたが,特許の問題で後者は販売が中止になった.
  • エボロクマブ(レパーサ®)の説明書には以下の記載があるため要注意「本剤の注射針カバーは、アレルギー反応を起こす可能性がある天然ゴム(ラテックス)が含有されている。」
  • また厚生労働省の通達では「医師免許取得後、満6年以上の臨床研修歴を有し、このうち3年以上は循環器診療に関する臨床研修歴を有する医師が所属する施設」が施設要件になっている(過去の投稿).

(投稿者 川崎)

2020-07-21

お手軽負荷

階段を登る時の息切れで紹介受診した症例


👿 解説
  • 座位の通常呼吸時(ビデオ前半)では鎖骨上に内頸静脈の拍動をほぼ認めない
  • 深吸気後(ビデオ後半)では鎖骨上に内頸静脈の拍動を視認するようになった
  • 新たに出現した内頸静脈拍動は陥凹が主で怒張なし ➜ クスマウル徴候は陰性
  • 中心静脈圧の上昇はあるが高度でないと判定 ➜ 本例の最終診断は軽症心不全

👾 独り言
  • 心不全が疑われる症例で安静座位で内頸静脈の拍動を認めなければ一安心であるが,深呼吸後(=前負荷の増大時)にも視認しなければさらに安心できる.前負荷を増大させるには蹲踞姿勢も一つであるが,高齢者では膝痛のため施行できないことが少なくない.深吸気負荷はとても簡便なので,外来診察室や救急室で積極的に活用したい.

🙊 関連投稿(クスマウル編)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2020-07-20

😡 先日のカンファレンスから…

  • ⭕️ 鼻指鼻試験は正常
  • ⭕️ 踵膝試験は拙劣
  • ❌ 鼻指鼻試験は稚拙

【稚拙】ちせつ ➜ 技術や作品が幼稚で未熟なこと(=子供っぽい)
【拙劣】せつれつ ➜ 技術レベルなどが劣っていること(=下手くそ)

🉐 関連投稿(妊娠編)

(投稿者 川崎)

2020-07-19

ファロー三徴・四徴・五徴

📢 ファロー四徴症(TOF: tetralogy of Fallot)
  • 肺動脈狭窄+心室中隔欠損+大動脈騎乗+右心室肥大の合併(肺動脈閉鎖時は極型ファロー四徴症)
  • フランス人医師の Arthur Fallot (1850-1911)に由来(Marseille médical 1888;25:77-93, 138-158, ect)
  • 肺動脈と大動脈の元となる動脈幹の分離異常で,先天性心疾患の5-10%でチアノーゼ心疾患の60-70%
  • 身体所見はチアノーゼ+2LSBで最強点を有する収縮期駆出性雑音(肺動脈狭窄)と亢進した単一Ⅱ音
  • 手術なしは予後不良 ➜ 1年生存率75%,10年生存率30%(低酸素発作や脳疾患,心不全などで死亡)
  • 手術例の予後は良好で術後30年の生存率98%/慢性期に肺動脈弁逆流や右心不全が問題になる例あり


(リンクに心音あり ➜ N Engl J Med 2020;382:e97

📣 おまけ
  • ファロー三徴症(trilogy of Fallot)➜ 肺動脈狭窄+心房中隔欠損+右心室肥大の合併
  • ファロー五徴症(pentalogy of Fallot)➜ 肺動脈狭窄+心室中隔欠損+大動脈騎乗+右心室肥大+卵円孔開存の合併
  • 検索内ではファローの二徴(dilogy)や六徴(hexalogy),七徴(heptalogy),八徴(octalogy)~は見つからず

(投稿者 川崎)

2020-07-18

受動的下肢挙上 PLR: Passive leg raising

  • 血圧低下時あるいはショック時に受動的に下肢を挙上して前負荷を増加させようとする手技
  • 臥位で約300ml,半座位からなら約450mlの血液が心臓に灌流(Circulation 1981;64:146-52
  • 輸液反応性の判定に利用する ➜ 感度85%,特異度91%(Intensive Care Med 2016;42:1935-47
  • ただし同反応は一過性 ➜ 20秒後に増大して7分後には効果が消失(J Trauma 1982;22:190-3
  • 逆に下肢を挙上するショック体位の継続は誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎のリスクになる


(投稿者 川崎)

2020-07-17

肝肺症候群 HPS: Hepatopulmonary syndrome

  • 慢性肝疾患に伴ってpre-capillaryレベルでの肺血管拡張による低酸素血症を生じた状態
  • 米国の医師KennedyとKnudsonによる低酸素血症の肝硬変例が初報(Chest 1977;72:305-9
  • 機序は肝障害で代謝できなくなった血管拡張物質による肺内シャント(eNOSが関与?)
  • シャントの証明 ➜ 肺血流シンチグラフィ,肺血管造影,コントラスト心エコー図など
  • 100%酸素吸入あるいは99mTcMAA肺血流シンチグラフィなどでシャント率の測定が可能
  • 低酸素血症を反映するクモ状血管腫,ばち指,チアノーゼなどが出現(特異的ではない)
  • 頻度は門脈圧亢進症を伴う慢性肝疾患患者の約20%あるいは肝疾患患者の5~32%と報告
  • 予後は不良で唯一の根本的治療は肝移植(有効な薬物療法はないため酸素を投与するのみ)



🉐 関連投稿(呼吸編)

(投稿者 川崎)

2020-07-16

🎯 今週の一枚

呼吸困難感で来院した症例




(投稿者 川崎)

2020-07-15

ゲーム 🎮 心音-30 HS-30

  • 聴診は心疾患の診断や重症度判定にすぐれた感度と特異を有し,身体所見の中でも特に重要です
  • コロナ禍でカンファレンスが行われない間に,若手が各自自習できるようゲームを開発しました
  • 代表的な心音計30問を1問30秒で回答(解説は心音図付き) ➜ 初級突破が目標+上級者は四段!


(スマホ仕様ですがタブレットやデスクトップにも対応/現在の閲覧がウェブ版なら右欄にリンクあり)

🉐 関連投稿(ゲーム編)

(投稿者 川崎)

2020-07-14

採血クイズ

下腿浮腫で来院した症例の採血結果
項目測定値単位基準値
フリーT40.31ng/dL1-1.81
TSH97.36μU/mL0.27-4.2
TSHRAB1.0<1.0
サイロイド100<100
マイクロゾム100<100
抗TPO抗体9IU/mL<16
抗サイログロブリン抗体11IU/mL<28


👳 解説
  • 甲状腺機能低下で橋本病を考慮するが抗体は陰性である(抗体陰性の橋本病は約1%と稀)
  • 本例は健康目的でめかぶを一日3パック食べていたことが判明(≒ヨウ素468μg/日:参考
  • ヨウ素は過剰摂取でも甲状腺機能低下症を生じることがある(ウォルフ-チャイコフ効果

💣 関連投稿(甲状腺編)

(投稿者 川崎)

2020-07-13

Free Styleリブレ®

  • アボット社が開発したグルコースモニタシステム(リーダーと使い捨てセンサー)
  • 2016年5月に承認され2017年9月に保険点数が確定(2020年改定:3月3回1,250点)
  • センサーを上腕後側に装着(実際の方法)➜ 皮下間質液のグルコース濃度を測定
  • リーダーをセンサーにかざすと現在の血糖値を表示(過去8時間のデータも蓄積)
  • リーダーとセンサーは共にメーカー希望小売価格7,089円(税抜)と比較的安価
  • センサーは14日間連続使用でSMBG較正不要(低・高血糖時は必ずSMBGで検証)
  • ペースメーカなど他の埋め込み式医療機器との併用は避ける(誤作動のリスク)


🉐 関連投稿(血糖編)

(投稿者 川崎)

2020-07-12

骨髄増殖性疾患 vs シーテフ(CTEPH)

臨床現場
  • 骨髄増殖性疾患とCTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症:chronic thromboembolic pulmonary hypertension)が合併する症例が続いたので調べてみました

肺高血圧は2009年のダナポイント分類とその改訂版である2013年のニース分類,および本邦のガイドラインで共に5つの群に分類されている
  • 第1群:肺動脈性肺高血圧症
  • 第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症,
  • 第3群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症
  • 第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
  • 第5群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症

前述のガイドラインでは骨髄増殖性疾患は第5群の血液疾患に含まれているが,肺高血圧のメカニズムは不明(多因子)と記載されCTEPHには言及していない.ヨーロッパのガイドラインでは2009年版で骨髄増殖性疾患がCTEPHのリスクになることが示唆されたが,2015年の改訂版では削除されている.しかし最近,骨髄増殖性疾患とCTEPHの関連を示す報告が散見される.

その一例Int J Mol Sci 2020;21:3339
  • CTEPH 40例中4例(10%)が遺伝子変異を有し,その内3例はJAK2遺伝子の異常
  • 同遺伝子異常は骨髄増殖性疾患のリスクで,その頻度はCTEPH例で有意に高率

★ 関連投稿(CTEPH編)

(投稿者 川崎)

2020-07-11

🐸 おなじみの所見ですが…

発作性心房頻拍の症例


👁‍🗨 解説
  • 臥床では右鎖骨上窩に内頸静脈の早い拍動であるフロッグサインが明瞭に確認できる
  • 座位でフロッグサインは不明瞭であるが,ビデオ後半の深吸気では僅かに認められる

🎯 独り言
  • フロッグサインには様々な出現パターンがあるため,体位変換に加えて常に呼吸調整も試みたい(例:座位 ➜ 深呼吸 ➜ 臥床 ➜ 深呼吸 )
  • 中心静脈圧が上昇しているため座位ですぐに気がつくフロックサインもあるが(コチラ),臥位の深吸気で初めて分かる症例もある(コチラ

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2020-07-10

MAD: Mitral annular disjunction 

  • 通常は接している僧帽弁輪と心筋基部が離れている(dislodgement or detachment)状態のこと(数mm~時に1㎝程度以上)
  • 日本語訳は未確立であるが僧帽弁輪disjunctionと表記されることがある(あえて日本語だけに訳してみるなら僧帽弁輪分離?)
  • MADの報告は昔からあり(例:N Engl J Med 1986;314:535-40),弁逸脱症候(Floppy Mitral Valveやバーロー症候群)と関連
  • 僧帽弁逸脱156例での検討 ➜ MADの頻度は42%で平均離接8.9mm,87度)(JACC Cardiovasc Imaging 2017;10:1424-33

(黄色矢印が僧帽弁輪で赤部分が心筋から離れている:JACC Cardiovasc Imaging 2017;10:1434-6

(AとBは健常者でCとDはMAD症例:JACC Cardiovasc Imaging 2017;10:1424-33

🍞 関連投稿(僧帽弁編)

(投稿者 大貫/川崎)

2020-07-09

🎯 今週の一枚

労作時の息切れで来院した症例の頸動脈拍動





(投稿者 川崎)

2020-07-08

頸静脈圧:ルイス法 JVP: Lewis Method

  • 頸静脈所見と胸骨角の垂直距離から中心静脈圧の値を推定する方法のひとつ
  • 英国の循環器医Thomas Lewisが開発した(Br Med J 1930;1(3618):849–52
  • 健常者では頸静脈拍動の最高点が体位に関わらず胸骨角から垂直1-2㎝以内
  • よって頸静脈拍動の最高点が胸骨角から垂直3㎝以上なら静脈圧上昇と判定
  • その後に中心静脈圧=垂直距離+5㎝と拡大解釈(Lewisの主張ではない)
  • これは右房が体位によらず胸骨角から5cm垂直下に存在という仮定に基づく
  •  



おまけ 💬
  • 胸骨柄と胸骨体の結合部位(胸骨角)の別名はルイ角 (Angle of Louis)で,フランスの内科医Pierre Charles Louis(1787-1872)に由来(過去の投稿
  • ルイ角の命名はフランスの外科医Antoine Louis(1723–1792)に由来という報告もあるが現在では否定的(Eur J Anat 2013;17:190-2).彼はギロチンの開発者で,落下させる刃の目標がルイ角だったらしい(参考
  • ちなみに頸静脈圧のルイス法を開発したThomas Lewisは,心電図を臨床応用した最初の一人で,頸静脈波の解釈に心電図を活用(J Physiol 1908;37:445–58

🉐 関連投稿(頸静脈編)

(投稿者 川崎)

2020-07-07

アラカルト2

いずれも最近,見聞きしたことです(一部は内容を保証できませんが...😙)

  • 月経症候群の読み方は「げっけいぜん
  • ユダヤ人は全人口の0.25%であるが全ノーベル賞の25%
  • 黒人は日本人の3倍胃酸がでる
  • 魚類~脊椎動物には胃酸がある
  • ビリルビン高値でも造影CTは問題ないがDIC-CTはダメ
  • 石器時代の塩分摂取量は1.5g/日
  • 流涙の読み方は「りゅうるい」で涙腺という組織から常に分泌されること
  • HFpEFの本体は全身性の炎症に伴う微小血管機能異常

🉐 関連投稿 (トリビア編) 

(投稿者 川崎)

2020-07-06

座位+左側 ➜ 稀 😲

心電図異常で受診した無症状の症例の座位頸部(呼吸調整なし)

🐥 解説
  • 陽性波が目立つ ➜ 頸静脈ならa波または巨大v波,頸動脈ならコリガン脈
  • 圧迫で消失+時相はⅠ音直前 ➜ 陽性波は増高a波 ➜ 肥大型心筋症の疑い
  • 心エコー図で肥大型心筋症を確認(復習 👼 増高したa波は同疾患の特徴

🐤 独り言
  • 肥大型心筋症では増高したa波を認めることは少なくないが,座位で明瞭に視認する症例は稀.通常,a波は臥床で認め,座位では深吸気蹲踞などの負荷後にのみ顕性化する.おまけに本例では右側よりも左側で目立っている(一般的に頸静脈拍動は右側でより明瞭:その解剖学的な理由).内臓逆位では左側の方が目立つこともあるが,本例ではそのような所見はなかった.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2020-07-05

ネーゲレ法 Naegele's rule

  • 出産予定日(妊娠280日すなわち満40週0日)を概算する簡便な方法
  • 最終月経の初日がx月y日の場合分娩予定日=(x+9)月(y+7)日
  • 月数が>12なら1から,日数がその月の最大日数より大なら翌月へ
  • ドイツの産科医であるFranz Karl Naegele(1778 – 1851)が考案した

👶 おまけ
  • ポイントは0週0日=最終月経の初日であって,性交日や排卵日ではありません.つまり受精するのは妊娠2週目で,着床するのが妊娠3週目となります.

🉐 関連投稿(妊娠編)

(投稿者 川崎)

2020-07-04

👴 歴史クイズ

(Public Domain)



(投稿者 川崎)

2020-07-03

AIUEO TIPS あいうえおチップス(+α)

前回の投稿から3年半が経っているので再度アップしました 👶

👿 もちろん意識障害の鑑別疾患です
  1. Aalcoholism (急性アルコール中毒),Aortic dissection(急性大動脈解離)
  2. I  insulin (インスリン:低血糖あるいは高血糖)
  3. U  uremia (尿毒症)
  4. E  endocrine(内分泌異常),encephalopathy(脳症),electrolytes(電解質異常)
  5. O   oxygen(低酸素),opiate/overdose(薬物中毒)
  6. T  trauma(頭部外傷),temperature(低体温あるいは高体温
  7. I  infection 感染症
  8. P  psychiatoric(精神疾患),porphiria(ポルフィリア
  9. S  stroke/SAH(脳卒中あるいはくも膜下出血),shock(ショック),seizure(痙攣),supplement(ビタミン欠乏:特にビタミンB1欠乏)

※意識障害の症例では問診ができないからER室では重宝します

👻 トリビア
  • オリジナルは意識障害の鑑別疾患の頭文字を英語母音字(A, E, I, O, U, 稀にY)のアルファベット順に並べたAEIOU TIPS(発音はコチラ
  • 開発者は不明ですが,初報はおそらく J Natl Med Assoc 1980;72:331-4(AEIOU TIPS: Alcohol, Epilepsy, Infection, Opium and other drugs, Uremia, Trauma, Insulin, too much or too little, Poisons, and Shockと記載)
  • AEIOUを日本語の母音のあいうえお順に並べ替えたものがAIUEO TIPS(あいうえおチップス)で,それに大動脈解離やサプリメント不足などを追加した版が+α

🉐 関連投稿(意識障害編)

(投稿者 川崎)

2020-07-02

🎯 今週の一枚

心雑音と下腿浮腫を指摘された症例





(投稿者 川崎)

2020-07-01

レッドマン症候群(Red man/neck syndrome)

👹 要約
  • バンコマイシンの投与時に生じる2つの過敏反応のひとつ(もう一つの形態はアナフィラキシー)
  • 掻痒感や灼熱感を伴う紅斑が顔〜頚〜体幹に出現する(稀に低血圧や血管浮腫を伴うこともある)
  • バンコマイシンの初回投与で点滴開始後4-10分後に多い(90-120分後でも生じ得る/最長は7日〜)
  • 機序はバンコマイシンが肥満細胞を刺激し多量のヒスタミンが放出されるためと推察されている
  • 1時間以内の静脈投与で5-13%に発生/経口投与でも発症例あり(Am J Med Case Rep 2019;7:16-7
  • 発症時はバンコマイシンの中止と抗ヒスタミン薬(H1+H2受容体拮抗薬)の投与で概ね改善する


👻 バンコマイシン添付文書(点滴静注用0.5g「トーワ」より抜粋)

【用法・用量に関連する使用上の注意】
急速なワンショット静注又は短時間での点滴静注を行うとヒスタミンが遊離されてred neck(red man)症候群(顔、頸、躯幹の紅斑性充血、そう痒等)、血圧低下等の副作用が発現することがあるので、60分以上かけて点滴静注すること。

🉐 関連投稿(バンコマイシン編)

(投稿者 川崎)